52 / 63
51
しおりを挟む「なあ、今日は泊まっていってもいい?」
ミネルバには帰ってくるよう言われていたが、プーアール嬢がいる限りネロはいない方がいいだろう
幼い頃からの想い人と、奴隷で性欲処理ぐらいにしか思われていない自分がそんな事を考えることすら烏滸がましいのかもしれないが
「んー、ミネルバが煩いでち。果樹園にネロが来るたびネチネチ言うでちょ?一応泊まるとアクロワナに伝えておくでちが…」
ピークパッツァはいそいそと通信と呟いているのをみて、ネロは目を見開いた
しばらくすると小さな青い魔法陣が目の前に浮かび、何処からともなく執事のアクロワナの声が聞こえる
『はい、ネロ様が其方に泊まると?ミネルバ様にはご報告しておきますが…帰ってくるように言われるかと…』
「本人が泊まりたい言うてるでち。たまには外でピークパッツァと遊びたいでちょ。なに?そのため息!迎えに来たらわしも諦めるでつ!」
憤慨しながら、ピークパッツァが終話!と呟くと青い魔法陣は消えた
目の前に通信を使える人がいるとは。なんとなくうずうずしてピークパッツァに鑑定をこっそりかけたら、拒否された
「エッチでつ」
顔を真っ赤にするピークパッツァに、謝ると普通は夫婦になるか、よっぽど深い仲にならない限り見せないものだと説教をくらった
大橋がどうやってネロのスキルを知ったのか解らないが、ポンポンかけていたように思う。ミネルバのスキルも知っているようだったので。だから気軽していいものと思っていたが、鑑定は気軽に人にしていいものではないらしい
ピークパッツァに用意してもらった寝床に2人して潜り込んだ時に、ミネルバが本当に迎えに来た
不機嫌そうに美貌を歪める軍服のままのミネルバは帰宅したばかりだったようだ
「帰るぞ」
差し出された手に、ピークパッツァを盾にすると、ミネルバの口元は引き攣っていた
ピークパッツァは差し出されたミネルバの手をパァンと叩いた
ミネルバも驚いた顔をしている
「帰るぞじゃないでちょ。プーアールが来てネロは追い出されたんでち!大体、婚約者なら婚約者らしく他の気のある素振りをする女狐を出入りさせるのはどうなんでちょ?ネロはミネルバが死んだらわしの番になる予定でつ。無闇に傷付けるんじゃないでちょ!」
「は?番?女狐?何のことだ?あと私を殺すな。ネロも婚約者がある身でピークパッツァが幼体とはいえ、そんなにくっつくな」
ミネルバの言葉に今度はネロが目を瞬かせる番だった
「え?婚約者?誰が?誰の?」
「ん?ネロが。私の婚約者だろう」
至極当たり前にのたまうミネルバの綺麗な美貌を何度か見直す
「え?いつから?」
「最初から、洞窟で結婚しようと言っただろう?バロイがネロになりすまさなければ、もっと早かったが」
「いや、そりゃバロイとの約束だろ?俺は了承してない」
なんとなく拗ねた気持ちで吐き捨てると、ミネルバはスッと目を眇めた
「バロイとは何もしていないし、約束もしていない。前みたいに名字が無くて妙だと思い調べたのだ。クロがネロだと解っていたが、暫く不貞ごっこが燃えるから言い出せなかったが」
ピークパッツァもいるのに、なんて事を言うんだ!
慌ててミネルバの口を塞ごうとしたが、ピークパッツァには少し冷たい目で見られて居た堪れない
「悪いこと、楽しかっただろ?」
ミネルバは手をとってニヤリと悪い笑みを浮かべている
「いや…まあ、ちょっと2人で話そう?ミネルバ、行こう」
70
お気に入りに追加
840
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
割れて壊れたティーカップ
リコ井
BL
執着執事×気弱少年。
貴族の生まれの四男のローシャは体が弱く後継者からも外れていた。そのため家族から浮いた存在でひとりぼっちだった。そんなローシャを幼い頃から面倒見てくれている執事アルベルトのことをローシャは好きだった。アルベルトもローシャが好きだったがその感情はローシャが思う以上のものだった。ある日、執事たちが裏切り謀反を起こした。アルベルトも共謀者だという。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる