完結⭐︎龍人様の番

66

文字の大きさ
上 下
1 / 68

そういう関係

しおりを挟む


イングリッシュガーデンのような庭園には花々が咲き誇り、小川が流れている

庭園にあるカゼボで足を投げ出して座る秋山 亜貴あきやま あきは先程から鬱陶しいまでに送られてくる視線に憤慨していた

庭師でもある亜貴は、この城の王である龍人族のクルルーシュカの執念と言っても過言ではない執拗で粘着質な視線に辟易していたのだ

「見んな、腐る。どっか行け」

唸るようにそう言っても、クルルーシュカは、その巨大な体を小さくし、犬猫でも見てんのかといわんばかりのきゅるるんとした目で見つめ返してくる

犬猫がどれだけ威嚇しても可愛いように、彼の目には亜貴が可愛くうつっているのだろうか

クルルーシュカは白髪の髪を後ろに撫で付け、まつ毛まで白い

透き通るように白い肌で目はパープルアイだ。

御伽話に出て来そうな美貌だが、忘れてはいけないのは、こいつは誘拐犯だということだ。

市井では、龍人様の番なんてのが持て囃され、まだ番がいないクルルーシュカの美貌も相待って、誰がクルルーシュカの番様なのか噂にもなっていたのだ

亜貴はまだ学生で、女の子達が騒いでいるのを興味なく聞いていた

天上人なんて住む世界が違いすぎて興味もなかった

だから、お城が解放された日も、番探しの面通しもいかなかったのに

なのに、いきなりこいつは目の前に現れて、亜貴を拐ったのだ

庭師なんてしているのは、毎日退屈で何をしても監視しているようなクルルーシュカに息が詰まるからだ

だから暴れてなんとか、庭の手入れを手伝う仕事にありつけたのだ

本当ならば、閉じ込めて一日中眺めたいと言っていたクルルーシュカの言いなりになりそうだったから

「亜貴、休憩しよう?ね?」

にこにことメイド達にお茶のセットを運び込ませ、ちゃっかり休憩していたガゼボに侵入してくるクルルーシュカは亜貴の横に座る

「あーもー、暑っくるしんだよ、離れて座れよ!」

これだけ悪態をついているのに、よくもまあ幸せそうに笑っているものだ

手を握ろうとしてくるのを、わさわさして拒否しながら避けていると、熱い視線のままクルルーシュカが手にキスを落とす

「きたねーな、触んなや」

ごしごしと下履きで拭く亜貴を笑いながらクルルーシュカは抱きつこうとしてくる

「亜貴は照れ屋さんだね。大丈夫、誰も見てないよ」

クルルーシュカが手を払うと人の気配がなくなる

ある程度の接触は許しておかないと、目がいってるクルルーシュカは何をするかわからないので、今日は腕を組むぐらいは許してやることにした

幸せそうにクルルーシュカが笑う

本当に、自分が番なのか亜貴はまだ受け入れきれないでいるのだった


end
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

愛する人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」 応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。 三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。 『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

処理中です...