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地上獣人居住区
しおりを挟む船から降りた俺とホーイは普通に電車を乗り継ぎ、迎えに来てくれたと言うホーイと同じ狼獣人のクリマさんが駅まで迎えに来てくれた
クリマさんはホーイそっくりの狼獣人で、ただ、盛り盛りの女体だった。タンクトップに短パンで腕と太腿に入った刺青がカッコいい。侍女長に預かってきたというピンで留める犬の耳と尻尾を俺にくれた
「獣人が、人見たらびっくりしちゃうからね、付けててね」
ニッと笑うクリマさんを、ぽや~と見惚れているとホーイに肘鉄された
「子犬っぽい、ふふ、子犬っぽいぞ!亜貴♡」
ぱちぱち耳を留める俺を笑うホーイを睨みつけていると、クリマさんは4WDにエンジンをかけて出発した
「似合うじゃん。あと、その恐い臭い消さないと。ホーイ、匂い消しないの?これだけベッタリだとすぐ辿れるよ」
「あ、やば、クリマ姉さんどっか駅にもう一回寄って、迂闊だった!」
「よくこの臭い無視できたわね…まあ、侍女長さんのお願いだから厄介な事なんでしょうけど、ホーイ、何でも引き受けてたら、しぬわよあんた」
匂い消しのスプレーをホーイに投げながら、目が合った俺にパチンとウィンクをする
クリマさん、素敵だ~
「一応、あんたの子供で奥さんは逃げたことにしてあるから、家族の匂いを付けてあげなさいよ」
「う、うう…わかったよ、暫くは親子として一緒に庭師として働こうな、亜貴は、外はまずいか…引きこもりってことで…」
犬獣人がきゅ~んとなるのは、かなり可愛い
アニマルセラピーって本当に効果あると思う
そのまま駅に着いたらスプレーをビシャビシャになるくらいかけられて、ぶかぶかのクリマさんのシャツとジーパンに着替えて、着替えはゴミ箱に捨てた
女獣人といえども獣人は体格がかなり良いのだ
ホーイさんとクリマさんにすりすりされて、くすぐったくて逃げると動くなと怒られた
「亜貴、後ろの席に隠れててね。ホーイ、毛皮の色をすぐに染めにいきな」
「えっ!おいら灰色の毛が気に入って…」
「不敬罪の子、匿うのよ?変えなさい」
ぽいっとホーイに毛染めを渡すクリマさんに恐縮する
そうだよな、迷惑かけるよな…
「あの、俺1人で逃げますよ?その…迷惑かけちゃうし…」
行く宛なんてないけれど、小さくなっているとホーイが手を握る
「駄目だよ。獣人の事は獣人に任せなよ。亜貴1人なら一日も経たず捕まるよ?獣人の処刑は基本的に拷問だよ?人は耐えれないよ」
「そうよ、あんたなんか一回の打で死ぬわ多分」
2人に言われて、目をきょときょとしながら頷く。
クルルーシュカは俺をそんな残酷な刑に処そうとしてたのか…
暗い気持ちで沈んでいると、獣人居住区が見えてきた
郊外の森深くの道無き道を走り、獣人居住区に入る
全く雰囲気の違う街中は、基本豪邸で、都市部のようだった
清潔な街中に、耳や尻尾の生えた人たち
窓から覗いていると、メッと怒られた
「すごいね、綺麗な街並み」
「人の街はごみごみしてるわよね。着いたわよ。行こう」
街中のビルの地下駐車場に車を停めると、クリマさんは、カードキーでさっさと案内して、高層階の浮島がよく見える部屋に連れて行ってくれた
「……綺麗」
窓にへばりついて浮島を見つめる
あそこにクルルーシュカがいて、今何を考えてる?
そこまで考えて頭を振る
「じゃあね、ホーイ。時効が来たら亜貴も帰れるから大人しくね。食事は届けるから」
「時効があるの?」
「あるわよ。この場合は半年ね。じゃあね」
「うう…おいらの灰色の毛皮が…」
嘆いているホーイを、ふふんと見てクリマさんは去っていった
ここから共同生活を送るのだが、これが本当に大変で、このホーイという男、生活力が皆無であったのだ
end
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