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長い長い雨4
しおりを挟む両手を顔で覆い、ちらりと監視カメラを見る
「発情期の時にクルルーシュカのためのコスプレ的な着替えが欲しい……」
呟いてみる。これはもう一か八かだ。クルルーシュカは見ているのかもわからないのに虚しい賭けだ
しかし、第一性は男性の俺は思うのだ。男は視覚に弱い。つまりチラリズムで隠すようなエロい格好をする
俺は個人的にはセーラー服が好きだけど、クルルーシュカの好みは獣人なのでわからない
単純な案しか浮かばないが、穴熊達も気まぐれだし今度いつカンパーニュの薬が手に入るか、わからない今は薬の節約のため出来るだけクルルーシュカの観心を買うしかない
媚を売るようで心底腹が立つが仕方がない
本当に、それだけ発情期は辛いのだ
「くそが、死ね」
監視カメラに聞こえないように悪態もついておく
誰も喋らない侍女達が掃除をして、昼餉を持ってきた食後に、商人達が離宮に列をなして並んでいたのには度肝を抜かれたが
「亜貴様、龍王様からのご伝言です。今から商人達が商品を離宮の庭園に並べていくので、気に入った番号を私にお渡しください」
ぺらっとイアに紙とペンを渡される
「イア!イア!!もう!喋る人がいなくて!俺、退屈で死にそう!!!!!」
久しぶりの喋れる人に、イアに抱きつこうとすると、すっと避けられた
「私が殺されてしまうので、おやめくださいね。半径1メートル以内に近づかないでください。さあ、選びましょう」
何気に距離をとられてしまったが、泣きながら頷く。本当に人恋しかったのだ
それよりも、ちょっと呟いただけで、めちゃくちゃ早かったな。定期的に呟こうと思っていたのに、たまたまかもしれないけど
檻の向こうの窓のそのまた向こうに並べられていく商品をオペラグラスを渡されて見ながら番号を書き込む
「うわ、バニーガールとかあるわ。引くなあ」
「全部、龍王様のご趣味ですので、何を選ばれてもハズレはないですよ」
イアのしれっとした言葉にイアを見るも、しれっとした顔をしている
「まじ?なんかラインナップ俺と好み似てて嫌だわ。てか、俺が着るのが嫌だわ」
ナースやセーラー服もあって、胃がキリキリ痛んできた
番号を書き込みながら、もうこれは着るしかないんだろうなと目を瞑る
「あ、亜貴様の普段着も届くのですが、誰にも話かけないでくださいね。普段、返事がないにも侍女に話しかけるのもやめてあげてください」
オペラグラスから目を離し、目頭を揉む
「………いつ、自由にしてくれんの」
俺の言葉にイアが真っ青な顔をして跪く
「おやめください!お取り消しを!お早く!亜貴様!!」
唇を噛んで俯く
そうだ、今はクルルーシュカの観心を買うのに不愉快にさせてはいけない
「……取り消す。ちょっと言ってみただけ」
ばりばり本音だったのだが、ざわりとした空気まで漂ってきたので取り消す
王宮から破壊音のようなものも聞こえたが、クルルーシュカも苦しめばいい
俺がこんなに辛いのだから
。
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