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ネリーはシェイマスから目が離せなくなってしまった。
いつまでも見つめられていれば、その宝石のような瞳に吸い込まれてしまいそうな気持ちになる。
「ネリー様……」
彼は呟きながら、ネリーの仮面にかけた指に力を込めた。
思わず彼女の体が、強張った。
と、その時、盛大な拍手の音がして、2人はビクリと肩を震わせた。
気がつけば、演奏は終わっていたのである。
「踊っていたら、すっかり暑くなりましたわ。
ああ、外は涼しいですわね」
と声がして、何人かがドヤドヤとテラスに出てくるのが分かった。
シェイマスとネリーは、はっとして体を離した。
「み、皆さん暑そうですね」
妙な沈黙に耐えきれず、言葉を発したのはネリーだった。
するとシェイマスも慌てたように答えた。
「そうですね。
ただ、ずっといると、ここはかなり冷えます。
寒くないですか?
すみません……ずっと引き留めてしまったりして」
「いえ、大丈夫です。
動いていたので、寒く無かったですわ」
と、なんとか言葉を繋ぎながらも、どこか2人の会話はぎこちなかった。
……なんだか、気まずいわ。
なんでだろう。
間を空けぬよう、次の言葉を懸命に探すも、焦ってなかなか見つからない。
それでも、なんとか思いついて
「あ……ダンスも終わったことですし、マーティとアリス様を探しに行きますか?」
と言った時だった。
シェイマスが答える前に
「ネリー!」
と声が飛び込んできたと思うと、駆け寄ってきたのはイーディスだった。
「イーディス!」
ネリーはホッとして、イーディスに顔を寄せると、シェイマスには聞こえないように声を低くして言った。
「ありがとう、来てくれて助かったわ」
「なに?どういうこと?」
イーディスが首を傾げる。
ネリーは
「今度話すわ」
と囁きながら、イーディスの肩越しに室内へと目を向けた。
次の演奏が始まるまで、まだ間があるらしい。
先程まで踊っていた人たちは休憩に出ていったのか、かなり人は少なくなっている。
しかしその中に、マーティとアリスの姿は見えなかった。
2人は私たちを探しているのかしら。
そんな考えが浮かびはしたものの、すぐに頭を振って打ち消した。
どうせ私達のことなんか、すっかり忘れて、2人で楽しく話しているに決まってるわ。
そう思い直すと、ネリーは、シェイマスとイーディスに向き直ると、笑顔を浮かべたのだった。
いつまでも見つめられていれば、その宝石のような瞳に吸い込まれてしまいそうな気持ちになる。
「ネリー様……」
彼は呟きながら、ネリーの仮面にかけた指に力を込めた。
思わず彼女の体が、強張った。
と、その時、盛大な拍手の音がして、2人はビクリと肩を震わせた。
気がつけば、演奏は終わっていたのである。
「踊っていたら、すっかり暑くなりましたわ。
ああ、外は涼しいですわね」
と声がして、何人かがドヤドヤとテラスに出てくるのが分かった。
シェイマスとネリーは、はっとして体を離した。
「み、皆さん暑そうですね」
妙な沈黙に耐えきれず、言葉を発したのはネリーだった。
するとシェイマスも慌てたように答えた。
「そうですね。
ただ、ずっといると、ここはかなり冷えます。
寒くないですか?
すみません……ずっと引き留めてしまったりして」
「いえ、大丈夫です。
動いていたので、寒く無かったですわ」
と、なんとか言葉を繋ぎながらも、どこか2人の会話はぎこちなかった。
……なんだか、気まずいわ。
なんでだろう。
間を空けぬよう、次の言葉を懸命に探すも、焦ってなかなか見つからない。
それでも、なんとか思いついて
「あ……ダンスも終わったことですし、マーティとアリス様を探しに行きますか?」
と言った時だった。
シェイマスが答える前に
「ネリー!」
と声が飛び込んできたと思うと、駆け寄ってきたのはイーディスだった。
「イーディス!」
ネリーはホッとして、イーディスに顔を寄せると、シェイマスには聞こえないように声を低くして言った。
「ありがとう、来てくれて助かったわ」
「なに?どういうこと?」
イーディスが首を傾げる。
ネリーは
「今度話すわ」
と囁きながら、イーディスの肩越しに室内へと目を向けた。
次の演奏が始まるまで、まだ間があるらしい。
先程まで踊っていた人たちは休憩に出ていったのか、かなり人は少なくなっている。
しかしその中に、マーティとアリスの姿は見えなかった。
2人は私たちを探しているのかしら。
そんな考えが浮かびはしたものの、すぐに頭を振って打ち消した。
どうせ私達のことなんか、すっかり忘れて、2人で楽しく話しているに決まってるわ。
そう思い直すと、ネリーは、シェイマスとイーディスに向き直ると、笑顔を浮かべたのだった。
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