自分こそは妹だと言い張る、私の姉

神楽ゆきな

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この日を境にカトリーヌとスチュアートは、2人で一緒に過ごす時間が少しずつ増えていった。

今までは、ほとんど自室に引きこもっていたスチュアートが、自分との時間を作ろうと努力してくれている。
それがカトリーヌには何より嬉しかった。

隣に並んで腰掛けていても、特段、言葉を交わすことはないけれど。
ただ彼が側にいてくれるだけで、胸がポカポカとあたたかくなっていく気がした。

いつしかカトリーヌは屋敷の中を歩く度に、自然とスチュアートの姿を探す癖がついてしまった。
どこにいても無意識のうちに、忙しく目が動くようになってしまったのである。

そして彼を見つけ、パチリと目が合うと、スチュアートは黙ったままわずかに顎を引く。
するとカトリーヌは、それが合図かのように、歩いて行って彼の隣へと腰を下ろすのだった。

この屋敷に来たばかりの頃に比べれば、すっかり心を許して貰えるようになった、とカトリーヌは喜んでいた。

この分ならば、もう無下に追い出されることはないのではないだろうか。
だとすれば、最終的には彼と結婚をして……。

そこまで考えて、カトリーヌは思考が停止してしまった。
そもそも、ここに来た理由が、レイラの代わりにスチュアートと結婚をする為だった、ということをようやく思い出したのである。

お互いに望まぬ形での婚約ではあったが、自分は彼の婚約者なのだ。
つまり、スチュアートが望んでさえくれたら、当然のことではあるが、結婚をするのである。

このあまりにも当たり前の事実に行き当たると、カトリーヌは思わず身悶えした。
指を当てて、燃えるように熱い頬の熱を少しでも逃してやる。

そして小声で、そっと呟いた。

「このまま、スチュアート様と結婚出来たら良いのに……」

まさかこんなふうに思える日が来るなど、思ってもみなかった。
なにしろ彼の評判も、対面時の第一印象も最悪だったのだから。
あの時のカトリーヌは、こんなに考えが変わるだなんて、思ってもみなかったに違いない。

カトリーヌはモジモジと指を動かしながら、はにかんだように笑うのだった。
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