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全寮制のこの学園は山の中にあり、どこの宮廷かと思える豪奢な作りで、寮と呼んでいいものか解らない広さで、なんと2人部屋だった。
割り当てられた部屋もめちゃくちゃ広すぎて落ち着かないが、同室者がいる
しかもα……
叔父さん何考えてるんだ!?と怒鳴り込めば、一番有力株を同部屋にしておいたよ。としれーっとしていた
頭のネジ2.3本外れてるに違いない。いかれてる
保護者に訴えられればいいと言っても聞こえないふりをされた
なんならつまらない事で怒ってたら社会に出たら大変だよ?とか
頭おかしすぎる
怒りまくりながら、寮で荷物を整理していると同部屋の神宮寺戮が嫌そうな顔しながら入ってきた
何だその顔は、俺だって嫌だわ
神宮寺はαらしく整った美麗な脚長の長身で、少し長めの髪は染めてあるのかグレージュでインカラーは黒だった
そして腕には身長が低めのΩの綺麗な男がくっついていた
「くっそ地味なβが同室だね。戮、1人部屋なんじゃなかったの?」
「せめて奈津と同じ部屋ならな…なんか部屋の空き待ってくれって言われて…おい、地味男、俺の荷物と掃除もやれ。お前の存在意義はそれだけだ」
髪をいじりながら、軽く爪先で蹴りを入れてきて神宮寺は自分の部屋を指差している
こ、このクソ男はーー許すまじ
「きゃはは!戮、可哀想だよ、恐怖に固まっちゃったじゃん!地味男大丈夫?」
まあ、この奈津と呼ばれたチビについても苛つきは止まらないが、この歳でこの2人は番なのかと軽く驚く
奈津は晒した首に噛み跡があり、首輪も着けていない
「あ、それか僕と部屋変わりなよ!戮の番は僕なんだから!僕は1人部屋だよ」
「いや、それはダメだ。こんな便利そうなやつを手放すのは惜しい」
「それでお願いしまーす」
段ボールを持って立ち上がる
「ん?どういうことだ?」
戮が片眉だけ持ち上げて、怪訝な顔で見ている
「そのチビと部屋を変わる」
「やったー!戮、良かったね!ていうかチビて誰のこと言ってんの!?」
「待て、それは困る…」
何が困るのかわからずに三者三様で見守っていると、ガチャと見知らぬチビ2が現れた
チビ1は可愛い感じでチビ2は綺麗めな感じだ
こいつらノックの習慣はないのだろうか、一応まだ俺の部屋なんだけど
「あ!奈津!また抜けがけして!戮、どうして奈津と一緒にいるの?」
綺麗めのチビ2は、目を吊り上げてチビ1を睨みながら、神宮寺の空いてる腕に絡みつく
驚いた事にチビ2も首輪を着けておらず、噛み跡が頸にある
「げっ、未来!!戮と同室は僕だからね」
「はあ!?戮、何で奈津だけ贔屓するの!?同室の話、芽流兎にもするからね!!」
騒ぐチビ1.2に、神宮寺は目を逸らして髪をいじり窓の外を眺めている
こいつ、叔父さんと同じにおいがする…面倒くせぇなって顔だ
「同室はそいつだ、な?地味男」
「いや、俺は部屋変わるわ。おい、チビ、お前の部屋どこだよ?」
「地味男の癖に!303号室だよ、はい鍵」
鍵を渡そうとするチビ1の手を神宮寺が止めて首を振る
「部屋は代われない。俺でも却下されたのに、なぜ地味男が…代われると思うなよ…」
美男にぎらりと睨まれ、後ろのチビ達がカッコいい!とか騒いでる
こいつ何人番がいるんだろ…αの特権だけども…もう24時間、絶対に首輪を外せない
そのあとチビ3の芽流兎が来て、結局地味男が同室ならばと三者合意したようだった
「いや、俺としては1人部屋のチビ1と部屋を変わりたいのだが」
「ちっ、部屋片しとけよ。ま、ほとんどこいつらの部屋に泊まるから滅多に帰らないが毎日、掃除もしとけ?」
「えー、じゃあ今日は僕の部屋で!」
「抜け駆けするなよ、奈津」
話を聞かずぞろぞろと部屋を出て行く美形集団を見送り、段ボールの中身を出していく
神宮寺は確かにαの良い匂いだったが、番が3人もいる上、全員美人という叔父さんのリサーチ不足だ
とりあえず、殆ど部屋に帰らないつもりのようなので案外良いかもしれない
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