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「モーリス様は隣国から留学中なんだそうですよ。
ちょっとシャイな方ですけどね。
これでなかなかモテるんです」
「ちょっと!初対面の女性の前で……」
モーリスは慌てて止めたが、マデリンが
「まあ、謙虚な方!
こんなに素敵な方ですもの。
もちろん女性は放っておかないでしょうね」
と言うと、途端に相好を崩して、口を閉ざした。
「それに、彼は異国の面白い話をしてくれるんですよ」
「そうでしたの!
それは私も、是非お聞きしたいわ」
マデリンは、はしゃいだような声を上げながらも、広げた扇の横から、じっとモーリスを値踏みしていた。
切れ長の目、日に焼けた肌、緊張のせいか汗ばんだ額に張り付いた黒髪。
それに、なんとも言いがたいダサい服装。
こんな格好で、この国の女性を振り向かせてきたなんて。
隣国ではこういった服が流行なのだろうか、とマデリンは顔をしかめた。
……パッとしない男ね。
そう思ったものの、もちろん思ったままを口にするほど間抜けではない。
適当な言葉を並べ上げて、モーリスをその気にさせることなど、マデリンには造作もないことだった。
おだてて、微笑んで、じっと見つめる。
そして話が盛り上がったところで、耳元でそっと囁く。
「とても興味深いお話でしたわ。
今度は是非、2人きりでお話させて下さいね」
そして照れたように、うつむくだけでいい。
「なんですか、マデリン。
私たちがいるというのに、内緒話なんかして!」
男の1人がからかう声も、モーリスには聞こえていないようだった。
これで、また1人増えたわ。
マデリンは
「あらあら、子どものようなことを。
ヤキモチをやいて下さったのかしら」
と言いながらも、他の男たちにも微笑むことを決して忘れない。
もちろん、頬を赤らめてこちらを凝視しているモーリスにも。
こうしてさえいれば、自分はプリンセスでいることができる、と彼女には分かっていた。
マデリンは左手にはめた、大きなエメラルドのついたブレスレットを、うっとりと見つめた。
先日、1人の男性にねだって贈ってもらったそれが、今の彼女には一番のお気に入りだ。
もちろんそのお気に入りの座は、頻繁に贈られるプレゼントによって、コロコロと変わっていくのであるが。
さあ、モーリス・アクランドには何を買ってもらおうかしら。
マデリンは心の中で舌なめずりをしながら、天使のような微笑みを浮かべて、モーリスを見つめたのだった。
ちょっとシャイな方ですけどね。
これでなかなかモテるんです」
「ちょっと!初対面の女性の前で……」
モーリスは慌てて止めたが、マデリンが
「まあ、謙虚な方!
こんなに素敵な方ですもの。
もちろん女性は放っておかないでしょうね」
と言うと、途端に相好を崩して、口を閉ざした。
「それに、彼は異国の面白い話をしてくれるんですよ」
「そうでしたの!
それは私も、是非お聞きしたいわ」
マデリンは、はしゃいだような声を上げながらも、広げた扇の横から、じっとモーリスを値踏みしていた。
切れ長の目、日に焼けた肌、緊張のせいか汗ばんだ額に張り付いた黒髪。
それに、なんとも言いがたいダサい服装。
こんな格好で、この国の女性を振り向かせてきたなんて。
隣国ではこういった服が流行なのだろうか、とマデリンは顔をしかめた。
……パッとしない男ね。
そう思ったものの、もちろん思ったままを口にするほど間抜けではない。
適当な言葉を並べ上げて、モーリスをその気にさせることなど、マデリンには造作もないことだった。
おだてて、微笑んで、じっと見つめる。
そして話が盛り上がったところで、耳元でそっと囁く。
「とても興味深いお話でしたわ。
今度は是非、2人きりでお話させて下さいね」
そして照れたように、うつむくだけでいい。
「なんですか、マデリン。
私たちがいるというのに、内緒話なんかして!」
男の1人がからかう声も、モーリスには聞こえていないようだった。
これで、また1人増えたわ。
マデリンは
「あらあら、子どものようなことを。
ヤキモチをやいて下さったのかしら」
と言いながらも、他の男たちにも微笑むことを決して忘れない。
もちろん、頬を赤らめてこちらを凝視しているモーリスにも。
こうしてさえいれば、自分はプリンセスでいることができる、と彼女には分かっていた。
マデリンは左手にはめた、大きなエメラルドのついたブレスレットを、うっとりと見つめた。
先日、1人の男性にねだって贈ってもらったそれが、今の彼女には一番のお気に入りだ。
もちろんそのお気に入りの座は、頻繁に贈られるプレゼントによって、コロコロと変わっていくのであるが。
さあ、モーリス・アクランドには何を買ってもらおうかしら。
マデリンは心の中で舌なめずりをしながら、天使のような微笑みを浮かべて、モーリスを見つめたのだった。
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