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体がだるすぎて起き上がりたくない俺を尻目に艶々した顔で神宮寺は制服に着替え、頬にキスをしてくる
「しぃちゃん、いい子でね。今日は急いで帰ってくるから」
甘く言う神宮寺を無視しようとしたら、黒く目が濁っていくのがわかって、慌てて神宮寺の首に腕を回しキスを返す
「…早く、かえってきてね」
2度と帰ってこなくていいが、昨日の記憶が邪魔をして、邪険にはできない
もう怖すぎる
指を怪我しているせいか、力は入らないし、腰や太腿も痛いし最悪だ
普通、人の指に針を刺せるか?神宮寺は異常だ
先程の神宮寺の黒く濁った目を思い出して、ふるりと震える
あと、2ヶ月の辛抱なのだ。神宮寺は3ヶ月で番契約を終える
それまで奈津には会えないし、巻き込めない
シーツを噛んで嗚咽を噛み殺す
誰にも相談できないし、神宮寺がこんな事をするなんて信じてもらえないだろう
いや、信じてもらえても、誰も助けられないだろう
冷たいシャワーを浴びて、自分の部屋に戻ると、少し安心して、ベッドに潜り込んで丸まる
予想だにしなかった暴力に、自分で思っているよりも疲弊していたらしい
すぐに眠たくなり、目を閉じる
自分以外の匂いを常に纏わりつかせている番のアルファ、無条件で愛したくなるのは本能からだろう
色々な事が腹立たしいのに、気になって惹かれれる部分があって恐れている部分もある
神宮寺自体のインパクトが強すぎるのだ。強烈に人を惹きつける癖に、短期間だけの癖にすごく大事なもののように扱ってくるからたちが悪い。紫苑のオメガ性以外には大して興味がなさそうなところも腹立たしい
そして、ふとした所で出してくる甘えて蕩けるような愛しくて堪らない表情もむかつく
番になった、あの夜からどうすればいいのかわからないままだ
神宮寺が番な筈なのだが、自分が番と認識しているのは奈津というところもわけがわからない
恐怖で支配された、この後に及んで喉から手が出るほど欲しているのは奈津なのだ
ベッドで反転しまくっていると、神宮寺から着信が入った
寝転んだままスピーカーを押す
「しぃちゃん?今何してる?」
でろでろに甘い声に思わず終話を押しそうになりながら堪える
「お昼一緒に食べよ?寮に戻るね?しぃちゃん?お返事は?」
低くなった声に慌てて返事をしようとして、喉や手が震えてて失敗した
「……お、おう。いいのか?」
「しぃちゃんといたいからね。あとでね」
ゾワっとしたが、またなと言って携帯を切る。昨夜の恐怖が蘇って、全身が戦慄く
薄い水色のシーツに顔を埋めてやりすごそうとしたが、じんじんと熱を持つ指先が許さない
ただでさえアルファは怖いのに
携帯をいじりながら、奈津の番号を指でなぞる
削除を選び、震える指で削除を押す
奈津が神宮寺の番である限り絶対に諦めなければ、チャンスはくるはず
「………嫌がるからダメなのか?あのチビシリーズのように振る舞えば、早く解放されるかも?」
それはナイスアイデアに思えてならない。神宮寺はあのチビシリーズに関しては扱いがぞんざいなのだ
手に入ると案外、色褪せて興味もなくなるのかもしれない
逃げるから執着に変わるのだ。追われたら飽きるし逃げたくなるのではないだろうか
そうと決まれば、昼飯を一緒に摂るつもりなのだから準備万端にして神宮寺にべたべたすればいいのではないだろうか?
やってみる価値はある
なんかぞわぞわするけど
そうと決まれば、神宮寺が戻って来る前に昼食の準備をする
とはいえ、コップと箸を並べただけだが。あとは宅配BOXのものを並べるだけの簡単な作業だ
神宮寺は戻って来た時、妙な顔をしていたが、お昼休み中は、膝に乗ったり食べさせてみたりベタベタしていたら上機嫌で学園に戻って行った
思ったより精神が削られる作業だったが、首尾はまずまずといったところ
要は周りのオメガ達の真似をすればいいのだ
でも、こんな事しなくても2ヶ月経てば捨てられるのにと思わなくもない
いや、もう指に針をぶっ刺されるのはごめんだ
当面はご機嫌さえとっておけば神宮寺は怖い事をしない筈
思えば奈津の件も異常としか言いようがない
普通、1人だけではないとはいえ番を違うアルファに犯させるだろうか?本当に悍ましい
そんなことを考えていると、携帯の着信が鳴った
見覚えのある電話番号に視線が泳ぎまくる
奈津の番号だ
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