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「ああ、大丈夫だ」

何でもないかのようにミネルバは言うが、本当に大丈夫なのだろうか?

でも、ミネルバが大丈夫だと言うなら大丈夫なのだろう

それより、少し気になる事がある

「ね、ミネルバは何でそんなに強くなったの?」

移転魔法で花びらに囲まれながら聞く

多分だが、ミネルバは下手したらネロより強いチートになっているのではないだろうか

「ああ、聖女を食べたからな」

ぺろりと唇を舐めるミネルバは、ふふんと意地が悪そうに此方を見つめる

そんな顔すら、滅茶苦茶かっこよくて心臓がばくばく鳴る。

そしてその一方で、やっぱり、と思った

聖女を嬲り、犯す

どうして必要なのかと思っていた。どうして分け合い、どうして殺さなければならないのか

厳密には殺さなくてもいいのだと思う。聖女の仕返しを恐れて殺すのだろう。

つまり必要なのは前者で、聖女を嬲り犯せば恐らく何らかのスキルの恩恵があるのだ

「どうやって、あの騒ぎを収めたの?」

花びらが散り終わると、ミネルバの部屋だった

室内は何ら変わりなく、窓から見える外もいつも通り大きな庭園が広がっていて静かだ

「バロイが見せただけだ」

意外な名前が出てきてギョッとする。


バロイ?バロイ陛下がどうして?

「え?何を??」

きょとんとするネロにミネルバは手を繋いだまま、ふっと笑う

「下半身。可愛いネロのを見せるわけにはいかないだろう?」

ちゅっと手の甲にキスをされて目を白黒させる。頬が熱くなっていくようだった

「え?は?下半身て…見せたの?バロイが?」

誰に?という言葉は飲み込む

「見物だったぞ。成りすますの得意だっただろ?そのまま殺されても良かったが、皆がっかりして帰っていったぞ?」

ミネルバの言葉に、あの日クローディアの言葉からバロイが心配だったが、まさかそんな目に遭っているとは

「……ならバロイは無事なの?」

不安になり、ミネルバの手を握りながら聞くと、ミネルバは唇を薄く開いたまま黙ってしまった

嫌な沈黙が落ちる

「ミネルバ?ねえバロイは、無事なの?」

取り縋るようにネロが聞いても、ミネルバは答えない

グリフォン達のことで頭がいっぱいだったが、取り残していったバロイの事は、ネロは敢えて考えないようにしていた

でないと、嫉妬で頭がどうにかなりそうだったからだ

国まで失ったバロイだって子供でグリフォンと同じくらい守られないといけない存在なのに、ネロは嫉妬でバロイを捨てたのだ

罪悪感と後悔ばかり込み上げる

ミネルバは、自分を騙したバロイに良い感情を抱いていなかったはずだ

「…オオハシ、ネロの友達がした事だ。それに、亡国の王族なんて危険な存在、わたしが生かしておくと思ったの?ネロをわたしから奪った存在を?」

ミネルバの静かな声に、ネロは俯く

大橋は、死者を操るネクロマンサーだ

大橋が何かしたとしたのなら、バロイはもうーー

心臓が嫌な音を立てて、ばくばくと血脈がうるさい

あの優しいバロイを、ネロは取り返しがきかない方法で失ってしまったのだ

バロイはネロと2人で旅に出たいと言っていたのに

曖昧に期待だけさせて、勝手に嫉妬して永遠にバロイを失ったのだ

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