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32:ジュリアの赤面②

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「え!?
は、はい……もちろんですわ!
私の方こそ、よろしくお願い致します」

ジュリアはダニエルに握られた手を震わせながら、彼を見上げた。

「で、でも……どうしたんですか?
いまさら改まって」

するとダニエルは慌てたように彼女の手を離した。
それから引きつったような笑顔を浮かべると

「いや、ほら!
こういうことを言葉にするのって、大事だなと思ったものですから!
言いたいなと思った時には、それが特別な時ではなくても口にしていこうと思いまして!」
「そうだったんですね。
嬉しいですわ!
おかしなことを言ってしまって、すみませんでした」
「いやいや、そんなことは気にしないで下さい」

ダニエルの言葉に、ジュリアは本当に幸せそうに目を細めて微笑んだ。
ダニエルも満足げに、彼女に寄り添っている。

まるで絵に描いたような幸せな様子に、周囲の人たちは皆微笑み合った。
そしてこの花束のプレゼントの事は、あっという間に人々の間で広まっていき、社交界で大いに話題となったのだった。

そうすればもちろん噂はすぐに、ケインとルイーズの耳にも入ることとなった。
が、この2人はといえば、噂を聞いたところで、他の人たちのように微笑み合うわけもなかった。

ケインは両手をきつく握りしめたし、ルイーズは歯ぎしりして悔しがった。

「信じられない!
なんであの2人はすっかりいい雰囲気になっているのよ!
いったいダニエルはどうしちゃったっていうの!」

ルイーズが乱暴にテーブルを叩いたせいで、ティーカップがカチャカチャと音を立てる。
その様子をぼんやりと眺めながら、ケインは呟いた。

「やっぱり、ダニエルもジュリアに本気になってしまったってことなんだろうな」
「まさか!」

ルイーズが叫ぶ。
しかしケインの真剣な表情が崩れないのを見ると、彼女は静かな口調になって続けた。

「本当に……そう思う?」
「ああ、そうだと思う」
「でも、そうだとしたら……私は?」

ケインは答えない。
ただ黙ったまま、ゆるゆると首を横に振って見せる。
それを見たルイーズは、吐き捨てるように言った。

「ジュリアを選んで、私を切り捨てるつもりなのね……」

震える指で、スカートを握りつぶしていたせいで、もうすっかり皺くちゃになってしまっている。
しかしそんなことを気にする余裕は、今のルイーズには残されてはいなかった。

ただ目をギラつかせて、一点を睨み続けているばかり。

そしてケインにさえ届かないほどの小声で、呟いたのだった。

「許さないわ。
私は……このまま終わるわけにはいかないのよ」
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