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しおりを挟む激しい感情の変化と悲痛にも見える清順の表情に三宜は戸惑う
こちらの胸まで苦しくなるような表情だ
どうして、こんなに清順は辛そうな表情を見せるのか
「で…殿下っ、三宜は疲れておりますし、蕭家は我が眞津家と違い過保護なのです。アルファ家系なので、細君も亡くなり加減や配慮が届かないこともありましょう。ささ、どうかお手を…三宜っ!」
狼狽える三宜の手を取り、清順から引き離してくれたのは松末だった
清順と三宜の2人の世界のようで松末がいるのをすっかり忘れていた
静かな時間だった。清順は感情のわからない目で松末を見据えている
焼き切るような視線が、松末に握られた三宜の手に注がれる
どこまでも黒い闇が続くような射干玉の眼に背筋がぞくりとする
妄執が、三宜と松末をゆっくりと黒い靄で包んでいくような錯覚にすら陥る
「も、申し訳ありません。無知で……兄や父には言ってきかせます。その…自分自身も皆さんが、どのようにしているのか知らなかったもので…家族ならばと安易な考えでした…」
怒りを鎮めようと、平伏す三宜を清順はどのような目で見下ろしているのだろうか
永遠にも感じる時間、威圧が薄まり、ゆっくりと息を吐く音が聞こえた
やがて三宜の腕を取り、立ち上がらせると清順は検分するかのように三宜の体を視線で炙るように眺める
「オメガ性がいない家族だから仕方ないな、でも、不敬に当たるので、もうしないように」
気怠げにため息を吐く清順に、尾骶骨から這い上がる妖しさを感じて三宜は黙り込んだ
あの日から清順は変わらない。人を魅了し、好きにはなってはいけないような妖しさを振り撒くのだ。
清順はとても美しい
骨抜にして、どこまでも堕落させるような
このまま清順の世界に引き摺りこまれたいような気持ちにさせる
しかし遊びだか懐古だか知らないが、三宜が応えたら、そこからはもう三宜だけではなく蕭家、一族の破滅だ
対する清順は、お小言をもらう程度だろう
それなのに隠しもしない、全身を侵略してくるような清順の瞳
怖い、恐ろしい
しかし、目が離せないほど清順は魅惑的だ
松末が袖を引く
わかっている。これ以上は離れなければ危険だ。もう離れなければならない
それがとても口惜しい
こんなにも三宜は清順を求めているのに
「それでは、我々はこれで。行くぞ、三宜」
松末と共に拝礼し、顔をあげないまま退く
ぎりっと何かを砕くような音が聞こえた
清順が呟く
「忘れないで、君は僕のものだ」
耳に届いたのは三宜だけではないらしい。松末にも緊張が走ったのがわかった。
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