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知らない番号、知らない着信
しおりを挟む「ただい…ま、お、何だ?部屋暗くしてさあ?」
パチンとホーイが電気をつけて室内が明るくなる
俺はクッションを抱いたまま、長時間テレビを眺めていたようだ
「あ、ごめん。おかえり、ご飯の支度するね!」
「んー、亜貴、辛かったら…いや、何でもない…」
頭を撫でてホーイは冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぐ
これが限界なんだよ、この狼獣人は
朝、クリマさんが持ってきてくれた食事をレンジにいれて加熱している間、2人とも喋らなかった
そういえば、ホーイは指名手配されてるって知ってるのかな?
「あの…ホーイ…」
「あ!そういえば食べたがってた、お菓子買ってきたぞ!なでて!撫でて!」
袋を差し出すホーイに、ぎゅっと出そうとしていたお皿を握りしめる
「……ありがとう、い、犬じゃなくて狼になってよ」
ホーイは犬は怒るんだよ、何故か
狼になったホーイをひとしきり撫でていると、ホーイのポケットの携帯が鳴っている
「んだよ、今日めちゃくちゃ知らない番号かかってくんだよ。もー、着拒しても違う番号から…なんなんだよ」
「え、知り合いか家族に何かあったかもしれないのに!貸して!」
「えー、おいら家族はクリマ姉さんくらいしか…」
「クリマさんになんかあったら大変じゃん!!!!!」
ホーイの携帯を奪い、通話を押すと雑音が聞こえてくる
『助けて…助け……』
「もしもし?誰ですか?く、クリマさん?…じゃなさそうだ。誰ですか?」
『…………ガタガタッ、見つけた』
プツッと着信が途絶えて、耳を離して画面を見つめる
「誰だった?」
「知らない男の人っぽいけど…かけ直しても出ない」
「あーもー、飯にしよ、飯!今日は何かなー」
手を合わせて、ニシニシ笑ってるホーイに、食事を並べていく
「あ!手、洗った?ホーイ、そのまま駄目だよ。手洗ってきて!」
しぶしぶ手を洗いにいくホーイに、サラダを水につけて水切りをする。皿に盛り付けていると、後ろからホーイが抱きついてきた
首にぐりぐりと唇がくっつく感触がする。確かめるように項や肩に鼻が埋められ匂いを嗅がれているようだ
「もー、邪魔だよ。くすぐったい、あはは、ダメだって、ご飯にするんだろ………」
不意に腹に回された逞しい腕に心拍数が上がっていく
胸元をやらしく撫でる手に性的なものが含まれていてぞっとする
ホーイは、腕も灰色の毛で覆われていて、爪も鋭い。なのに、今腹に回されている腕は白く筋肉質で痛いくらい力を込めてきている
「楽しそうだね、私がして欲しかった、やりたかったこと、あんな犬として…あ、可愛い…子犬ちゃんになってるの?」
「く、クルルーシュカ……」
「傷つくな、そんな顔しないでよ?おい、連れて行け」
どたどたと洗面室から物音がして、ホーイが血塗れで拘束されて獣人達に運ばれていく
「ほ、ホーイ!ホーイをどこに…!!?」
でかいクルルーシュカに立ち塞がれて、両脇を抱えられて運ばれていくホーイを追いかける事ができない
クルルーシュカが冷たい視線のまま見下ろしているのが怖くて、じりじりと後退りをする
白い睫毛が影を落とす紫色の目が細められ、物凄く怒っているのがわかる
勝手に連れて行って、不敬罪だと怒られても理不尽すぎる
「く、クルルー…り、龍王様、今まで申し訳…ありま、せんで…した…」
しんとした室内に、沈黙が落ちる
全身の毛が逆立つくらい、クルルーシュカの怒気で空気までビリビリしそうだ
「なにそれ?」
クルルーシュカの大きな手が迫ってきて、思わずビクリとして更に後退りすると、クルルーシュカもじりじりと近付いてくる
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