首輪のわ

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ーーー

その日は、なんとなく神宮寺の様子が変だった

なんとなくソワソワして、いつも通りくっついてこないので制服の袖をつんつんと引っ張ると、驚いて近づかないように離れられた

その時に微かにフワリと匂いがした

オメガ特有の優しい甘い匂いが

嫌な予感に心臓がバクバクしたが、これくらいの匂いならば日常でもつくくらいの匂いではある

「え?何?なんか避けてる?」

神宮寺に避けられた事にショックが隠しきれず、つい責めたような口調になってしまう

「なんのこと?しぃちゃん、今日はご機嫌斜め?可愛い眉間に皺がよってるよー」

惚けた顔で神宮寺は俺の眉間を親指で擦り、にっこりと微笑んで顔を覗きこんでくる

匂いがダメになった訳ではないらしい

それに死ぬほど安堵する

この頃は、いつ捨てられるのか

いつこの関係がダメになるのか

周りが俺の悲劇を期待していて、神宮寺は可愛らしいオメガ達に取り囲まれていて不安で堪らなかった。

不安で眠れない日も続いていて、ふと1人になりたくて授業をサボって屋上にいたら、珍しく奈津が先にサボっていた

「………奈津、久しぶり…」

力なく言う紫苑に、奈津はパックのコーヒーを投げてきた

「危険で皆んながやめとけって言う相手で捨てられると解っているのに、選ばれたオメガである自分は皆んな大丈夫だって、そう思うんだよね」

奈津の言葉がグサリと胸に刺さる。自分だけは大丈夫なんじゃないかと、心のどこかで思ってはいなかっただろうか?

泣き崩れた俺に、奈津はヨシヨシと頭を撫でてきた

「奈津は?奈津もこんな気持ちだったの?」

奈津に泣きながら縋り付くと、奈津は仕方ないふうに肩をすくめる

「いや、まあ最初から解ってたから。まあでも多少はそんな気持ちもあったけどねぇ」

「こんなの、地獄だ…たくさん、たくさん約束して、俺だけだって言ってたのに…もう、こんなの耐えられない…」

ぐずぐず泣きじゃくると、奈津がぎゅうと抱きしめてきた

「その場合は僕もいるから…神宮寺家の番ならさ、一応生活は保証されてるから、発情期も四十路になれば解放されるし。発情期には煩わされるけど、襲われるなんてないだろうし就職もフリーよりは有利じゃん?」

慰めてくれているつもりなのだろうが、いやに具体的で現実的な提案に、泣きながら笑ってしまった

やっぱり、戮を想う気持ちとは違うけれど、奈津が好きだーー。

「大体さあ、いくら家の為とはいえ異常なくらいオメガ好きとかでもないのに何人も番にするとか正気の沙汰じゃないよ。だから紫苑、自分からの行動てあんまりしたらダメだよ?」

奈津の言葉が遠い。最近寝てなかったからだろうか?なんか安心してしまって、すごく眠たい

もたれかかると、奈津が仕方ないみたいにため息を吐く

「……泣き疲れて寝るとか。もう…」
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