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間話
しおりを挟む亜貴をずっと見ていた
画素数が高い映りの良い監視カメラはしなやかな亜貴の脚や腕の筋肉まではっきりと映し、画面を指で撫でる
たくさんのカメラに映し出されている亜貴は退屈そうで、可哀想だったが番になれない以上仕方がない
万が一、違う人と番になられたら亜貴ごと嬲り殺してしまう自信しかない
数日前にカンパーニュからされた忠告を思い出す
「一度、番を解除したアルファが、そう何度も何度も項に噛み付くと、そのうち死にますよ」
発情期が終わり、満足した後に亜貴が体調を崩したのでカンパーニュに診てもらうとこう言われたのだ
しかし、亜貴が着けている首輪は私が用意したもので安易に私なら外せてしまう上にこればかりは他人には任せられない
「何とか対策を考えるので、しばらく自重してください。再び番になれる薬は出来上がってるので臨床をお待ちください。本当に大事に思ってるのでしたらね」
カンパーニュの言葉にぐっと言葉を飲み込む。朝になく夜になく気が向けば亜貴のところに行き、気が済むまで抱いていた
あっさりと組み敷かれる体や気の強い眼差しに、潤んだ瞳、肩まで赤くなっていく顔や、吸うと色づく唇
どこまでも高ぶらせる生意気な顔つきが苦悶に歪むまで責めるのをやめられない
画面の亜貴を撫でながら見つめる。誰よりも大事だ。何よりも大切だ
穴熊達が檻をすり抜けて、亜貴に懐いて擦り寄るのを手を握りながら隠す
穴熊達まで取り上げたら、本当に亜貴がいなくなってしまいそうで
「ん?この耳欠けと鼻が黒い穴熊は亜貴の居住に入れるな。恐らくアルファだ。亜貴への触り方がいやらしい。他はベータかオメガだな。この2匹は入れないように」
てきぱきと指示を出すと、亜貴に気付かれないように侍女達が2匹を抱えて外に出して通さないようにする
「あの…ユティエル家のリース様に穴熊達は接触しています。あの2匹はリース様にも接触をやめさせますか?」
侍従の1人が傅きながら聞いて来るのを、今すぐ亜貴に匂いの上書きをしに行きたいのをこらえる
「……それは構わない。止めなくていい」
私の言葉に首を傾げながら侍従が下がる
番の儀式を終えたとはいえ、首が真っさらなリースと何故アルファを接触させるのか理解できないのだろう
他のアルファ性に触れられたら番の儀式を終えたオメガ性は多大な苦痛を味わう
私も運命の番を失い多大な苦痛を味わっている
番の儀式を終えたオメガが他のアルファに噛まれたら、どんな事になるのか
くっと笑いながら、亜貴がトイレだけは隠すためにカメラの前にトイレットペーパーを置いていくのに舌打ちしながら見守る
画面を抱きしめながら、亜貴に早く会いたいと願う
カンパーニュが、早く亜貴に薬を飲ませるのを今か今かと待っていた
。
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