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「なあ、今日は泊まっていってもいい?」

ミネルバには帰ってくるよう言われていたが、プーアール嬢がいる限りネロはいない方がいいだろう

幼い頃からの想い人と、奴隷で性欲処理ぐらいにしか思われていない自分がそんな事を考えることすら烏滸がましいのかもしれないが

「んー、ミネルバが煩いでち。果樹園にネロが来るたびネチネチ言うでちょ?一応泊まるとアクロワナに伝えておくでちが…」

ピークパッツァはいそいそと通信と呟いているのをみて、ネロは目を見開いた

しばらくすると小さな青い魔法陣が目の前に浮かび、何処からともなく執事のアクロワナの声が聞こえる

『はい、ネロ様が其方に泊まると?ミネルバ様にはご報告しておきますが…帰ってくるように言われるかと…』

「本人が泊まりたい言うてるでち。たまには外でピークパッツァと遊びたいでちょ。なに?そのため息!迎えに来たらわしも諦めるでつ!」

憤慨しながら、ピークパッツァが終話!と呟くと青い魔法陣は消えた

目の前に通信を使える人がいるとは。なんとなくうずうずしてピークパッツァに鑑定をこっそりかけたら、拒否された

「エッチでつ」

顔を真っ赤にするピークパッツァに、謝ると普通は夫婦になるか、よっぽど深い仲にならない限り見せないものだと説教をくらった

大橋がどうやってネロのスキルを知ったのか解らないが、ポンポンかけていたように思う。ミネルバのスキルも知っているようだったので。だから気軽していいものと思っていたが、鑑定は気軽に人にしていいものではないらしい

ピークパッツァに用意してもらった寝床に2人して潜り込んだ時に、ミネルバが本当に迎えに来た

不機嫌そうに美貌を歪める軍服のままのミネルバは帰宅したばかりだったようだ

「帰るぞ」

差し出された手に、ピークパッツァを盾にすると、ミネルバの口元は引き攣っていた

ピークパッツァは差し出されたミネルバの手をパァンと叩いた

ミネルバも驚いた顔をしている

「帰るぞじゃないでちょ。プーアールが来てネロは追い出されたんでち!大体、婚約者なら婚約者らしく他の気のある素振りをする女狐を出入りさせるのはどうなんでちょ?ネロはミネルバが死んだらわしの番になる予定でつ。無闇に傷付けるんじゃないでちょ!」

「は?番?女狐?何のことだ?あと私を殺すな。ネロも婚約者がある身でピークパッツァが幼体とはいえ、そんなにくっつくな」

ミネルバの言葉に今度はネロが目を瞬かせる番だった

「え?婚約者?誰が?誰の?」

「ん?ネロが。私の婚約者だろう」

至極当たり前にのたまうミネルバの綺麗な美貌を何度か見直す

「え?いつから?」

「最初から、洞窟で結婚しようと言っただろう?バロイがネロになりすまさなければ、もっと早かったが」

「いや、そりゃバロイとの約束だろ?俺は了承してない」

なんとなく拗ねた気持ちで吐き捨てると、ミネルバはスッと目を眇めた

「バロイとは何もしていないし、約束もしていない。前みたいに名字が無くて妙だと思い調べたのだ。クロがネロだと解っていたが、暫く不貞ごっこが燃えるから言い出せなかったが」

ピークパッツァもいるのに、なんて事を言うんだ!

慌ててミネルバの口を塞ごうとしたが、ピークパッツァには少し冷たい目で見られて居た堪れない

「悪いこと、楽しかっただろ?」

ミネルバは手をとってニヤリと悪い笑みを浮かべている

「いや…まあ、ちょっと2人で話そう?ミネルバ、行こう」
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