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誕生祭2
しおりを挟む人気が全くなくなりユティエル家の敷地を前に息を飲む
後一歩でも入ればユティエル家なのに、庭園の草花は枯れて荒れた印象を受ける
水気がなく茶色く立ち枯れた薔薇の周りには栄養を奪おうと雑草が生い茂る
カサリと枯れた植物を踏み分けながら、噴水を目指した
異様な空気は穴熊達にも伝わるのか皆落ち着きなく、少しの物音にもびくついている
屋敷も暗く、本当に様子がおかしい
噴水の場所はあっさりとわかったが、噴水に水はなく茶色の水がはられているだけで足元から立ち上る生臭さに口元を押さえ辺りを見渡す
誰も来ていない?
亜貴達しか噴水の周りにはおらず、クマさんもブールもホーイもいない
穴熊達がキュイキュイ相談をはじめるが、噴水の縁に腰をかける
頭が痛くなるような威圧感が、庭を入ってから消えない
首が苦しい気がしてチョーカーに触れて隙間を作ると、ようやく息が吸えたようだった
「もう少し待ってみよう?あーもー、ばっちいから水触るなよ」
心配そうに行き来する穴熊の頭を撫でながら屋敷を仰ぎ見る
もう暗くなるのに灯りもついておらず、不気味だ
「変だな…」
暗くなっていく周囲に焦りがでる、そろそろ部屋に戻らないと、また逃げたと思われる
「なあ、一回戻ってからにしないか?クマさんと連………」
振り返ると一斉に鳥が飛び立ち、夕焼けが歪み、鴉が鋭く鳴く
心臓まで痛みだし、その場にしゃがんで蹲ると、穴熊達が卒倒していた
脂汗が滲み、指先から血の気が引いていく
上から何かでプレスされるような圧迫感は、向こうから歩いてくる人物から発せられているのだろう
逆光で顔は見えないが、紫水晶のような紫色の爛々とした瞳だけが光って見える
ザッザッと足音がやけに響いて聞こえる
「亜貴、悪い子だな。どうして、お部屋で待ってられなかったの?」
甘い低い声で子供に諭すように言いながらクルルーシュカが近づいてくる
痛みに顔を上げられないでいると、腕を取り、立ち上がらせられた
いつものクルルーシュカじゃないみたいな空気が恐ろしくて靴がカタカタと震えてうまく立てないでいると腰を抱かれて、向き合う形になる
「犬とメスは地上に帰したよ。二度と浮島に立ち入り禁止だけど、海外で仲良く暮らしてるはずだよ。五つ子が産まれたんだって。鳥と穴熊の成獣はさすがに犯罪者だからね。元の場所だけど」
囁かれるクルルーシュカの言葉に胸を押さえながら頷く
止まらない威圧にクルルーシュカは相当怒っている
「そ、そっか、良かった…」
「嫁がいる犬がいいの?それとも不節操オメガ?それか脳筋穴熊がいいの?」
問い詰めるような口調に、責める視線にクルルーシュカの胸元にもたれかかる
「ち、違う。その…クリマさんが酷い目に遭ってるから助けようと」
「そっち?雌がいいの?こんなに開発してアンアンいうようになってるのに?満足できないんじゃない?」
「ばっ!子供の前でなんてことを!」
「ふん、気絶してるしカンパーニュが回収しに来るでしょ。カンパーニュの湿布でコレを消したのは他の誰かに抱かれるため?」
さらりと項を撫でられて、ぞくりとする
これやっぱりカンパーニュの怪しい湿布のせいだったんか
「ち、違う…。勘違いで…その、番じゃなくなるなんて思わなかった」
クルルーシュカの唇が項に触れてぞくぞくする
「そうなの?でも今日逃げようとしたし…次、逃げたら君の周囲がどうなるか見学しておこうか」
クルルーシュカの言葉に一斉に屋敷に灯りが灯り、庭園が眩いほど点在する灯りが舗装されていたであろう道を照らしている
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