首輪のわ

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「そっか、良かった!俺もしーちゃんだけだよ、しーちゃんも同じで安心した!」

パッと明るく切り替わって、神宮寺は立ち上がると手を引いてくる

「早く行こ?」

「お……おう」

神宮寺の言葉は軽い。気持ちもそれに比例しているようで叫び出したくなるような気持ちになる

本当に何故、放っておいてくれなかったのか

神宮寺はずかずかと俺の領域に入り込んで、いつの間にか気持ちまで奪っていった

奈津を想う気持ちと違う。こんなに醜い感情が自分にあったのかと絶望する

神宮寺に肩を抱かれながら食堂に向かう途中、神宮寺は耳元に唇を寄せてきて、手に手を取ってきていたので周りがざわめいていた

あのクソ地味なオメガとか鏡見たことあるのかとか、神宮寺様が汚れるとか、やっぱり地味でもあっちが凄いのかとか聞こえてくる

ざわざわと気持ちまでざわめいて、まるで自分じゃないみたいな弱い、不安な気持ちに掴んでいた神宮寺のブレザーを握った手に力がこもる

「もう、二度と、奈津に構わないでね?」

サラリと髪を撫でながら、神宮寺は不安や嫉妬の入り混じった表情を隠しもせずに訴えてくる

今はまだ大丈夫。安堵と、なんとなく気恥ずかしくて、そっぽを向いて頷く

現金かもしれないが、もう奈津に関わりたいという気持ちは薄れていた

番が同じなオメガで同じクラスなのだから関わるだろうが、今回奈津が躊躇いなく神宮寺にチクッていたので関わりを考えないといけないだろう

食堂で昼食を食べていると、神宮寺が食べさせようとしてきたり、膝に乗せようとしたりしてきたのでビシバシと厳しい嫉妬や羨望の眼差しを感じたが神宮寺は慣れているのか、そんなもの気にもしない

一方、内心チキンな俺は聞こえるように悪口を言われたり勘弁してほしいのだが

「毎日迎えに行くね」

キラキラと光を放つように微笑む神宮寺に、ぎゅうと胸が苦しくなる

これが番効果なのだろうか?

こうして絆されて、本気で好きになって放り出された番が何人いたんだろうか?

神宮寺に捨てられると思えば胸が苦しい

「うん」

内心もう行かないと言いたかったが、しかし、番効果なのか神宮寺の迫力なのか頷きながら、もそもそと学食を食べる

「約束ね」

神宮寺は約束をすごくしたがる

確定もしてない約束なんて出来ない
ありえない未来に約束なんて必要ないと思うのは捻くれすぎだろうか?

楽しそうな神宮寺に何も言えないまま、時間だけが過ぎていくようだった





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