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コンコンと部屋がノックされる音で飛び起きる
神宮寺はもうすでにいなくなっていた
何処へ行ったんだろう?空いているベッドを眺め、ぼんやりとしながら散らばっていた服を着て出ると、奈津がいた
「おはよう!紫苑!無事でよかったー。シャワー浴びて、普通のパンツに着替えようか」
今日も元気な奈津が、ポリ袋とパンツを持ってきてくれてバスルームに向かう
パンツの鍵を開けてくれてから、部屋で待ってるねと言う奈津にほっとする
乳首や、色々あらぬところがじんじんする
オムツを入れたポリ袋を縛り、シャワーを浴びる
昨日は、本当に怖かった。延々と首輪を噛みちぎろうとする神宮寺も、尻に当たっていたものも
このまま、同じように毎日をヒートまで過ごすんだろうか?
そして、ヒートになったらどうなるんだろう?
シャワーから上がると奈津は勉強をしていた。意外と奈津は勉強が好きなようで、一緒にいる時もよく勉強している
後ろから奈津に抱きついて神宮寺を上書きするように身体を擦りつける
「よく頑張ったね」
昨日あったことを見透かすように、奈津は軽くキスをしてくれた
柔らかな感触に安心して抱きつく
「奈津、怖いんだ…αてみんなあんなのなの?俺は奈津が好きなのに…」
「大丈夫だよ、この際、番になってもいいかもしれないよ?」
縋り付く俺に、奈津は綺麗に笑って見せる
「3ヶ月後には見向きもされなくなるから。そうする?」
首を傾げながら、奈津の顔にぱさりとかかるくすくすと笑う奈津が少し怖かった
「そうなったら奈津は俺から離れるの?」
声が震える。縋るように抱きついて見上げれば、迷ったような眼に、まだ付け入る隙はあると頭の冷静な部分が告げる
「そこまで!オメガ同士でいちゃいちゃしない!離れろ、そこのオメガ達、離れなさい」
バンと部屋の扉が開かれ妙にすっきりした顔の神宮寺とチビ4こと岬が一緒に部屋に入ってきて、ぱっと離れる
見られたくないところを見られた
ふと目を上げると、岬は目を逸らし露わになった項には何度か噛まれたのか、いくつも歯形がついていた
まだ血が滲んでいて痛ましい
やりやがったな
「勝手に入ってくるなって言ってるだろ!しかも急にドア開けんな!」
手元にあったティッシュの箱を神宮寺目掛けて投げたが、ひょいと避けられた
「奈津、こいつと接近禁止な。今後半径1m以内に近づくな」
神宮寺はαらしく睥睨した支配者の眼で奈津を睨む
奈津はびくんと解りやすく反応して頷いた
「奈津!?ちょっ、神宮寺!お前どんな権限があって奈津にそんな事言うんだよっ!?」
奈津は俯いているし、αとΩの関係なんてどんなものなのか具体的には知らないが、あんまりだ
「権限?権限ならありますけどぉ、奈津は俺の番なんですけどぉ、それを言うならお前はなんなの?神宮寺家の番にちょっかい出して、ここでやっていけると思ってんの?」
ぐっと神宮寺の言葉に言葉に詰まる。確かに、奈津は神宮寺の番だ
奈津は気まずそうに怯えたように俯いたままだ。仕返しするんじゃなかったのかよ…。
「ど、どうなるってんだよ?」
怯まない俺に、神宮寺は勝者の顔で嗤う
「これから、解るよ。しぃちゃんは俺に泣きながら鍵を渡して、番にしてくださいって頼むことになるから」
神宮寺の腕に絡みついていた岬が、ぴくりと怒りの視線を俺に送ってくる
「……楽しみにしてるよ」
悍ましい、美形の昏い笑顔にぞわぞわと怖気が走る
神宮寺は何かしたのだろうか?
俯き震える奈津を一瞥して神宮寺は出て行った
2人残された部屋で、奈津は自分の体を抱きしめて蹲り、震えていた
「な、奈津……」
「ぴぁああああん!今の聞いたっ!!?聞いた!?俺の番!俺の番だって!!やぁああああん!」
身悶える奈津に時間が止まる。嘘だろ?わかってたけど嘘だって言ってほしい
「な、奈津……さ、ん?」
「番でね、3ヶ月以上戮様の側にいるのって僕だけなの。まだ1年だけど。理由わかる?」
奈津が俺の頬を撫でる。何故か涙が止まらない
「彼好みの匂いを探して、献上しているからだよ。役に立つ僕は、僕だけはオメガの発情期を耐えなくてすんでる…今回は紫苑で怒りをかってしまったから、もうわからないけど」
頬を掴まれ、言い捨てる奈津に首を振る。それは、ヒートが怖いから?
すんでに出そうになった言葉を飲み込む
これを言ったら奈津が壊れそうで、言えなかった
「……俺も献上したの?」
「何それ?献上してないでしょ。出来る限りは協力してあげてるじゃん。紫苑はさぁ、知らないんだよ。神宮寺家の恐ろしさ。世界ってこの学園だけじゃないんだよ?戮様の靴を舐めてでも媚びへつらわなきゃ、僕みたいなのは生きていけない」
ふんと言い放つ奈津に、それもそうかと思い直す。昨夜、奈津のアイデアがなければ早々に裸にひん剥かれていただろう
「神宮寺、何するつもりだろう?」
「彼はこの学園の王様だよ。大抵の事はできるだろうね。紫苑は気に入られてるから大した事はしないと思うけど…」
考え込んだ奈津に、弱々しい声を出してしまった事を恥じる
不安なのは奈津もなのに、こんなに俺が頼りないと奈津が頼れない
「とにかく今後は半径1m以内に近づかず接触しないといけない。あ、意外と近いね?1m」
「………遠いよ」
泣き笑いする俺に、奈津はニシシと笑う
くっついたりは出来なくなったけれど、奈津の部屋でいちゃつけばいいだけの話だ
「この距離を埋めたらどうなるの?」
俺の問いには奈津は答えてくれなかった
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