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「お礼を…申し上げます。拝命しました…」
屈辱に三宜は平伏し、勅令を受け取る
あの日の清順の言葉が蘇る。選定の儀に選ばれたいのかと、このまま皇帝に輿入れする気なのかと
あの時は、自分がそれに選ばれるわけはないと思っていた
三宜はオメガとして優れているわけではないから
あの面子で、どうして自分が選ばれると思えたのだろうか
そうだ、自分はいつも劣っているのに、清順に選ばれるわけはなかったのに
清順、清順に会いたい
「その侍女は始末するように」
皇太后の冷たい言葉にも頷く
日出はあんなにも、三宜に誰にも気を許してはいけないと教えてくれていたのに
きっと、清順に輿入れするつもりだと皇太后に伝わったのだろう
でなければ、あんな急に皇后に決まるわけがない
短期間の束の間の権勢なのだ。三宜でも、誰でも構わない
皇太后は誰よりも清順を可愛がっているときく
清順に焦がれ、近付いた対価にあの猿の干物に嫁ぐことになってしまった
あんまりではないだろうか
あの気持ち悪い、緑の粘膜がついた口に項を噛まれるのだろうか?
悪夢ならば早く覚めて欲しい
「明日から一日実家に帰って良い。輿入れの準備をしてくるように」
皇太后の言葉にもう一度拝謁し、三宜は両手で顔を覆う
どうしてこうなるのだろう。選定の儀が終われば、清順が迎えに来て、幸せいっぱいになるはずだった
何が狂ってこんな事になってしまったのだろうか
皇帝に輿入れなぞ冗談じゃない
葵に、葵に決まるはずだったのに、自分は清順に嫁ぐつもりだったのに
涙が次々と溢れて止まらない
「茉里、密かに日出を実家に運んで…医師に診せて…。回復するまでついてあげて…」
「三宜様、日出は先程息を引き取りました…」
茉里の言葉に両腕の力が抜けていく
「…そう。なら、葬儀は…葬儀は華やかにしよう。日出はお洒落もせず、質素にしてたから…化粧もして…」
茉里に背中を摩られながら離宮を出る
こんな時にも、三宜は清順に会いたかった
。
。
。
屈辱に三宜は平伏し、勅令を受け取る
あの日の清順の言葉が蘇る。選定の儀に選ばれたいのかと、このまま皇帝に輿入れする気なのかと
あの時は、自分がそれに選ばれるわけはないと思っていた
三宜はオメガとして優れているわけではないから
あの面子で、どうして自分が選ばれると思えたのだろうか
そうだ、自分はいつも劣っているのに、清順に選ばれるわけはなかったのに
清順、清順に会いたい
「その侍女は始末するように」
皇太后の冷たい言葉にも頷く
日出はあんなにも、三宜に誰にも気を許してはいけないと教えてくれていたのに
きっと、清順に輿入れするつもりだと皇太后に伝わったのだろう
でなければ、あんな急に皇后に決まるわけがない
短期間の束の間の権勢なのだ。三宜でも、誰でも構わない
皇太后は誰よりも清順を可愛がっているときく
清順に焦がれ、近付いた対価にあの猿の干物に嫁ぐことになってしまった
あんまりではないだろうか
あの気持ち悪い、緑の粘膜がついた口に項を噛まれるのだろうか?
悪夢ならば早く覚めて欲しい
「明日から一日実家に帰って良い。輿入れの準備をしてくるように」
皇太后の言葉にもう一度拝謁し、三宜は両手で顔を覆う
どうしてこうなるのだろう。選定の儀が終われば、清順が迎えに来て、幸せいっぱいになるはずだった
何が狂ってこんな事になってしまったのだろうか
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葵に、葵に決まるはずだったのに、自分は清順に嫁ぐつもりだったのに
涙が次々と溢れて止まらない
「茉里、密かに日出を実家に運んで…医師に診せて…。回復するまでついてあげて…」
「三宜様、日出は先程息を引き取りました…」
茉里の言葉に両腕の力が抜けていく
「…そう。なら、葬儀は…葬儀は華やかにしよう。日出はお洒落もせず、質素にしてたから…化粧もして…」
茉里に背中を摩られながら離宮を出る
こんな時にも、三宜は清順に会いたかった
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