自分こそは妹だと言い張る、私の姉

神楽ゆきな

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それからというもの、2人の間には何十秒という沈黙の時が流れた。

この重苦しい空気に押しつぶされそうになりながらも、返事が返ってくるまでの間カトリーヌは、食い入るようにスチュアートを見つめていた。
早く彼の答えを聞いて、すっきりしてしまいたかったのである。

だから、早く早くと祈るような気持ちで、微動だにしない彼の唇を見つめていたのだ。
いや、睨みつけていたと言う方が正しいのかもしれないというほどだった。

しかし彼は、答える気があるのかどうか。
しばらく待ってみても口を開く様子はない。

あまりに踏み込んだことを聞きすぎたせいで、気分を害したのだろうか。
カトリーヌは急に不安に襲われた。

それでも、どうしても彼の言葉が欲しくて、自分から何か言い訳の言葉を並べようとはしなかった。
どうしてこの質問に、こんなにも拘っているのか、自分でも良く分からなかったが、ここで曖昧にしたまま終わらせたくはなかったのである。

震える指をモジモジと動かしながら、ただひたすらに、この気まずい時間に耐えていた。

その時だった。

不意にスチュアートが手を上げたかと思うと、ぎこちなく前髪をかき上げた。
クセのある黒髪が後ろへと撫でつけられ、現れたエメラルドの瞳が、まっすぐに自分に向けられるのを、カトリーヌは呆然と眺めていた。

まさかこんな形で、再びこの瞳が見られる日が来るとは、思いもよらなかった。
ともすれば、もう永遠に目にする日は訪れないのだろう、とさえ思っていたのである。

しかし、その美しい色が、今まさに目の前で輝いている。
しかも自分を静かに見下ろしているのである。

カトリーヌがゴクリと喉を鳴らしたのと、スチュアートが薄く唇を開いたのは、ほとんど同時だった。

「……いいや」

聞こえたのは、驚くほどかすれた声だった。

一瞬カトリーヌには、彼の言葉が何を意味しているのか、さっぱり分からなかった。
が、すぐに自分の質問に答えてくれているのだと思い当たった。

ということは……

「今はもう、レイラを結婚相手として望んではいない……ということでしょうか?」

そう訊ねながら、彼を見上げる。

今はもう彼の顔は前髪に隠れてはいないと言うのに。
あまりにも無表情すぎて、やはり何を考えているかは分からない。

それでも、言葉こそ無かったものの、スチュアートが小さく頷くのを見ると、みるみる胸の奥が熱くなっていった。

自分でも信じられなかったが、彼のその仕草一つで、跳び上がりたいくらいに嬉しくなってしまったのである。

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