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しおりを挟むまたかよって思いながら、でも今回はミネルバに好きだとか愛してるとか言われてはいる状態なので状態としては、ましなはず
多分、ましなはず
新聞では、ミネルバと偉い貴族の娘さんであるプーアール嬢との熱愛でいっぱいになっていた
大体、ミネルバも差し入れの読み物ならば、普通気を使わないか?
ネロの事は奴隷だっただけあって蔑ろにしてもいいとか考えているのだろうか?
ただ2人の結婚は国の情勢上で勢力や武力の拮抗を危うくしかねず、当時付き合っていた幼い2人は別れざるえなかったそうだ
ちょっとモヤるけど、子供の時だしノーカンでいいだろう
しかし金髪碧眼の美丈夫のミネルバと、白銀の髪に紫色の眼をした美少女のプーアールの悲恋は有名で、当時13歳だったプーアールにミネルバは別れを告げたらしい
こんなプライバシーの欠片もないゴシップとしてどうなのかと思わなくもないが、まあ初恋だったのかな?
そのままミネルバが21歳まで独身を貫いたのは一重にプーアール嬢の為であり、公爵家と侯爵家から王家に嫁入りがあったりと情勢も変わった今、今年成人を迎えたプーアール嬢を迎えるべくミネルバは宰相として奔走し屋敷を改装までしている。
美男美女の2人の熱愛は観劇にまでなっているらしい
儚げで華奢なプーアールと寄り添うミネルバの姿も社交会で何度も目撃されているそうだ
ノーカンとか気にしないとか思いながらも、食い入るように何度も記事を読みながら、そんなわけはないと自分に言い聞かせてみるが不安はどんどん膨らんでいく
写真で見るプーアール嬢は美しく華奢で、思わず守ってあげたくなるような風貌である
自分とは当たり前だけれど大違いだ
扱いも。ミネルバはネロを隠すように監禁している
ミネルバはバロイをネロだと思い込み、結婚までしようとしていた
しかし現在のネロは結婚をしようとも、する予定だとも言われていない
もしも、自棄になりネロと結婚をしようとしていた所にプーアール嬢と結婚出来るような状況になったとしたら?
嫌な予感しかしない
ミネルバに書こうとしていた手紙の手も止まるのは、このもやもやのせいなのか、目の前に待ちに待った現れたポップアップのせいなのか
"自動書記を取得しました"
ちょっと前までは絶対に逃げ出そうと思っていたが、ミネルバが好きだと言ってくれたから迷いがでてしまった
しかし、ネロはどのみちパーチェス達を助けに行かないといけないのだ
当初予定通り自動書記で魔法陣を獲得して色んなものを解呪し、ミネルバにばれないようにパーチェスたちを助けに行く
ドキドキしながら自動書記で解呪の魔法陣を床に書き込み、まずはミネルバに着けられた首飾りを解呪した。
なんとなく体が全身ふんわり軽くなったような気がする
模倣で呪いの部分以外の首輪をコピペし首飾りを付け直す
本物の呪いの首飾りは収納しておき、服や靴を取り出して身につける
ミネルバが帰ってくるまでには帰って来ないといけないが、ネロはパーチェス達のためにまずはネムの草を手に入れないといけない
転移魔法を選びネロは行った場所にしか行けないのでミネルバに捕まった、あの川を選択して移動する
右手を挙げて薄紫の魔法陣が空に浮かび花吹雪が舞う、周りの景色が変わっていき、ネロは目を閉じた
あの最後に見た地面が抉られた川は以前見た惨状が嘘のように元の川に戻っている
サラサラと綺麗な水が流れ、美しい花々が咲き乱れていて辺りを見渡す
「……変なの」
魔法で元に戻したのか?そんな事可能なのだろうか?奇妙な気持ちになりながら地図を取り出して王都を目指す
道なき道かと思いきや、意外と整備されている道で人の往来も多そうだった
ネムの草は王都の菜園にあるとギルド長が言っていた
移動するにつれて、ジロジロと見られる事が多く、黒髪は珍しいようなのですれ違う人達の中で髪は一番多かった赤毛と茶色の瞳に擬態し移動する
念のため武器である短刀を腰に巻きつけ、探索魔法を使いながら王都への道を進んでいくと、後ろから3つほど反応があり人が馬に乗って移動してくるようだった
なんとなく脇道の茂みに入り、様子を伺う
物凄い勢いで走り去っていったのは、黒い鎧をきた騎士達のようだった
大きな槍を手に持ち、体躯も大きな男達だ
「……王都で何かあったのかな?」
男達が走っていったのは、王都の西口にあたる場所だ
ミネルバは王都の郊外に住んでいるが、ちゃんとした屋敷も王都内にあるとピークパッツァが言っていたことがある
ネロは見たこともないけれど、帰ってこない日はその屋敷にいるらしい
陽の高さから、まだ行ける気もしたがミネルバが帰ってきて逃げたと思われても困る
念のため転移魔法を唱えて牢に戻る
当初通り、ネムの草さえ手に入れればいいのだ
ミネルバとの事は、それからゆっくり考えたい
明日はまた続きの道から王都に行けばいいのだ
服を浄化し、収納して浴室に向かう
外の匂い等でバレないとも限らないので、ネロが念入りに髪や体を洗っていると、外で物音がした気がした
ミネルバが帰って来たのだろうか?もう少しとも思ったが帰ってきていて正解だった
そろりと泡を落とそうとお湯をかぶると、ミネルバが外から様子を伺っているのがわかった
もしかして、ネックレスの解呪がバレたのだろうか?
