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しおりを挟むいつまでも続く時間のように思われたが、やがて輿が止まると、三宜の宿泊している離宮の前だった
「……戻るの?」
消え入りそうな清順の声に小さく頷く
溜息と共に掴まれていた腕が離れていくのを寂しくて悲しくおもった
「せめて…何か、自分の物を身につけて欲しい…」
そう言うと、清順は自分の髪飾りを解き、三宜の手首に巻いた
「三宜が僕と同じ気持ちで…三宜の気持ちが変わらないなら…これを外さないでほしい…」
三宜の手を取り、撫でる清順に頷く
これがあるだけで、心許ない宮廷でも大丈夫な気がした
「選定の儀が終わったら、迎えにいくから」
信じられない清順の言葉に何度も頷く
清順が迎えにきてくれる。何度も夢に見ていたことだ
あの清順が、自分のことをいつか迎えにきてくれる、そんな夢想を何度思い浮かべただろうか?信じられない
「待ってる。迎えにきてくれるの、待ってる」
もう一度抱擁し、外が俄かに騒がしいので離れ難いが手を離す
「ずっと待ってる」
振り向いて言う三宜に、清順は辛そうに頷いてみせる
こんなこと、あるのだろうか?運命の番が、あんなにも焦がれた清順で、その清順が自分を迎えにきてくれるというのだ
こんな幸せなことがあるのだろうか
叶わない想いだと思っていた。また許されないだろうとも
袂を押さえながら輿を降りると、茉里が真っ青な顔で飛んできていた
「三宜さま、これ以上殿下に近づいてはいけません…!お願いですから!」
清順の一行に頭を下げながら、茉里は死にそうな顔で周りに聞こえぬよう叫ぶ
「わかってる、大丈夫。選定の儀が終わるまでは大人しくするから」
先程まで日出のことで死にそうな顔をしていた主人の上機嫌な様子に侍女たちは危機感をもったのだろう
しかし三宜とて死にたくないし、これ以上は清順に近づくつもりもない
なにより選定の儀さえ終われば、何もかも解決するのだから
清順にはすでに正妃から側室、子供までいるが
しかし、自分は運命の番なのだ
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