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「ごめんなさい!」
レイラは叫ぶように言いながら、物凄い速さでスチュアートの前まで歩いて行った。
そのわずかな間に、『可愛らしく、か弱いレイラ』の仮面をしっかり貼り付ける。
そして何の躊躇いもなく彼の胸へと飛び込んだものだから、カトリーヌの方が唖然としてしまった。
「今のは、違うんです!
カトリーヌが意地悪をしてくるものだから、ちょっとだけイライラしてしまって……つい……。
使用人が入ってきたのかと思って勘違いしてしまっただけなんです!」
レイラはここですかさず彼の背中に手を回し、俯いたまま瞳を潤ませる。
「私、スチュアート様が好きです!
スチュアート様だって同じように想って下さっているのでしょう?
だったら……私を婚約者にして下さい」
そしてスチュアートを見上げると、涙に濡れた長いまつ毛を揺らした。
「今もちょうど、スチュアート様の婚約者を代わって欲しいって、カトリーヌにお願いしていたんです。
それなのにカトリーヌったら、頑なに断るんですよ!?
ひどい意地悪ですわ!」
レイラは勢いよく言葉を並べていたが、不意に唇を薄く開いたまま固まってしまった。
スチュアートが髪をかき上げ、その瞳があらわになったからだ。
その美しい緑色の瞳は、見たこともないほど冷たい光を放っていた。
思わずカトリーヌまでが肩を震わせてしまったほどの迫力だった。
スチュアートは半ば強引にレイラを引き剥がすと、感情の読み取れない声で言った。
「話はそれだけですか?
ならば私の答えは、ノーです。
結婚する相手はカトリーヌと決めているので、婚約者をあなたに変えるつもりはありません」
カトリーヌは彼の言葉に思わずドキリとした。
しかし喜びに浸っている暇などなかった。
それでも引き下がらないレイラが、大きく手を振り回して、必死に訴え始めたのである。
「で、でも!元々、スチュアート様はオルディス家の『妹』に結婚の申し込みをしてきたではないですか!
つまり、この『私』に!」
それでもスチュアートは冷静なまま。
レイラを見下ろしながら、ボソリと言った。
「確かに、『妹君』に求婚をしたのは間違いありません」
この答えにレイラは頬を上気させ、一方のカトリーヌは青ざめた。
しかし当のスチュアートは眉一つ動かすことなく、
「つまり、カトリーヌ。きみにだ」
と、まっすぐにカトリーヌへと顔を向けて言ったのである。
「え……」
カトリーヌとレイラの声が重なる。
そして呆然としながら、2人は顔を見合わせた。
するとスチュアートは、今度はレイラに向き直った。
「きみは妹じゃない、姉だろう?」
「……もしかして、最初から知っていたんですか?」
コクリと頷くスチュアートに、レイラは悪夢でも見ているかのような顔で、フラフラと近づいて行く。
しかしスチュアートは、今度は彼女が自分に触れる前に、するりと一歩下がった。
そして目を細めてレイラを見下ろした。
「カトリーヌの姉君だからと、あなたには敬意を払おうと努力してきました。
だからこれは失礼だと思い、言わなかったのだが……今こそ、はっきり言わせて頂こう」
と前置きしてから、ピシリと言った。
「私はあなたには全く興味がありません。
だから私への色仕掛けなど、なんの意味もない」
レイラは叫ぶように言いながら、物凄い速さでスチュアートの前まで歩いて行った。
そのわずかな間に、『可愛らしく、か弱いレイラ』の仮面をしっかり貼り付ける。
そして何の躊躇いもなく彼の胸へと飛び込んだものだから、カトリーヌの方が唖然としてしまった。
「今のは、違うんです!
カトリーヌが意地悪をしてくるものだから、ちょっとだけイライラしてしまって……つい……。
使用人が入ってきたのかと思って勘違いしてしまっただけなんです!」
レイラはここですかさず彼の背中に手を回し、俯いたまま瞳を潤ませる。
「私、スチュアート様が好きです!
スチュアート様だって同じように想って下さっているのでしょう?
だったら……私を婚約者にして下さい」
そしてスチュアートを見上げると、涙に濡れた長いまつ毛を揺らした。
「今もちょうど、スチュアート様の婚約者を代わって欲しいって、カトリーヌにお願いしていたんです。
それなのにカトリーヌったら、頑なに断るんですよ!?
ひどい意地悪ですわ!」
レイラは勢いよく言葉を並べていたが、不意に唇を薄く開いたまま固まってしまった。
スチュアートが髪をかき上げ、その瞳があらわになったからだ。
その美しい緑色の瞳は、見たこともないほど冷たい光を放っていた。
思わずカトリーヌまでが肩を震わせてしまったほどの迫力だった。
スチュアートは半ば強引にレイラを引き剥がすと、感情の読み取れない声で言った。
「話はそれだけですか?
ならば私の答えは、ノーです。
結婚する相手はカトリーヌと決めているので、婚約者をあなたに変えるつもりはありません」
カトリーヌは彼の言葉に思わずドキリとした。
しかし喜びに浸っている暇などなかった。
それでも引き下がらないレイラが、大きく手を振り回して、必死に訴え始めたのである。
「で、でも!元々、スチュアート様はオルディス家の『妹』に結婚の申し込みをしてきたではないですか!
つまり、この『私』に!」
それでもスチュアートは冷静なまま。
レイラを見下ろしながら、ボソリと言った。
「確かに、『妹君』に求婚をしたのは間違いありません」
この答えにレイラは頬を上気させ、一方のカトリーヌは青ざめた。
しかし当のスチュアートは眉一つ動かすことなく、
「つまり、カトリーヌ。きみにだ」
と、まっすぐにカトリーヌへと顔を向けて言ったのである。
「え……」
カトリーヌとレイラの声が重なる。
そして呆然としながら、2人は顔を見合わせた。
するとスチュアートは、今度はレイラに向き直った。
「きみは妹じゃない、姉だろう?」
「……もしかして、最初から知っていたんですか?」
コクリと頷くスチュアートに、レイラは悪夢でも見ているかのような顔で、フラフラと近づいて行く。
しかしスチュアートは、今度は彼女が自分に触れる前に、するりと一歩下がった。
そして目を細めてレイラを見下ろした。
「カトリーヌの姉君だからと、あなたには敬意を払おうと努力してきました。
だからこれは失礼だと思い、言わなかったのだが……今こそ、はっきり言わせて頂こう」
と前置きしてから、ピシリと言った。
「私はあなたには全く興味がありません。
だから私への色仕掛けなど、なんの意味もない」
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