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静かな夜にバロイ陛下に抱きつかれたまま寝ていると、警告音で目が覚めた
“全体干渉スキルが使用されました2時間ステータスを封じます“
ネロは目の前に現れたポップアップに目を見開いた。バロイ陛下は飛び起きて宮殿の方向に走っていく
俺はベッドの上でそれをぽかんと眺めていた
後宮から見える大きな窓から外を覗くと空に薄紫に光る大きな魔法陣が出現し、巨大な火を噴き城下町を飲み込んでいく
城下町が燃える瞬間、人々の怒号や悲鳴があちこちから上がる
燃え上がる火から魔法陣が大量に現れ沢山の敵兵が城下町に雪崩れ込んでいく
悍ましい光景にネロはただ立ち竦んだ
ただ、後宮は静かだった
燃え上がる城下町を見下ろしていると、後ろから不意に腕を引かれた
険しい顔をしているバロイ陛下を見て、まだ子供だったと思い出し頬を撫でると、バロイ陛下はしがみついてきた
泣いているのだろうか
「最後に、最後にさせて欲しい…」
バロイ陛下の言葉に、意味もわからず頷くとベッドに放り投げられた
そのまま唇から首筋、バロイ陛下は泣きじゃくりながら、ネロの下履きを脱がせてきたので、ギョッとする
おいおいおいおい
「はやく、こうしとけばよかった…」
バロイ陛下は身体中に沢山キスマークを残していき
晒け出されたネロの下半身を撫でながら、バロイ陛下はにっこりと笑う
堪らなくなって抱きしめた瞬間、城の中に兵が雪崩れ込んだのか怒号が宮廷内に響いた
バロイ陛下は黙って下履きを履かせて、頭からすっぽり被れるマントを着せて手を引く
「この隠し扉、ここから先に抜け道があるんだ。城下に出てクロは逃げるんだ」
バロイ陛下の手を引くと、やんわり外されて陛下は首を振る
「余の判断ミスで帝国に移転魔法を許したせいで、この国は滅びる」
誇り高い目をしたバロイ陛下に首を振る
関係ないから逃げようぜ
「余だけはアンチスキル封じを持っているから闘えるのだ。時間を稼ぐからお逃げ。上手く逃げれたら、また会おう」
バロイ陛下のスキルなのだろう。あの日見た猟銃がバロイ陛下の手に現れ握られている。
「行けクロ…愛してる…」
それはペットに対する愛の言葉かもしれなかったが、俺はぐっときた
バロイ陛下は俺を抜け道の隠し扉に押し込んで、隠し扉を閉めた。
最後に泣きそうな顔の子供の顔で堪らなくなる。
閉められた扉に縋り開けようとしたが、扉は開かなかった
外からは恐ろしい悲鳴や、何かが壊れる音が断続的に聞こえている
泣きながら扉を開けようとして、やがて蹲って何時間経っただろうか
外はもう静かで、この暗い抜け道を歩く勇気もない
どれくらい時間が経ったのだろうか?
起きあがって、とぼとぼと抜け道を進む
涙はもう出なかった
抜け道の途中、長い人影が伸びていた
俯いて足を引き摺るように歩いていたから気づかなかったらしい
「……クロ、生きていたんだね」
聞き覚えのある声に顔をあげると、憎々しげに俺を睨むミネルバがいた
金髪の髪を後ろに撫で付け、秀でた整った顔を嫌悪に歪め、薄い唇を舐める
軍服に身を包んだミネルバは本当にかっこよかった
「……待ってたのに、本当に食事は摂らなかったようだね」
ネロのマントを剥ぎ取ると、右目を細める
バロイ陛下にもらった金色の首輪や、体のあちこちに付けられた所有の証を見咎めてギリっと口元を歪めた
「ああ、大人しく死んでおけば良かったのに男娼になって生きながらえたのか…あの子とは本当に真逆だな、クロ、誓約を上書きする。食事は自由にしていい。しかし、私以外と関係を持つ時は死ね」
急なミネルバの言葉に縋るように見上げる
深く優しい碧眼は、今は嫌悪しか映して居なく絶望感に苛まれただけだった
ミネルバは、本当に深くネロを憎んでいる
「全部脱げ…、その首輪も取れ。脚を広げて壁に手を着きなさい」
頭では嫌だと思っても体はテキパキと下履きや飾り紐を解き、首の金色の首輪を外していく
シャラシャラと音を立てて足元に落とすと、ミネルバは満足そうに目を細めた
震えながら脚を開き、壁に手をつく。このポーズは屈辱的で涙が溢れる
「震えてるのか?誰にも脚を開く淫売が」
つっと背中の背骨を触られて、ぶるりと震える
ぶるぶる震える体に心が引き裂かれて、ぱたぱたと涙が落ちる
「……優しくされていたのか?」
せつない声に、首元に熱い息がかかる
乱暴にマントだけ被せられると、乱暴に手を取られ引き摺られて、王宮の外に出た
噴煙や血の臭いで城下は燃え、死体の山が築かれていた
「この奴隷はアーチェスト家の奴隷に、傷つけるな。奴隷印は入れている」
他の奴隷を従えていた男にネロを引き渡すと、ミネルバは踵を返して王宮に戻っていく
その姿を見送りながら首と手首に縄をかけられ、他の奴隷達と一緒に引っ張られて歩かされた
酷い気分だった。ミネルバは、迎えに来てくれたけれど、ネロの身体には触れてくれなかった。
淫売と言われた。汚いと思っている侮蔑の瞳が忘れられない
空に浮かぶ薄紫色の魔法陣、転送機で転送されながら、目を瞑る
この世界に来てから色々ありすぎて、本当に疲れた
本当に疲れたのだ
