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誤解と船旅
しおりを挟む「イア……?」
髪を拭きながら室内を見渡すも、誰もいない
ドアが開く音がしたのでイアが戻ってきたのかと思い振り向くと、身体の大きなぼろぼろのローブを被った男がいた
あまりの事に固まっていると、男ははぁはぁっ吐息も荒くローブを脱ぐ
白がまだらに混ざった毛に、耳が欠けて、ぼろぼろの短パンに足には螺旋状の鈍色の鉄のアンクレットが巻かれている
「ほ、ホーイ?」
「よ、良かったあああ!亜貴、無事だった?おいら心配で心配で!!!」
泣きながら鼻水を啜り、ホーイが抱きついてきて勢いあまって後ろに倒れ込む
ホーイの耳を撫でながら、ホーイが無事でよかったと、じわじわ喜びが溢れてくる
「ホーイ、良かった。耳、どうしたの?」
「…………おいら奴隷に落とされたんだ。でもさ、人族って元々、奴隷じゃん?だから、許してくれるよな?」
ホーイの目が血走っているのに、恐怖を覚えて少し体を捩る
ホーイの爪が鋭い大きな手が伸びてきて、薄いシャツを裂き、トラウザーズを脱がしてくる
「え?え?ホーイ!?な、なにすんだよ?!やめ……」
ホーイと揉み合っていると、ガチャと再びドアが開いた事を横目で確認して、ホーイと揉み合う
「………亜貴、これは?」
低く恐ろしい響きを含んだ声に顔を上げると、無表情のクルルーシュカが入り口に立っていた
「まあ!なんてこと!」
「あ、クルルーシュカお許しください!亜貴は気の迷いで狼獣人を呼んだのです!許してあげてください」
口角が上がりっぱなしのリースがクルルーシュカの腕に絡みつきながら、こちらを見てニヤリと笑った
「侍女を追い出したと聞いて見に来てみれば、呆れるわ。龍王様、リース様と休みに行きましょう?」
騒めく侍女と表情を無くしたクルルーシュカに、しまったと思う
どうみても逢引きに見える上に更にまずいことに服を着ていないのもまずい
これが、リースの企みだったのだ
リースは、わざと夜に機関管理室に来いと言ったに違いない
何故なら、何かが起こるならば夜だと思い込んで警戒していなかった事が悔やまれる
リースと腕をくみ、無表情で黙ってるクルルーシュカからめきめきと厳しい音が聞こえてきたかと思うと、みるみるうちに皮膚が膨らみ、目が変形し、鋭い爪の巨大な白い鱗の腕が現れ、静かにクルルーシュカが変形していく
「我慢、しなきゃ、我慢、しなきゃ…」
呟くようなクルルーシュカの声が聞こえる
船室を破壊し、甲板まで突き抜け、侍女達を吹っ飛ばして紫色の瞳の白い龍が見下ろしていた
鋭い爪に、破れたトラウザーズを引っ掛けられ、龍の両手に宝物のように包まれると、外では怒号や叫び声が聞こえる
バンと龍が飛んだのか、風を切る轟音がして、気がついたら龍が少し手を開いて、見つめてきていた
「私じゃ駄目なの?どうして…どうして亜貴…」
鼻を擦り付けられて、その鼻を撫でる
「このままでは、殺してしまう…殺してしまう…」
必死な龍の声に、酸素が薄くなっていく
自我がホワイトアウトしていくのがわかった
end
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