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しかしどういうことなのか、数秒待っても、唇には何も感じなかった。
不思議に思ったレイラが目を開くのと、スチュアートが彼女の肩をグイッと押したのは、ほとんど同時だった。
思いがけない彼の行動に、レイラは危うくひっくり返りそうになってしまった。
まさか押しのけられるとは思っても見なかったのである。
「な、何するんですか!」
「それはこちらが言いたい」
スチュアートは静かに言ってから、目を丸くしているレイラに淡々と言葉を続けた。
「私は髪型を変える気はない」
「あ、そ、そう……ですか」
呆然としているレイラを置いて、スチュアートはさっさと歩いて行ってしまった。
……そ、それだけ!?
他に言うことあるでしょ!?
レイラはスチュアートの背中を思いっきり睨みつけてやった。
この私が目を閉じて待ってたって言うのに!
何もしないなんて信じられないわ!
怒りのあまり、唇が震えた。
危うく、可愛い顔からは想像もできないほどの悪態をついてやろうかとも思ったほどである。
しかし、すんでのところで呑み込んだ。
スチュアートと並んで歩き始めたカトリーヌが、チラリとこちらを振り返ったのが見えたのである。
その心配そうな顔を見ると、少しは胸がスッとした。
どうやら彼女は、レイラとスチュアートが近づいたところを見ていたらしい、とすぐに気がついた。
あのような表情をしているということは、2人が何を話していたかまでは聞こえなかったに違いない。
だとすれば恐らく、不安でたまらないことだろう。
これはまさにレイラの思うつぼだった。
スチュアートの方は上手くいかなかったが、カトリーヌに不安を抱かせることが出来たのなら上出来だ。
それに……。
レイラはクスッと笑いながら
「2人とも待ってよ!
置いてかないで!」
と、2人を追ってかけだした。
先ほどのスチュアートの顔を見て、レイラは確信したのである。
彼は明らかにレイラのことが好きなのだ、と。
そうでもなければ、あんなに赤面するはずがない、というのがレイラの予想だった。
そうだとすれば、あとは……もう少し大胆に仕掛けさえすれば、落とせるに違いない。
レイラは自信たっぷりに微笑むと、
「待ってってばー!」
と叫びながら、強引に2人の間に割り込んで行ったのだった。
不思議に思ったレイラが目を開くのと、スチュアートが彼女の肩をグイッと押したのは、ほとんど同時だった。
思いがけない彼の行動に、レイラは危うくひっくり返りそうになってしまった。
まさか押しのけられるとは思っても見なかったのである。
「な、何するんですか!」
「それはこちらが言いたい」
スチュアートは静かに言ってから、目を丸くしているレイラに淡々と言葉を続けた。
「私は髪型を変える気はない」
「あ、そ、そう……ですか」
呆然としているレイラを置いて、スチュアートはさっさと歩いて行ってしまった。
……そ、それだけ!?
他に言うことあるでしょ!?
レイラはスチュアートの背中を思いっきり睨みつけてやった。
この私が目を閉じて待ってたって言うのに!
何もしないなんて信じられないわ!
怒りのあまり、唇が震えた。
危うく、可愛い顔からは想像もできないほどの悪態をついてやろうかとも思ったほどである。
しかし、すんでのところで呑み込んだ。
スチュアートと並んで歩き始めたカトリーヌが、チラリとこちらを振り返ったのが見えたのである。
その心配そうな顔を見ると、少しは胸がスッとした。
どうやら彼女は、レイラとスチュアートが近づいたところを見ていたらしい、とすぐに気がついた。
あのような表情をしているということは、2人が何を話していたかまでは聞こえなかったに違いない。
だとすれば恐らく、不安でたまらないことだろう。
これはまさにレイラの思うつぼだった。
スチュアートの方は上手くいかなかったが、カトリーヌに不安を抱かせることが出来たのなら上出来だ。
それに……。
レイラはクスッと笑いながら
「2人とも待ってよ!
置いてかないで!」
と、2人を追ってかけだした。
先ほどのスチュアートの顔を見て、レイラは確信したのである。
彼は明らかにレイラのことが好きなのだ、と。
そうでもなければ、あんなに赤面するはずがない、というのがレイラの予想だった。
そうだとすれば、あとは……もう少し大胆に仕掛けさえすれば、落とせるに違いない。
レイラは自信たっぷりに微笑むと、
「待ってってばー!」
と叫びながら、強引に2人の間に割り込んで行ったのだった。
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