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第三章

48 終わらない悲しみ

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ーーそして……


「ローズ……ローズ!! なんでだよ! なんでなんだよ! やめろ! やめてくれ! こんなの嘘だ! ローーズウウウゥゥゥゥーー!!」


 静まりかえった戦場に、カリーの悲しみに満ちた叫び声が響き渡った。
 カリーの脳裏に浮かぶのは、ローズの最後の笑顔。

 そして走馬灯のように、今までのローズとの日々が脳裏を巡る。
 笑ったローズ、泣きまねをするローズ、悲しそうに笑うローズ……。
 色んな表情はあるが、思い浮かぶのは全てローズの笑顔、そう、カリーが命を懸けて守りたかったものだ。


「カリー……大好きだよ」
「こっちだよ~だ! 悔しかったらここまでおいでぇ~。」
「カリー、ねぇカリーってば! 聞いてるの?」
「ねぇいつかさ……ん~ん、なんでもない。なんでもないってば!」
「あのさ……カリーはさぁ、将来の夢ってある?」


 その思い出の一つ一つがカリーの心を深くえぐり続ける。
 

 もうローズはこの世にいない。
 一生守ると誓った。
 ローズの為ならこの命なんて惜しくはなかった。
 ずっとローズの笑顔を守りたかった!!


 あまりの喪失感からカリーは膝をつくと、そのまま意識を手放した。

 そして隣にいるシルクもまた放心状態になっている。


「ローズが……死んだ? 私のせいだ……全て私の判断がこの結果を……。夢なら覚めてくれ。頼む、夢なら覚めてくれよ……。」


 焦点の合わない目でシルクは呟き続けている。
 彼もまた、目の前で最愛の妹を失った事で自我を保てなくなっていた。
 そして心に残るは自分への怒り……だが、それを発奮する気力も最早尽きている。


「フェイル……フェイルゥゥゥーーー!!」


 エンシェントドラゴンゾンビを倒したフェイルの下にバンバーラが泣きながら抱き着いて来た。
 フェイルはそれを黙って抱きしめる。


「俺は……また救えなかった。お前たちだけにはこんな思いはさせたくなかった!!」


 後悔の念がフェイルの心を押しつぶす。

 幾度となく経験してきた悲しみの渦。
 二度とこんな悲しみがないように、今まで精一杯戦い続けてきた。
 しかしそれでもまた同じ事が繰り返されてしまう。

 一体自分は何なんだ?
 勇者ってのは何なんだ?
 自分が勇者で本当にいいのだろうか?


 そんな疑問がフェイルの胸を覆いつくす……。


 こうして戦いは終焉を迎えた。
 ローズの命がけの想いが全てを終わらせた。
 深い悲しみと静寂を残して……。


 次回エピローグ。
  明日に向かって
 
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