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第一章:アナザーニューワールド
57 誓い
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マリリン達が暮らしていた村の北側には、山頂が禿げた山があった。
山から川が流れ、川は恵を育む。
ここは、自然豊かな森に囲まれており、人が住むのに適している土地であった。
当時この場所には、誰も住んでいなかった。
だが人族の争いに疲れ、安住の地を目指した者達は、竜族の力を借りてこの地に移住し、ここを安息の地として根を張り暮らすのだった。
禿げ山の麓には、多数のお墓が建てられている。
村で亡くなった者達を祀る場所であり、お墓には花や果物が供えられてあった。
その中で一際立派なお墓の前に、今、二人の美しい女性が目を閉じ祈りを捧げている。
「おじいさま、おばあさま、どうか安らかにお眠り下さい。」
「じいじ、ばぁば、おやすみなさい。」
マリリンとヒヨリンは涙が枯れるまで泣きはらした後、長老の亡骸を手厚く葬ると、遺言とおりに育ての親であるヒミコが眠る墓に埋めた。
二人のお祈りが終わると、俺もまたお墓の前に行き、手を合わせて祈りをささげる。
助けることができなくてすいませんでした。
でも約束した通り、二人は俺の命に代えても守っていきます。
だから、安心して眠って下さい。
お祈りが終わり振り返ると、マリリンが横に来た。
「ありがとね、シン。それと、あの時はきつくあたってごめんなさい。」
「いいんだよ、誰だってあんな辛い思いをしたら、誰かにあたりたくもなるさ。それに、俺は何もできなかった……責められて当然だよ。」
俺は助けることができなかった自分を、未だに攻め続けていた。--しかし。
「そんな事ない!!」
それをマリリンが強く否定する。
「そう、そんな事はない。シンがいたおかげでじいじとばぁばに会えた。それに二人を同じ場所で眠らせてあげることができた。もし、シンがいなかったら私達はずっと村が無くなった事も、家族が死んだ事も知ることができなかった。だから感謝。」
ヒヨリンもまた、俺に対して感謝の気持ちを伝えた。
ここに来るまではまともに俺と会話ができないでいたのだが、今回の事もあり、ヒヨリンは大分心を許してくれたようだった。
「そうよ! シンのお蔭よ。ありがとう! この借りは必ず返すわ!」
マリリンは元気そうに言うも、瞳に映る悲しみは消えていない。
多分、ヒヨリンの前だから気丈に振舞っているんだろうな。
「二人ともありがとう、俺は強くなる! そして二人を絶対守るし、もう誰も泣かせたりはしない! この手から一つも零す事なく、全て救って見せる!」
「シンは強いね……そうね。だったら私も強くなる! 守られるだけなんて絶対イヤ! このお墓に眠るおじいさまとおばあさまに誓って私は強くなる! そして自分も周りもみんな幸せにするわ!」
「私はみんなを癒します。誰も傷つかないように守る。マリリンの幸せは私が守る! じぃじ、ばぁばに約束する!」
「じゃあ私はヒヨリンの幸せを守るわ!」
マリリンとヒヨリンは、二人のお墓を前にに決意を口にすると、笑顔で向き合った。
血は繋がっていなくてもお互いの幸せを願う、本当に仲のいい姉妹。
不思議な事に、そこにはそんな二人を笑顔で眺めている老人と老婆がいるように感じるのであった。
山から川が流れ、川は恵を育む。
ここは、自然豊かな森に囲まれており、人が住むのに適している土地であった。
当時この場所には、誰も住んでいなかった。
だが人族の争いに疲れ、安住の地を目指した者達は、竜族の力を借りてこの地に移住し、ここを安息の地として根を張り暮らすのだった。
禿げ山の麓には、多数のお墓が建てられている。
村で亡くなった者達を祀る場所であり、お墓には花や果物が供えられてあった。
その中で一際立派なお墓の前に、今、二人の美しい女性が目を閉じ祈りを捧げている。
「おじいさま、おばあさま、どうか安らかにお眠り下さい。」
「じいじ、ばぁば、おやすみなさい。」
マリリンとヒヨリンは涙が枯れるまで泣きはらした後、長老の亡骸を手厚く葬ると、遺言とおりに育ての親であるヒミコが眠る墓に埋めた。
二人のお祈りが終わると、俺もまたお墓の前に行き、手を合わせて祈りをささげる。
助けることができなくてすいませんでした。
でも約束した通り、二人は俺の命に代えても守っていきます。
だから、安心して眠って下さい。
お祈りが終わり振り返ると、マリリンが横に来た。
「ありがとね、シン。それと、あの時はきつくあたってごめんなさい。」
「いいんだよ、誰だってあんな辛い思いをしたら、誰かにあたりたくもなるさ。それに、俺は何もできなかった……責められて当然だよ。」
俺は助けることができなかった自分を、未だに攻め続けていた。--しかし。
「そんな事ない!!」
それをマリリンが強く否定する。
「そう、そんな事はない。シンがいたおかげでじいじとばぁばに会えた。それに二人を同じ場所で眠らせてあげることができた。もし、シンがいなかったら私達はずっと村が無くなった事も、家族が死んだ事も知ることができなかった。だから感謝。」
ヒヨリンもまた、俺に対して感謝の気持ちを伝えた。
ここに来るまではまともに俺と会話ができないでいたのだが、今回の事もあり、ヒヨリンは大分心を許してくれたようだった。
「そうよ! シンのお蔭よ。ありがとう! この借りは必ず返すわ!」
マリリンは元気そうに言うも、瞳に映る悲しみは消えていない。
多分、ヒヨリンの前だから気丈に振舞っているんだろうな。
「二人ともありがとう、俺は強くなる! そして二人を絶対守るし、もう誰も泣かせたりはしない! この手から一つも零す事なく、全て救って見せる!」
「シンは強いね……そうね。だったら私も強くなる! 守られるだけなんて絶対イヤ! このお墓に眠るおじいさまとおばあさまに誓って私は強くなる! そして自分も周りもみんな幸せにするわ!」
「私はみんなを癒します。誰も傷つかないように守る。マリリンの幸せは私が守る! じぃじ、ばぁばに約束する!」
「じゃあ私はヒヨリンの幸せを守るわ!」
マリリンとヒヨリンは、二人のお墓を前にに決意を口にすると、笑顔で向き合った。
血は繋がっていなくてもお互いの幸せを願う、本当に仲のいい姉妹。
不思議な事に、そこにはそんな二人を笑顔で眺めている老人と老婆がいるように感じるのであった。
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