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第一章:アナザーニューワールド

3 カス

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 俺は森の中をアズと共に歩き始めていた。
 森の中に人が歩くような道は整備されておらず、木々の合間を縫ってあるくような状態である。

 俺は辺りを見渡すも、自分が生きていた世界と変わらない森の風景。
 鳥が鳴き、虫が飛び、とてもここが異世界とは未だに信じられない。


「なぁアズ、ところでどこに向かってるんだ?」


 アズは、草の間をかき分けながらサクサク進んでいる。
 ここがどこかも未だにわからないし、ここが地球でないなら、どうやって生きていけばいいのだろうか?
 そんな俺の心情も知らず、アズは振り向くことなく衝撃の事実を突き付けてきた。


「ま、迷子になったニャ…」


 ……は?


「嘘だろ! だってなんか、自信満々に歩いていたじゃん! ちょ待って、マジで迷子? 冗談だよね……あははは……。」


 俺は乾いた笑いをして現実逃避をする。
 そして「冗談ニャ」と言ってくれるのを待つ事にした。
 しかし、アズからそんな言葉は返ってこず、代わりに信用性のない返答が届く。


「まぁなんとかなるニャ、こう見えて道を覚えるのは苦手ニャけど、匂いには敏感ニャ! 飯の匂いがする方に歩いて行くにゃ!」


 だめだこの猫……。
 全くあてになんねぇ。

 そしてふとある事に気付く。


「つかさぁ、アズはさっき孵化したばっかじゃない? 本当にここがどこかわかってるの?」


 その言葉に、なぜかアズは怒り始めた。


「心外ニャ! これでもニャァは神の使い的な偉大な猫ニャ! ただ、道を忘れただけニャ!!」


 おい、この猫さっき猫であること否定してただろ。
 猫って言っちゃってるよ……。


「まぁいいや、俺には信じるしか方法はねぇしな。それよりも、さっきここが地球であって地球でないって言ってたけど、そろそろこの世界について教えてくれよ。」


 アズは一瞬立ち止まるとこちらを向き、俺の顔をジーっと見つめる。


「ようやく落ち着いてきたニャア、流石シンにゃ! まだ道も長いしゆっくり話しながら歩くかニャァ」


 いや、俺……君と会ってまだ間がないんだけど。
 俺の何を知ってるんだよ。


 アズは今までと違い、比較的歩きやすそうな道に移動し(さっきまでは完全に獣道……)この世界について語り始めた。


 アズが言うには、ここは俺が生きてきた時代から300万年後の地球だと言う。

 この世界を作った神様は、理想の世界を作るために地球で人類の進化を見守り、時には手を加えて進化を促してきたがどうやら失敗したらしい。

  神様は地球の他にもいくつかの知的生命体が暮らす星を管理していたが、やはり完璧な世界は作れず、やけになって管理していた星を全て集めてぶつけることで合体(笑)させたようだ。

 その際に元の地球は天変地異に襲われ、文明は崩壊し、人々は消えていくことになる。


【だが!人類は絶滅していなかった!】


 とまぁ某世紀末覇者のような世界となって、これまで存在しなかった星の生物達と共存を始め……ることなく、その星ごとに国が分かれ、血で血を洗う争いになってるんだとか。

 おいおい、神適当すぎるだろ…
 大丈夫か、ここ?
 まぁ多分ろくな世界ではないのは間違いないな。


「あえて言おう! この世界はカスであると!」


 俺が全てを聞いて最初に放った言葉はそれだった。

 
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