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船遊び日和
しおりを挟む晴天の強い日差しは柔らかくなり季節の変わり目がわかりやすくなってきた頃、イングリッシュガーデンは瑞々しい葉っぱを朝露に濡らし、霧が晴れていく
今日は、グローブ湖に船遊びに行く日だ。ぬかりなくリースも同行するので気持ちは暗いままだ
しかも数日間だけだったのに禁欲を強いられたクルルーシュカが朝からベタベタと0距離で蠅のように集ってくるから煩わしいこと煩わしいこと
やれブローチはこれにするとか、お揃いのアクセにするとか、靴は絶対にこれにするとか
朝から好きに飾ってくださいよと俺は着せ替え人形に徹していた
「完璧だ…。横のリボンを外すと上着が脱げる仕様まで完璧だ」
いい仕事をしたと言わんばかりに満足気なクルルーシュカから聞き捨てならない言葉も聞こえたが、俺の腰を抱いてうきうきしているクルルーシュカに仕方ないなと思う
「龍王様があんなに喜んでらして」
「ずっと日程の確認をなさってたんですよ」
普段は俺に話しかけてこない侍女達も口々に言う
「「今日はリース様がご一緒だから」」
その言葉は聞こえないふりをして、クルルーシュカに促されるまま竜が率いる馬車に乗り込む
「あ、あらあら!リース様とご一緒の方がよろしいのでは?」
「あの、リース様は後ろの馬車ですよ」
とか、侍女達は俺の敵だ。クルルーシュカは俺の肩に腕を回したまま首を傾げている
「これで行く。早くしろ。湖に沈みたいか?」
つまらなそうにクルルーシュカが言うと、侍従達も慌てて準備して出発した
何故か移動して来たリースを同乗させてきて
「クルルーシュカ!おはよう!今日もかっこいい~!」
対面に座ってた癖に、クルルーシュカと俺の間にぐいっと入り込んで、俺は窓際に追いやられリースはクルルーシュカの腕を組んでいる
「儀式の誓約は厄介だな…」
ぽつりと呟いて窓の外を見たままクルルーシュカが黙ってしまったのにリースはぺらぺらと話しかけている
心臓強いな
俺も窓の外を眺める事にした
下車をするとき、クルルーシュカとリースが隣り合っているのを侍女達が喜んでる姿を見て、何となく面白くなくて、さっさと1人で下車して湖を見渡す
見たことない鳥がたくさんいるのを見つけて、近くにいたイアの腕を引き見に行く
白い鶏冠のふわふわした鳥は見た目にも可愛い
「わあ!わあ!なにあれ!可愛い!小鳥かな?ふわふわだ!」
「ミヤシアカネドリですね。美味ですよ」
「…イアさあ、あれが焼き鳥か何かに見えてるわけ?」
呆れた俺とイアの間にクルルーシュカが走ってきたのか割って入ってきて俺の肩を抱きながらイアに背中を向ける形にする
「可愛い鳥だね、亜貴。亜貴の方がかわいいけど」
髪を撫でながらうっとりと言って来ているが、急いで来たせいかクルルーシュカの息が上がっている
「だ、大丈夫?イア、クルルーシュカに飲み物もってきてあげて」
「亜貴様が飲ませてあげてください」
イアにボトルごと渡された水のキャップを開けてクルルーシュカに渡そうとすると手を重ねられる
「亜貴が飲ませて…」
ボトルをなかなか受け取らないクルルーシュカに苛々していると、クルルーシュカは唇を尖らせている
な、何待ちだ?
「口移しで」
ん、としてくるクルルーシュカに、リースを振り返ると鬼の表情だったが、顎をしゃくって、やれということらしい
確認してしまったことからリースに支配されてんなと思いながらも水を口に含み背伸びしてクルルーシュカの唇に触れる
加減が難しいな
ちょっとずつ口移しで水を飲ませていると、さわさわと胸元に手が回ってきたのでバシリと叩いておく
油断も隙もない
そう思っていると、後頭部に手をまわして固定されて驚いていると、ぬるりと舌が口内に入り込んできて、息を奪うように舌が絡まってきた。
「ん、ぅ、は、なせ…!んっ」
「はぁ、ごめんね、可愛くて…」
口端を指で拭ってきながら、クルルーシュカは熱い息を吐く
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