自分こそは妹だと言い張る、私の姉

神楽ゆきな

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レイラには自信があった。
いくら無愛想なスチュアートであっても、この自分がここまで距離を縮めているのだから、さすがに動揺するに違いない。

……そう思っていたのに。

返事がないどころか、頬をピクリとさえ動かさない彼に、レイラは思わずイライラと眉を吊り上げた。
チラリとカトリーヌの方を見てみれば、彼女はこちらを振り返りもせずに、律儀に茂みの奥を覗き込んでいる。

レイラはそれを確認すると

「スチュアート様?
聞いてますかっ!?」

と言いながら強引に手を伸ばすなり、スチュアートの前髪をかき上げた。
思いがけないレイラの行動に、彼も動けなかったのだろう。
声こそ上げなかったものの、驚いたように目を見開いている。

レイラは久しぶりに見る彼の緑色の瞳に、思わず見惚れてしまった。


……やっぱり、素敵な方!


我に返ったらしいスチュアートに手を払われてしまって、すぐにその端正な顔立ちは見えなくなってしまったけれど。
レイラは見逃してはいなかった。

彼の頬が赤く染まっていたのを。

「……キスなんて、するはずないでしょう。
まだ正式に結婚していませんから」

平静を装ってはいるものの、スチュアートの声はかすかに震えていた。
初めてスチュアートが動揺しているのを見て、レイラはピンときた。

そしてスチュアートに見えぬようにうつむくと、ニヤリと笑った。


ほんの少し見つめ合っただけで、こんなに赤くなるなんて!
やっぱりスチュアート様が好きなのは、私なんだわ!


これにより、すっかりやる気に満ちてしまったレイラは、もうとどまるところを知らなかった。

視界の端では、カトリーヌがちょうど振り向くところなのが見えていたけれど、そんなことはもう構わなかった。
彼の心は完全に自分に向いているのだと確信して、力がみなぎっていた。

「スチュアート様……」

レイラは甘い声で囁きながらスチュアートの手を握ると、もう片方の手を再び彼の前髪にかけた。

そしてそっと持ち上げながら、彼の目を見つめた。

「このほうが……いつもより、ずっと素敵です」

スチュアートは動かない。
それを良いことに、レイラはぐっと身を乗り出した。

それから今にも唇が触れ合いそうなほどの距離を残して、レイラは静かに瞼を閉じた。
もちろん、我慢できずにスチュアートが唇を押し付けてくるのを期待して。
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