首輪のわ

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不安で眠れないまま、何度も寝返りをうつ

朝に神宮寺から匂った知らないオメガの匂いや、避けられた事が気にかかって仕方がない

神宮寺は、もう番は作らないと言っていた

毎日迎えにいく

約束だってしたはずだ

神宮寺が気になって眠れず、朝方になってぼんやりと窓の外を眺めながら紫苑は静かに泣いていた

あれだけ執着していたのに、手に入ったらあっさりと捨て置く

傲慢なアルファらしい行動だ

あまりオメガの社会地位は高いとは言えず、うつり気なアルファが複数のオメガと番い若いオメガに永遠に入れ替えられて飽きられたオメガが捨てられ忘れ去られるのも、よくある話だ

神宮寺に、いつの間にか心を許してしまった自分を責めても時間は戻らない

ただ、神宮寺への思慕と狂いそうなくらいの、いやオメガが番に抱く焦がれてやまない狂気が胸に去来する

朝になって、夕方になっても戻らない神宮寺を、部屋で蹲って、ずっと待っていた紫苑も、ようやく夜になってわかってしまった

こんな事はいままでなかったし、今は連絡すら既読にならない

神宮寺が帰らなくなって2日目の夜には身の回りの荷物を纏めて奈津の部屋の扉を叩いていた

泣きじゃくる紫苑に何も言わず奈津は受け入れてくれた

「うわ、めちゃ泣いててきっしょ…重くて引くわあ…」

いや、どん引きしながら迎えてくれた

「いや!奈津のが凄かったからな!1時間は泣き喚いてたわ!」

「えー?そうだっけぇ?まあまあ、わかってた事じゃん?ていうか、その荷物なに?」

悪びれもせず肩を竦めて、奈津は両手に抱えていた荷物を見咎める

「今日から奈津の部屋に住む」

「え?いや、僕了承してないよね?」

「全部奈津のせいじゃん。俺、番なんかにさせられて一生左右されるのに、責任とってよ」

ずかずかと上がり込み奈津の部屋に荷物を置くとゴロンと部屋の真ん中に寝転ぶ

「めっちゃ嫌なんだけど!ちょっと!そのラグ高いんだから鼻水拭かないでよ!!」

「このラグより俺は汚された…」

「うわ、うっざ!紫苑、早く帰ってよ!戮様に見つかったら僕どんな目に遭うかわかんないじゃん!!」

ラグにしがみつく俺を何とかしようと奈津は背中から羽交締めにしてくるが、体格差では俺のが有利だ

それに

「大丈夫なんだよ。大丈夫…本当、奈津は俺への責任だけ取ってくれたらいいから…」

「いや、大丈夫じゃないって!何の責任!?遅かれ早かれじゃない。それに過去に僕がどんな目にあったか見てるよね!?サイコパスなの!?もー!」

ぐいぐいと引っ張る奈津に不意に力をぬけば、奈津は後ろにひっくり返った

すかさず奈津を組み敷き、覆いかぶさる

「ちょっとぐらい慰めてくれて……も?」
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