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船の中の会合とリースの計画
しおりを挟む「ふ、船はまだなのかな?」
すっぽりと後ろからクルルーシュカに抱き寄せられ、恥ずかしくて誤魔化すように言うと、周囲に風が巻き起こり、水面が波打つ
豪華客船のような巨大な船が、空から凱旋しながら湖に降りてくる
「来たよ、大きな船だから迷子にならないように手を握ってよう」
にぎにぎと両手を後ろから握られ、降りて来たタラップを上り船に乗り込む
「ちょっと!正妃の僕を差し置いて!クルルーシュカ!!お、お父様に言いつけてやる!正妃を蔑ろにしていると!」
後ろから侍女達に宥められながらリースが叫ぶ
「あ、クルルーシュカ、リース様を手伝ってあげて…」
見上げながら言うと、クルルーシュカは少し後ろを振り返り、緩く首を振る
「何故?侍従が手伝えばよい」
当然だと言わんばかりのクルルーシュカに、少し不安になりながらも、これ以上は何か言える雰囲気でもないので甲板に上がる
「綺麗!クルルーシュカ探検してきてもいい?」
「ああ、目につく場所で下には降りないようにな」
眩しそうに目を細めるクルルーシュカに背を向けて、来いと顎で指してきたリースの方向にはしゃいでいるふりをして向かう
不機嫌なぶすくれた顔をしたリースに、湖を一緒に見ているふりをしながら肩を組まれる
「夜になったら、一番最下層の機関管理室に1人で行け」
こっそり耳打ちをしてきたリースは悪い顔をしてて、何か企みがあるのだろうとすぐにわかる
「まあ行かなくてもいいよ。結果は同じだから!!」
嫌そうな俺の表情に、すぐに食いつくリースは悪役のような笑いを上げながらクルルーシュカにくっつきに行った
行かなければ、何も起こらないよな?
陽が沈んでいく遠い地平線を眺めながら、唇を噛む
「でしゃばって感じの悪い。リース様が側に行けないように威嚇して」
「性格も悪いわね、あら、こわーい、睨んでるわよ」
わざとぶつかってくる侍女達に言い返そうとして、リースとクルルーシュカが腕を組んでいる姿が目に入り言葉を飲み込む
「わざわざ船にまでついて来て、お二人の邪魔だわ」
「亜貴様、こちらに」
最後はイアが来て、庇うように立ち塞がり、俺を背に隠すように侍女達に向き合う
「よって集って幼稚ね?少なくとも龍王様は亜貴様の方を優先なさるわ」
「あら、そりゃ大事な抱き枕だもの」
「今だけよね。リース様が発情期を迎えられたら、可哀想なことになるのはそちらよ?」
「イア、あなたも落ちぶれたわね」
笑いながらリースの方へ行く侍女達の背中をイアは、じっと見ている
「1人くらい落としてもバレ……」
「バレるよ!ダメだよ!落ち着いてイア!!!」
バイオレンスな発言をするイアにツッコミを入れつつ、部屋の準備が出来たというので向かう
食事はまた別の場所になるそうなので、気分を変えたくて室内のシャワーを浴びていると、チャイムが鳴りイアが対応しているようだった
「……呼ば…れ…」
「亜貴様が…浴中で……」
「代わりに……えてる…ら」
漏れ聞こえる声に、イアの声が遠くなっていく
不思議に思いながら浴室から出ると、イアには珍しく着替えが用意されておらず、室内も静かだ
仕方なく脱いだ服を着る
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