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宮廷の庭で運命に出会った
暑い夏の日、蝉が朝からうるさかった。まだ幼少の頃から皇帝のお気に入りだった僕は離宮に隔離されて大きくなった
侍女達が毎日飾り立て、過度な装飾は皇帝からより気に入られるように祖母である皇太后から贈られたものだった
その時期から皇太子となるべく有力華族である月家のオメガの娘と婚約した
初めて会った婚約者なのに、何の感慨も浮かばず、ただ書面に署名をした
そんな初夏の昼下がり、小さな子供が離宮の庭園に一人で迷い込んできた
茶色の柔らかそうな髪の毛に、紅い爛々とした瞳が印象的な白くもちもちとした子供だった
項や、全身から香る柔らかな桜の匂いに胸が締め付けられ、心臓がばくばくと高鳴った
運命の番だーーー
他の誰とも違う、でもまだ小さな子供
僕は彼が誰だか知っていた。以前は匂いは嗅いでいなかったが、強烈に惹きつけられたので覚えている
その時、三宜は幼児だったので気のせいかと思っていたが
確か蕭家の三男の三宜だ
そう頭で理解はしているのに、匂いに抗えず気づいたら少年を引き倒し、項や、首筋に噛みついていた
誰かの悲鳴で少年と引き剥がされ、泣きそうに潤んだ瞳に『ぼくのもの』だと呟く
蕭家は有力な武家で月家とは対立関係にある
ただ蕭家の儚くなった前妻は祖母皇太后の姪にあたり、皇族の親類関係であるので、蕭家は姻戚関係に加えるわけにはいかず、月家の娘が僕の婚約者になったのだ
蕭家の父親は、僕の顔を確認して恐れ慄いていた
アルファに目をつけられた哀れな自分の息子を危惧する親の顔だった
庇うように三宜を袂に隠し、退がる親子に舌舐めずりをする
あれは僕のもので、取り上げるつもりならば…
騒ぎを聞きつけた周囲を横目に、考えあぐねる
正攻法では三宜は手に入らない
でもどうしても手に入れたい
祖母の皇太后は猛反対するだろう。何故なら祖母は僕の性質をよくご存知だし、三宜の母である蕭家の姪を可愛がっていたのだから
そして、その姪を殺した蕭家を憎んでいて、復讐の機会すら狙っている
どうしたら三宜を手に入れられるだろう
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