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3:ダニエルの秘密①
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さて、ダニエルとジュリアの対面が終わると、間もなく夜会が始まった。
と同時に、続々と招待客が押しかけてきた。
ダニエルはジュリアを伴って、あちらこちらで同じ挨拶を繰り返さなければならなかった。
とてもではないが、2人でゆっくりお喋りをする暇など無かった。
これにはジュリアが、あからさまに残念そうな顔をしていたが、ダニエルにとっては、かえって都合が良かった。
彼はジュリアと会話を楽しんで親交を深める気など、さらさら無かったのである。
しかしいつまでも、そうして逃げていられるはずもなかった。
やっと挨拶が一通り済んだところで、ちょうど演奏が始まったのだ。
ジュリアもそれに気がついたのだろう。
期待の眼差しでこちらを見てくる。
もちろん彼女は、ダニエルの方からダンスに誘ってくれるのを待っているに違いなかった。
今日の主役はこの2人なのだから、当然の期待である。
それでもダニエルは、どうしたものかと一瞬躊躇った。
ジュリアとの会話を避けたいというのもあったが、本当に疲れていた、というのも大きな理由だった。
できれば、音楽が流れ始めたことには気がつかなかったフリをして、ひと休みしたいところだ。
しかし、人垣の向こうからジュリアとダニエルの両親がこちらを見ているのに気がつくと、仕方なく手を差し出した。
「……よろしければ、踊りませんか?」
「はい!喜んで」
ジュリアが嬉しそうに飛びついてくるのを、ダニエルは苦々しい思いで見ていた。
しかしそんなことは微塵も感じさせずに、とりあえず笑みは絶やさない。
そしてさりげなく、辺りを見回した。
ある人はグラスを片手に笑い合い、またある人はドレスを翻してダンスを楽しんでいる。
そんな中で、壁際に立ち、笑顔こそ浮かべているものの、鋭い目つきでジュリアとダニエルを眺めている2人の人物が目に入った。
すらりと背の高い黒髪の男性と、赤毛を背中に垂らした、小柄だがスタイルの良い女性である。
ダニエルは2人と目を見交わすと、周囲に気づかれぬように小さく頷いた。
男性の方はケイン・オーモンド侯爵令息。
そして女性の方はルイーズ・シャノン男爵令嬢といい、どちらもダニエルがよく知っている相手だったのだ。
そしてこの3人には、ある秘密があったのである。
それも、決して他人には言えないような、大きな秘密が。
と同時に、続々と招待客が押しかけてきた。
ダニエルはジュリアを伴って、あちらこちらで同じ挨拶を繰り返さなければならなかった。
とてもではないが、2人でゆっくりお喋りをする暇など無かった。
これにはジュリアが、あからさまに残念そうな顔をしていたが、ダニエルにとっては、かえって都合が良かった。
彼はジュリアと会話を楽しんで親交を深める気など、さらさら無かったのである。
しかしいつまでも、そうして逃げていられるはずもなかった。
やっと挨拶が一通り済んだところで、ちょうど演奏が始まったのだ。
ジュリアもそれに気がついたのだろう。
期待の眼差しでこちらを見てくる。
もちろん彼女は、ダニエルの方からダンスに誘ってくれるのを待っているに違いなかった。
今日の主役はこの2人なのだから、当然の期待である。
それでもダニエルは、どうしたものかと一瞬躊躇った。
ジュリアとの会話を避けたいというのもあったが、本当に疲れていた、というのも大きな理由だった。
できれば、音楽が流れ始めたことには気がつかなかったフリをして、ひと休みしたいところだ。
しかし、人垣の向こうからジュリアとダニエルの両親がこちらを見ているのに気がつくと、仕方なく手を差し出した。
「……よろしければ、踊りませんか?」
「はい!喜んで」
ジュリアが嬉しそうに飛びついてくるのを、ダニエルは苦々しい思いで見ていた。
しかしそんなことは微塵も感じさせずに、とりあえず笑みは絶やさない。
そしてさりげなく、辺りを見回した。
ある人はグラスを片手に笑い合い、またある人はドレスを翻してダンスを楽しんでいる。
そんな中で、壁際に立ち、笑顔こそ浮かべているものの、鋭い目つきでジュリアとダニエルを眺めている2人の人物が目に入った。
すらりと背の高い黒髪の男性と、赤毛を背中に垂らした、小柄だがスタイルの良い女性である。
ダニエルは2人と目を見交わすと、周囲に気づかれぬように小さく頷いた。
男性の方はケイン・オーモンド侯爵令息。
そして女性の方はルイーズ・シャノン男爵令嬢といい、どちらもダニエルがよく知っている相手だったのだ。
そしてこの3人には、ある秘密があったのである。
それも、決して他人には言えないような、大きな秘密が。
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