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何人かは噛み跡もあるし、自分が遅いだけかもしれないけれど、今の紫苑は不思議なくらい奈津しか目に入らない
他が有象無象に見えてしまって、自分自身の変化にも戸惑いを覚えている
奈津を見ていると、苦しくなる
渇望するような悍ましい独占欲や、やっと出会えたような懐かしい気持ちや、複雑な感情は何と呼ぶかわからないが、自分の奥底のなにかが奈津とずっと一緒にいたいと叫んでいる
昨日まであんなにエロい事をしていたのに、今は涼しい顔して授業を受けている姿も堪らない
「葉原ー、葉原ー、先生と黒板も見ような?」
呆れた教師の言葉に、慌てて居住まいを正す。羞恥に真っ赤になった顔を教科書で隠せば、奈津が口パクで何か言ってる
バーカ
にかりと笑う奈津に、心臓まで持っていかれた
どうして俺はαじゃないんだろう
いつか奈津はαに持っていかれるーーー
『1-D組の葉原紫苑くん、理事長室までお越しください』
放課後、奈津にじゃれていたら急な呼び出しをくらった
叔父さん、何か用事かな?
奈津は先に帰るらしい。寂しい。
ほてほて理事長室まで歩いて行くと豪奢な扉の理事長室を開く
中に腕組みをしている叔父さんと、神宮寺がいて勢いよく扉を閉めた
「おい!ふざけんな!扉押さえんな!!」
中から神宮寺が叫びながら出てくるのを扉を押さえて阻止する
何で神宮寺が理事長室にいるんだ
「しぃちゃん、子供みたいな真似はやめて入って来なさい」
呆れたような叔父さんの言葉に諦めて渋々室内に入る
見下ろす神宮寺は威嚇か知らないが、怒った態度を崩さない
「なにか用ですか?俺も忙しいんだけど」
「嘘つくなよ、昨日までオメガの発情期の相手していた癖に」
神宮寺の言葉にぎっと睨めば、ふふんと勝ち誇っている。やっぱりこいつ嫌いだ
「しぃちゃん、オメガ同士なんて不毛だよ?お互い抗えない相手が現れたら悲劇だよ、アルファを捕まえる為に此処に入れたのに、本末転倒だよ」
叔父さんの諭すような言葉に膝の拳をぐっと引き握る
「神宮寺くんが、番になってくれるそうだから、鍵を神宮寺くんに渡しなさい。番を得たらわかるよ、今までの事はまやかしだったって」
叔父さんがとんでもない事を言い出した。こいつの番なんて3ヶ月経ったら、ティッシュのように軽く捨てられるというのに
「僕は紫苑君が間違った道に進むのが偲びありません。オメガ同士の交際なんて、悲劇にしかなりません、責任を持って紫苑君を番として預かります」
僕ぅう?お前はお前でよくもそんないけしゃあしゃあとぺらっぺらの出任せを言えたもんだな?
非難がましい目を向ける神宮寺を鼻で笑うと、叔父さんがきっと睨んできた
「鍵を神宮寺くんに、渡しなさい」
有無を言わせない叔父さんに目を逸らす
「鍵は、恋人に渡した。俺は持ってない」
何の鍵かは聞かれてないから、嘘はついてない
俯く俺に、叔父さんは長い溜息を吐く
「しぃちゃん、相手は神宮寺くんの番なんでしょう?自分が何しているかわかってる?神宮寺くんは心が広いからしぃちゃんも番にしてくれるんだよ?」
「お、俺は未だ番なんて考えられない…」
叔父さんは、仕方ないというふうに、泣きそうな俺の頭を撫でてきた
「オメガ同士だから間違いは起こらないから様子を見るけど、普通、神宮寺家の番を横盗りするなんて、社会的に抹殺されるよ?神宮寺くんはそれでもいい?もう少し考える時間をあげて?」
「そうですね…紫苑君が決心を早くしてくれるといいのですが…首輪の鍵は奈津が持ってるんですね」
叔父さんの言葉に殊勝に答えてるが、俺は見逃さなかった
鍵は奈津が持っているという言葉に神宮寺が悍ましい笑みを浮かべたのを
「じゃあ、しぃちゃんちゃんと鍵を神宮寺くんに渡すんだよ、もうすぐヒートでしょ?」
見送ってくれる叔父さんの言葉を遮り扉を閉める
神宮寺め、やってくれたな…
怒り心頭だが、本当に一体何を考えているのかわからない
制服をきっちりと着て、憂いた王子様然とした神宮寺は、本当に紫苑を心配しているように見えただろう
「紫苑、自分から鍵を渡して欲しかったが、奈津が持ってるんだな」
後ろからついてくる神宮寺にも辟易する
「知らねーわ、つか、何考えてんだよ?」
自分より一回りでかい神宮寺をどうこうしようという気はないが、胸ぐらを掴んで壁に押しやる
「…………お前は俺の番で間違いない」
さらりと頬を撫でられて、掻きむしるように手で振り払う
神宮寺は余裕そうに笑っている
「誰がお前の番か!ぽんぽん量産される番に何の意味がある?」
「怒った顔もいいなぁ…」
逆に体を入れ替えられて、壁に押しつけられる
その瞬間、唇にぬめった感触が落ちてきた
手首を押さえられ、頭を掻き抱かれて神宮寺が顔を横に向けて舌を差し込んでくる
何度も何度も執拗に舌を絡められ、痛いくらい抱きしめられる
俺は意を決して、口内に入った舌を噛んだ
「………いっ、噛むなんてひどいな」
血の味がする口内を拭いながら、神宮寺と距離をとる
「…ひどいのはてめぇだ!こんな…こんなこと…」
ぺっぺっと唾を吐く。
他が有象無象に見えてしまって、自分自身の変化にも戸惑いを覚えている
奈津を見ていると、苦しくなる
渇望するような悍ましい独占欲や、やっと出会えたような懐かしい気持ちや、複雑な感情は何と呼ぶかわからないが、自分の奥底のなにかが奈津とずっと一緒にいたいと叫んでいる
昨日まであんなにエロい事をしていたのに、今は涼しい顔して授業を受けている姿も堪らない
「葉原ー、葉原ー、先生と黒板も見ような?」
呆れた教師の言葉に、慌てて居住まいを正す。羞恥に真っ赤になった顔を教科書で隠せば、奈津が口パクで何か言ってる
バーカ
にかりと笑う奈津に、心臓まで持っていかれた
どうして俺はαじゃないんだろう
いつか奈津はαに持っていかれるーーー
『1-D組の葉原紫苑くん、理事長室までお越しください』
放課後、奈津にじゃれていたら急な呼び出しをくらった
叔父さん、何か用事かな?
