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「それは口止めされてるから、今は言えない。
でもすぐに分かるさ。
それより……」
ドミニクが身を乗り出してきたせいで、2人の距離がグッと縮まる。
ドキドキしているせいで呼吸が荒いのを気付かれてしまいそうな気がして、キャンディスは身をすくめた。
しかしそんな僅かな距離さえ詰めるように、彼がグイグイ顔を覗き込んでくるものだから、もうこれ以上逃げようがなくて。
咄嗟に身をよじったものの、ドミニクは掴んだ手を離そうとはしなかった。
「そんなことを心配してたせいで、不機嫌だったんだな。
俺のことを考えて夜も眠れなかった?」
「そ、そういうわけじゃ……」
キャンディスは慌てて言ったが、彼の言葉はまさに図星だったから、みるみる顔が赤くなってしまう。
けれども俯くことさえ許されず、彼の瞳に射すくめられた。
舞台を照らす明かりに反射したドミニクの瞳は、キラキラと輝いていた。
それはあまりに美しい深い緑色で。
キャンディスはいつしか、恥ずかしさなどすっかり忘れてしまって、魅入られたように、じっと見つめ返していた。
「そうなんだろ?」
耳元で囁く声がする。
なんでもない言葉なのに、それは彼女の耳に甘く響いてきた。
「……うん」
気がつけばキャンディスは、小さく頷いていた。
すると次の瞬間、体を大きく引かれたかと思うと、きつくドミニクに抱きしめられていた。
観客は舞台に釘付けだったし、明るい舞台とは違い観客席は薄暗い。
人に見られる心配などまず無かったけれども、あまりに動揺していたキャンディスは、この状況を喜ぶどころではなかった。
「ひ、人が見るわよ」
「舞台じゃなく俺たちを見ている奴なんかいるものか。
それに見られたって構わないさ。
婚約者なんだから、何の問題もないだろ」
「で、でも……」
それでもなお抵抗するキャンディスの唇に、ドミニクは人差し指を押し当てた。
「いいから、少し黙ってろ」
そして彼女の唇をなぞるように指を動かしてから、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「あっ……」
キャンディスはきつく目を閉じた。
キスされるかと思うと、膝が震えてしまった。
が、数秒経っても、唇には何も触れなくて。
恐る恐る薄く目を開けると、ドミニクはこちらを見下ろしながら小さく笑い、素早くキャンディスの頬へと唇を当てた。
「そんなに身構えられるとはな……。
仕方ない。
もう少しだけ待ってやるよ」
「待つって……な、何を?」
「そりゃあ……な」
ドミニクは笑いながらキャンディスの唇をぷにっと押すと、彼女から体を離して座り直した。
キャンディスも慌ててスカートの皺を伸ばしながら、前に向き直る。
いつの間にやら舞台の上で物語は進みに進んでいて、女優の悲しい恋がどうなったのかは分からなくなってしまっていた。
しかしもうキャンディスは、舞台などどうでも良いという気分だった。
いつしか伸びてきたドミニクの手が、すっぽりとキャンディスの手を握ってくれたのが嬉しくて。
気を抜けばすぐにニヤニヤ笑ってしまうのを抑えるのに精一杯だったのである。
でもすぐに分かるさ。
それより……」
ドミニクが身を乗り出してきたせいで、2人の距離がグッと縮まる。
ドキドキしているせいで呼吸が荒いのを気付かれてしまいそうな気がして、キャンディスは身をすくめた。
しかしそんな僅かな距離さえ詰めるように、彼がグイグイ顔を覗き込んでくるものだから、もうこれ以上逃げようがなくて。
咄嗟に身をよじったものの、ドミニクは掴んだ手を離そうとはしなかった。
「そんなことを心配してたせいで、不機嫌だったんだな。
俺のことを考えて夜も眠れなかった?」
「そ、そういうわけじゃ……」
キャンディスは慌てて言ったが、彼の言葉はまさに図星だったから、みるみる顔が赤くなってしまう。
けれども俯くことさえ許されず、彼の瞳に射すくめられた。
舞台を照らす明かりに反射したドミニクの瞳は、キラキラと輝いていた。
それはあまりに美しい深い緑色で。
キャンディスはいつしか、恥ずかしさなどすっかり忘れてしまって、魅入られたように、じっと見つめ返していた。
「そうなんだろ?」
耳元で囁く声がする。
なんでもない言葉なのに、それは彼女の耳に甘く響いてきた。
「……うん」
気がつけばキャンディスは、小さく頷いていた。
すると次の瞬間、体を大きく引かれたかと思うと、きつくドミニクに抱きしめられていた。
観客は舞台に釘付けだったし、明るい舞台とは違い観客席は薄暗い。
人に見られる心配などまず無かったけれども、あまりに動揺していたキャンディスは、この状況を喜ぶどころではなかった。
「ひ、人が見るわよ」
「舞台じゃなく俺たちを見ている奴なんかいるものか。
それに見られたって構わないさ。
婚約者なんだから、何の問題もないだろ」
「で、でも……」
それでもなお抵抗するキャンディスの唇に、ドミニクは人差し指を押し当てた。
「いいから、少し黙ってろ」
そして彼女の唇をなぞるように指を動かしてから、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「あっ……」
キャンディスはきつく目を閉じた。
キスされるかと思うと、膝が震えてしまった。
が、数秒経っても、唇には何も触れなくて。
恐る恐る薄く目を開けると、ドミニクはこちらを見下ろしながら小さく笑い、素早くキャンディスの頬へと唇を当てた。
「そんなに身構えられるとはな……。
仕方ない。
もう少しだけ待ってやるよ」
「待つって……な、何を?」
「そりゃあ……な」
ドミニクは笑いながらキャンディスの唇をぷにっと押すと、彼女から体を離して座り直した。
キャンディスも慌ててスカートの皺を伸ばしながら、前に向き直る。
いつの間にやら舞台の上で物語は進みに進んでいて、女優の悲しい恋がどうなったのかは分からなくなってしまっていた。
しかしもうキャンディスは、舞台などどうでも良いという気分だった。
いつしか伸びてきたドミニクの手が、すっぽりとキャンディスの手を握ってくれたのが嬉しくて。
気を抜けばすぐにニヤニヤ笑ってしまうのを抑えるのに精一杯だったのである。
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