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21:ケインの高みの見物③
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と、その時、不意にルイーズが小さく声を上げた。
急いでケインも、彼女の視線の先に目をやる。
今度はオペラグラスを奪わなくても、影の動きを見ているだけで、大体のことは予想できた。
どうやらダニエルが、ぐいっとジュリアに顔を寄せているらしい。
ルイーズの言いつけ通り、強引にキスをしようと試みているに違いなかった。
「頑張ってるじゃないか」
ポツリとケインが呟く隣で、ルイーズがこれでもかというふうにオペラグラスを握りしめた。
「いいわよ……。
頑張って、ダニエル!
ジュリアが嫌がっても気にすることないわ。
グイグイいきなさい!」
ルイーズの応援の声にも力がこもる。
ケインもつられて前のめりになりながら、じっとダニエル達の様子を見上げていたのだったが……
「あれ?何かあったのか?」
「ええ、何か変ね……」
2人は口々に言い合った。
ダニエルとジュリアは、パッタリと動かなくなってしまったのである。
てっきり、この辺りでジュリアが怒り始めるか、悲鳴を上げるか、もしくは逃げ出すか、となるだろうと予想していたというのに。
何か話でもしているのだろうか。
それとも、ショックのあまりジュリアが泣き出してしまったのだろうか。
色々と予測しながら見ていたものの、影だけではそこまで判別出来なかったケインが
「ちょっと、オペラグラス貸してくれ」
とルイーズに手を伸ばした時だった。
「あっ!」
突然ルイーズが小さな悲鳴を上げたものだから、慌ててケインも顔を上げた。
すると、ちょうど立ち上がったダニエルが、逃げるようにボックス席を出て行くのが見えたのである。
「何をしてるのよ、ダニエルは!」
ルイーズも声を荒げて立ち上がり、歩き出す。
「どこへ行くのさ」
ケインが訊ねると、ルイーズは振り返ることもせずに言った。
「ダニエルの所へ行くのよ!
いったい何をしてるのか、問いただしてやらなきゃ!」
そこでケインも急いで立ち上がると、物凄い勢いで歩いて行くルイーズの背中を、慌てて追いかけたのだった。
急いでケインも、彼女の視線の先に目をやる。
今度はオペラグラスを奪わなくても、影の動きを見ているだけで、大体のことは予想できた。
どうやらダニエルが、ぐいっとジュリアに顔を寄せているらしい。
ルイーズの言いつけ通り、強引にキスをしようと試みているに違いなかった。
「頑張ってるじゃないか」
ポツリとケインが呟く隣で、ルイーズがこれでもかというふうにオペラグラスを握りしめた。
「いいわよ……。
頑張って、ダニエル!
ジュリアが嫌がっても気にすることないわ。
グイグイいきなさい!」
ルイーズの応援の声にも力がこもる。
ケインもつられて前のめりになりながら、じっとダニエル達の様子を見上げていたのだったが……
「あれ?何かあったのか?」
「ええ、何か変ね……」
2人は口々に言い合った。
ダニエルとジュリアは、パッタリと動かなくなってしまったのである。
てっきり、この辺りでジュリアが怒り始めるか、悲鳴を上げるか、もしくは逃げ出すか、となるだろうと予想していたというのに。
何か話でもしているのだろうか。
それとも、ショックのあまりジュリアが泣き出してしまったのだろうか。
色々と予測しながら見ていたものの、影だけではそこまで判別出来なかったケインが
「ちょっと、オペラグラス貸してくれ」
とルイーズに手を伸ばした時だった。
「あっ!」
突然ルイーズが小さな悲鳴を上げたものだから、慌ててケインも顔を上げた。
すると、ちょうど立ち上がったダニエルが、逃げるようにボックス席を出て行くのが見えたのである。
「何をしてるのよ、ダニエルは!」
ルイーズも声を荒げて立ち上がり、歩き出す。
「どこへ行くのさ」
ケインが訊ねると、ルイーズは振り返ることもせずに言った。
「ダニエルの所へ行くのよ!
いったい何をしてるのか、問いただしてやらなきゃ!」
そこでケインも急いで立ち上がると、物凄い勢いで歩いて行くルイーズの背中を、慌てて追いかけたのだった。
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