奈津は先に帰るらしい。寂しい。
ほてほて理事長室まで歩いて行くと豪奢な扉の理事長室を開く
中に腕組みをしている叔父さんと、神宮寺がいて勢いよく扉を閉めた
「おい!ふざけんな!扉押さえんな!!」
中から神宮寺が叫びながら出てくるのを扉を押さえて阻止する
何で神宮寺が理事長室にいるんだ
「しぃちゃん、子供みたいな真似はやめて入って来なさい」
呆れたような叔父さんの言葉に諦めて渋々室内に入る
見下ろす神宮寺は威嚇か知らないが、怒った態度を崩さない
「なにか用ですか?俺も忙しいんだけど」
「嘘つくなよ、昨日までオメガの発情期の相手していた癖に」
神宮寺の言葉にぎっと睨めば、ふふんと勝ち誇っている。やっぱりこいつ嫌いだ
「しぃちゃん、オメガ同士なんて不毛だよ?お互い抗えない相手が現れたら悲劇だよ、アルファを捕まえる為に此処に入れたのに、本末転倒だよ」
叔父さんの諭すような言葉に膝の拳をぐっと引き握る
「神宮寺くんが、番になってくれるそうだから、鍵を神宮寺くんに渡しなさい。番を得たらわかるよ、今までの事はまやかしだったって」
叔父さんがとんでもない事を言い出した。こいつの番なんて3ヶ月経ったら、ティッシュのように軽く捨てられるというのに
「僕は紫苑君が間違った道に進むのが偲びありません。オメガ同士の交際なんて、悲劇にしかなりません、責任を持って紫苑君を番として預かります」
僕ぅう?お前はお前でよくもそんないけしゃあしゃあとぺらっぺらの出任せを言えたもんだな?
非難がましい目を向ける神宮寺を鼻で笑うと、叔父さんがきっと睨んできた
「鍵を神宮寺くんに、渡しなさい」
有無を言わせない叔父さんに目を逸らす
「鍵は、恋人に渡した。俺は持ってない」
何の鍵かは聞かれてないから、嘘はついてない
俯く俺に、叔父さんは長い溜息を吐く
「しぃちゃん、相手は神宮寺くんの番なんでしょう?自分が何しているかわかってる?神宮寺くんは心が広いからしぃちゃんも番にしてくれるんだよ?」
「お、俺は未だ番なんて考えられない…」
叔父さんは、仕方ないというふうに、泣きそうな俺の頭を撫でてきた
「オメガ同士だから間違いは起こらないから様子を見るけど、普通、神宮寺家の番を横盗りするなんて、社会的に抹殺されるよ?神宮寺くんはそれでもいい?もう少し考える時間をあげて?」
「そうですね…紫苑君が決心を早くしてくれるといいのですが…首輪の鍵は奈津が持ってるんですね」
叔父さんの言葉に殊勝に答えてるが、俺は見逃さなかった
鍵は奈津が持っているという言葉に神宮寺が悍ましい笑みを浮かべたのを
「じゃあ、しぃちゃんちゃんと鍵を神宮寺くんに渡すんだよ、もうすぐヒートでしょ?」
見送ってくれる叔父さんの言葉を遮り扉を閉める
神宮寺め、やってくれたな…
怒り心頭だが、本当に一体何を考えているのかわからない
制服をきっちりと着て、憂いた王子様然とした神宮寺は、本当に紫苑を心配しているように見えただろう
「紫苑、自分から鍵を渡して欲しかったが、奈津が持ってるんだな」
後ろからついてくる神宮寺にも辟易する
「知らねーわ、つか、何考えてんだよ?」
自分より一回りでかい神宮寺をどうこうしようという気はないが、胸ぐらを掴んで壁に押しやる
「…………お前は俺の番で間違いない」
さらりと頬を撫でられて、掻きむしるように手で振り払う
神宮寺は余裕そうに笑っている
「誰がお前の番か!ぽんぽん量産される番に何の意味がある?」
「怒った顔もいいなぁ…」
逆に体を入れ替えられて、壁に押しつけられる
その瞬間、唇にぬめった感触が落ちてきた
手首を押さえられ、頭を掻き抱かれて神宮寺が顔を横に向けて舌を差し込んでくる
何度も何度も執拗に舌を絡められ、痛いくらい抱きしめられる
俺は意を決して、口内に入った舌を噛んだ
「………いっ、噛むなんてひどいな」
血の味がする口内を拭いながら、神宮寺と距離をとる
「…ひどいのはてめぇだ!こんな…こんなこと…」
ぺっぺっと唾を吐く。
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