19 / 46
19
しおりを挟む
何故あんなに執拗に日出は抑制剤を飲ませていたのだろうか
もう三宜には知る術はない
袂の巾着に懐紙のまま入れて撫でる
ああ、運命の番
まだ匂いしか知らない。あのにおいが現れてから日出の様子は日に日におかしくなっていった
運命の番、存在を認知してしまえば全てが狂ってしまうだろう
一度嗅いだだけで一族すらどうでも良いと思ってしまった
やはり、飲まないと駄目か
外部のやりとりは日出が全部してくれていた。
茉里に手配してもらわないといけない
庭から吹く風が気持ちよくて横臥する
此処は本当に恐ろしい場所だ。豪華絢爛な装いの中身は血生臭い
その中で清順、清順だけは美しい。あの日のまま輝いていて妖しくて、人を焦がれてやまないとはこの事だろうか
叶わない恋だ。再会し清順が自分を底なし沼のような恋に引き摺り込んだのだ。
清順に会いたい
軽く手を振りながら柔らかに笑う清順に会いたかった
日出を失って辛いと泣き縋りたい
じわりと涙が浮かんでくる。どうして自分がこんな目に?この間まで、みんなと笑い合って、怖い事なんてなくて、ただ日々を楽しいだけで生きていたのに
今はこんなに辛い
着物の飾り紐を弄びながら、起き上がるとふわりと『あの匂い』が、かすかに香る
抑制剤を飲んでいるが、時間が経っているからわかるのだろう。ほんの僅かにしかわからないが
それは紐にじっとりと染み込ませるように、練り込むように付いている
「………何で飾り紐なんかに」
ふと日出が、三宜の着物や何もかもに匂いが染み付いていると怒っていた
もしかしたら、洗濯場に運命の番がいるのだろうか
しかし、宮廷の離宮に近づける侍従なんてベータしかいないはずだ
更に後宮はオメガしか侍女になれない
宮廷にいるアルファなんて皇族かその子供だ
もしくは皇帝直属の部隊ーー護衛だろうか
洗濯場などに出入りしているのだろうか
三宜を見つけて?
護衛騎士と皇帝の選定の儀の皇后候補など絶対に許されない
相手の一族郎党みな斬首になるだろう
三宜の家族でさえだ
ぶるりと身震いをする。清順に対する気持ちと、運命の番、早く選定の儀など終わってしまえばいい
そうなれば、何も気にせずに清順にだって会える
もう三宜には知る術はない
袂の巾着に懐紙のまま入れて撫でる
ああ、運命の番
まだ匂いしか知らない。あのにおいが現れてから日出の様子は日に日におかしくなっていった
運命の番、存在を認知してしまえば全てが狂ってしまうだろう
一度嗅いだだけで一族すらどうでも良いと思ってしまった
やはり、飲まないと駄目か
外部のやりとりは日出が全部してくれていた。
茉里に手配してもらわないといけない
庭から吹く風が気持ちよくて横臥する
此処は本当に恐ろしい場所だ。豪華絢爛な装いの中身は血生臭い
その中で清順、清順だけは美しい。あの日のまま輝いていて妖しくて、人を焦がれてやまないとはこの事だろうか
叶わない恋だ。再会し清順が自分を底なし沼のような恋に引き摺り込んだのだ。
清順に会いたい
軽く手を振りながら柔らかに笑う清順に会いたかった
日出を失って辛いと泣き縋りたい
じわりと涙が浮かんでくる。どうして自分がこんな目に?この間まで、みんなと笑い合って、怖い事なんてなくて、ただ日々を楽しいだけで生きていたのに
今はこんなに辛い
着物の飾り紐を弄びながら、起き上がるとふわりと『あの匂い』が、かすかに香る
抑制剤を飲んでいるが、時間が経っているからわかるのだろう。ほんの僅かにしかわからないが
それは紐にじっとりと染み込ませるように、練り込むように付いている
「………何で飾り紐なんかに」
ふと日出が、三宜の着物や何もかもに匂いが染み付いていると怒っていた
もしかしたら、洗濯場に運命の番がいるのだろうか
しかし、宮廷の離宮に近づける侍従なんてベータしかいないはずだ
更に後宮はオメガしか侍女になれない
宮廷にいるアルファなんて皇族かその子供だ
もしくは皇帝直属の部隊ーー護衛だろうか
洗濯場などに出入りしているのだろうか
三宜を見つけて?
護衛騎士と皇帝の選定の儀の皇后候補など絶対に許されない
相手の一族郎党みな斬首になるだろう
三宜の家族でさえだ
ぶるりと身震いをする。清順に対する気持ちと、運命の番、早く選定の儀など終わってしまえばいい
そうなれば、何も気にせずに清順にだって会える
204
お気に入りに追加
432
あなたにおすすめの小説
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる