自分こそは妹だと言い張る、私の姉

神楽ゆきな

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「……え」
「行かないなら、部屋に戻る」

呆気に取られているカトリーヌをおいて、スチュアートは、さっさと扉を開く。
それを見たカトリーヌは、慌てて立ち上がった。

「お、お待ち下さい!
行きます!
是非一緒に行きましょう!」

そう言ったのに、スチュアートは返事もせず、そして振り返ることもせずに出ていってしまう。
そこでカトリーヌも急いで追いかけて行くと、早足に彼の隣に並んだ。

彼は相変わらず黙ったままではあったが、進む方向は彼の部屋ではなく庭園への出入り口だ。
それに気がつくとカトリーヌはホッとして、わずかに微笑みながら口を開いた。

「先日は、レイラの婚約披露のお茶会に参加してくださって、ありがとうございました」
「……ああ」
「スチュアート様に一緒に出席して頂けて、嬉しかったですわ」

そこで、はたと気がついた。

スチュアートは、もともとカトリーヌではなく、レイラを結婚相手に指名してきたのだ。
だとしたら、そんな場に出席してレイラの婚約相手を見ても、嫌な思いをしただけだったかもしれない。

2人は並んで扉を抜けると、そのまま庭園を進んでいく。
心なしかスチュアートの歩みがゆっくりとなったのを感じて、カトリーヌもそれに倣った。

チラリと横目でスチュアートを見る。
彼はいつも通り長い前髪に顔を隠しているせいで、その表情は分からない。

何を考えているのか、さっぱり分からないけれど……。

結婚の申し込みをしてきたくらいなのだから、やはり彼も、可愛らしい容姿のレイラを気に入っていたのだろう。
というよりも、好きだったのだろうか。

いや、勝手に過去形にしては、良くないのかもしれない。
もしも今もまだ、好きなのだとしたら……。


自分は追い出されてしまうだろう。


カトリーヌは考えを巡らせながら、黙々と彼の隣を歩き続けていた。
が、やがて勢いよく頭を左右に振った。

1人で悶々としているのなんて、とても耐えられなかった。
だから、きつく両手を握りしめると、意を決して口を開いたのである。

「スチュアート様は……今でも、私ではなく、レイラを結婚相手として望んでいらっしゃいますか?」


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