ドキドキしながら湯船に浸かる
ミネルバがいるのに、裸のまま浴室から出るのは恥ずかしかった
湯船に浸かり目を覆っていると、焦れたのか、ミネルバが軍服を脱ぎ散らかして入ってきた
「おい、いるのがわかっていて、わざと出てこなかっただろう?」
ミネルバはぶつぶつ言いながら体を洗い、一緒に湯船に浸かってきた
広い浴槽だが、目の前まで来られたら、逃げれるほどは広くない
「今日は早かったんだね?」
ミネルバに抱きつくと、優しく抱き返された
「ああ、妙な一日だった。魔物のスタンピートの報告があったが消えているし…そういえばネロは読み物をよく読んでいるだろ?バロイと恋仲の第四皇女のクローディア様の話を見たことがあるか?」
優しくこめかみや頬にキスをされながら、くすぐったくてミネルバの薄い唇を避けると、意地になったのか両手で顔を押さえられて、顔中にキスをされる
「ふふ、バロイと恋仲の皇女様がいるのは知ってる…」
「クローディア様は少し前に母親を亡くしていてな、元は母親は側仕えの侍女だったのもあり扱いが良くなかったので流行病に倒れて医者や回復師にも見てもらえず死んだのだ」
珍しく話をするつもりのミネルバに嬉しくなりながら相槌を打ちつつ、ミネルバの逞しい胸に凭れかかる
ミネルバはネロの濡れた赤髪を梳きながら、珍しく悩んでいるようだった
憂いた顔も最高にカッコいい
「そこにネクロマンサー?と名乗る男が帝国の酒場に現れて…面白がった侍従がクローディア様と男を引き合わせてしまったんだ。ネクロマンサーの男はクローディア様の話を聞いて、クローディア様の母親、ニーナ様を蘇らせたそうだ…。どのような魔法なのかは解らないが、あれは確かにニーナ様のようで…」
考え込むミネルバの頬にキスをしながら、ネロは何処かで酒場のネクロマンサーの話を聞いたことある話であると首を傾げた
そういえば教会の神父が恩人の話をしていなかっただろうか?
「ミネルバは何を悩んでるの?」
「……死者とはあのように娘を見る目も冷たいものなのだろうか?クローディア様はニーナ様を近くに置きたがるが、どうにも気になって普段はおかぬが、騎士を数名派遣したのだ」
「ミネルバは、そのニーナ様がクローディア様の側にいるのが心配なんだね?」
ミネルバの血管が通っている首筋を舐めながら、見上げるとミネルバの喉が動き、欲に染まっていく視線がネロの体を舐めるように見ている
この瞬間が、堪らなく幸せだと感じた
「まあ俺の住んでいる世界では、ネクロマンサーは死者を操る人の事を指すけどね…」
何気なく呟いたネロの言葉に、ミネルバは、はっとした顔になり急に立ち上がり浴室から出て行く
「死者を操るなんて…転移者か、転生者か…!恐らく、聖女だ!」
「ねえ、ミネルバ」
後ろから声をかける
「俺も会わせてよ。ネックレスなしで。大人しくしてるからさ」
ネロの言葉にミネルバは驚いて声も出ないみたいだった
ただネックレスは、あっさり外してくれた。恐らく連れて行ってくれるのだろう
手早く軍服を着たミネルバに、簡素だが清潔そうなシャツとスラックスを履かされ、真新しい靴まで手ずから履かせてくれた
マントを被せられ、フードを頭に被せてミネルバは切なそうに頭を撫でてきた
「私から離れるな。聖女は危険だ」
「………わかった」
神妙に頷くと、ミネルバはくしゃりと頭を撫でてきた
「赤い髪も似合ってる」
残念そうに微笑むミネルバに、髪を押さえる
そういえば、模倣を解除していなかった。スキルが使える事がバレているのだろう
「逃げなかったことに感動している」
ミネルバに腰に腕を回されて、キスをされながら目を瞑ると、ぎゅうと抱きしめられた
「逃げないでくれ…、もういなくならないで」
耳元で囁くミネルバは卑怯だ。本当に切ない声で、こちらの胸が苦しくなる
「………わかった」
短く答えると、ミネルバはネロの手を引いて歩き出した
久しぶりに歩くミネルバの屋敷は、特に変わった所はないが違う棟が改修しているようだった
"プーアール嬢を迎え入れる為に改修をしている"
あの新聞の一文が頭の中で蘇り、じくじくと胸が痛み、醜い嫉妬が湧きあがってくるのをネロは飲み込んだ
ミネルバは、好きって言ってくれたんだから、大丈夫
手を引いてくれているミネルバの大きな背中を追う
ミネルバが移転魔法を選択したのだろう頭上に薄い魔法陣が浮かび、ミネルバが右腕を上げたので慌てて右腕を上げる
黄色の花吹雪が舞い上がりながら、視界が花吹雪に奪われる
次の瞬間ネロが目を開くと豪奢な調度品が並ぶ、まるでヨーロッパあたりの宮廷のような場所の廊下にミネルバと並んでいた
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