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静かな夜にバロイ陛下に抱きつかれたまま寝ていると、警告音で目が覚めた
“全体干渉スキルが使用されました2時間ステータスを封じます“
ネロは目の前に現れたポップアップに目を見開いた。バロイ陛下は飛び起きて宮殿の方向に走っていく
俺はベッドの上でそれをぽかんと眺めていた
後宮から見える大きな窓から外を覗くと空に薄紫に光る大きな魔法陣が出現し、巨大な火を噴き城下町を飲み込んでいく
城下町が燃える瞬間、人々の怒号や悲鳴があちこちから上がる
燃え上がる火から魔法陣が大量に現れ沢山の敵兵が城下町に雪崩れ込んでいく
悍ましい光景にネロはただ立ち竦んだ
ただ、後宮は静かだった
燃え上がる城下町を見下ろしていると、後ろから不意に腕を引かれた
険しい顔をしているバロイ陛下を見て、まだ子供だったと思い出し頬を撫でると、バロイ陛下はしがみついてきた
泣いているのだろうか
「最後に、最後にさせて欲しい…」
バロイ陛下の言葉に、意味もわからず頷くとベッドに放り投げられた
そのまま唇から首筋、バロイ陛下は泣きじゃくりながら、ネロの下履きを脱がせてきたので、ギョッとする
おいおいおいおい
「はやく、こうしとけばよかった…」
バロイ陛下は身体中に沢山キスマークを残していき
晒け出されたネロの下半身を撫でながら、バロイ陛下はにっこりと笑う
堪らなくなって抱きしめた瞬間、城の中に兵が雪崩れ込んだのか怒号が宮廷内に響いた
バロイ陛下は黙って下履きを履かせて、頭からすっぽり被れるマントを着せて手を引く
「この隠し扉、ここから先に抜け道があるんだ。城下に出てクロは逃げるんだ」
バロイ陛下の手を引くと、やんわり外されて陛下は首を振る
「余の判断ミスで帝国に移転魔法を許したせいで、この国は滅びる」
誇り高い目をしたバロイ陛下に首を振る
関係ないから逃げようぜ
「余だけはアンチスキル封じを持っているから闘えるのだ。時間を稼ぐからお逃げ。上手く逃げれたら、また会おう」
バロイ陛下のスキルなのだろう。あの日見た猟銃がバロイ陛下の手に現れ握られている。
「行けクロ…愛してる…」
それはペットに対する愛の言葉かもしれなかったが、俺はぐっときた
バロイ陛下は俺を抜け道の隠し扉に押し込んで、隠し扉を閉めた。
最後に泣きそうな顔の子供の顔で堪らなくなる。
閉められた扉に縋り開けようとしたが、扉は開かなかった
外からは恐ろしい悲鳴や、何かが壊れる音が断続的に聞こえている
泣きながら扉を開けようとして、やがて蹲って何時間経っただろうか
外はもう静かで、この暗い抜け道を歩く勇気もない
どれくらい時間が経ったのだろうか?
起きあがって、とぼとぼと抜け道を進む
涙はもう出なかった
抜け道の途中、長い人影が伸びていた
俯いて足を引き摺るように歩いていたから気づかなかったらしい
「……クロ、生きていたんだね」
聞き覚えのある声に顔をあげると、憎々しげに俺を睨むミネルバがいた
金髪の髪を後ろに撫で付け、秀でた整った顔を嫌悪に歪め、薄い唇を舐める
軍服に身を包んだミネルバは本当にかっこよかった
「……待ってたのに、本当に食事は摂らなかったようだね」
ネロのマントを剥ぎ取ると、右目を細める
バロイ陛下にもらった金色の首輪や、体のあちこちに付けられた所有の証を見咎めてギリっと口元を歪めた
「ああ、大人しく死んでおけば良かったのに男娼になって生きながらえたのか…あの子とは本当に真逆だな、クロ、誓約を上書きする。食事は自由にしていい。しかし、私以外と関係を持つ時は死ね」
急なミネルバの言葉に縋るように見上げる
深く優しい碧眼は、今は嫌悪しか映して居なく絶望感に苛まれただけだった
ミネルバは、本当に深くネロを憎んでいる
「全部脱げ…、その首輪も取れ。脚を広げて壁に手を着きなさい」
頭では嫌だと思っても体はテキパキと下履きや飾り紐を解き、首の金色の首輪を外していく
シャラシャラと音を立てて足元に落とすと、ミネルバは満足そうに目を細めた
震えながら脚を開き、壁に手をつく。このポーズは屈辱的で涙が溢れる
「震えてるのか?誰にも脚を開く淫売が」
つっと背中の背骨を触られて、ぶるりと震える
ぶるぶる震える体に心が引き裂かれて、ぱたぱたと涙が落ちる
「……優しくされていたのか?」
せつない声に、首元に熱い息がかかる
乱暴にマントだけ被せられると、乱暴に手を取られ引き摺られて、王宮の外に出た
噴煙や血の臭いで城下は燃え、死体の山が築かれていた
「この奴隷はアーチェスト家の奴隷に、傷つけるな。奴隷印は入れている」
他の奴隷を従えていた男にネロを引き渡すと、ミネルバは踵を返して王宮に戻っていく
その姿を見送りながら首と手首に縄をかけられ、他の奴隷達と一緒に引っ張られて歩かされた
酷い気分だった。ミネルバは、迎えに来てくれたけれど、ネロの身体には触れてくれなかった。
淫売と言われた。汚いと思っている侮蔑の瞳が忘れられない
空に浮かぶ薄紫色の魔法陣、転送機で転送されながら、目を瞑る
この世界に来てから色々ありすぎて、本当に疲れた
本当に疲れたのだ
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