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第三章

17 絶望的な戦いの幕開け

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「あいつは今、お前の為に命を懸けようとしている。それはお前が何よりも大切だからだ! そして私もまた、お前を救う為ならこの命など惜しくはない! 俺たちの決意を無駄にしないでくれ! だから……行くぞ! ゼン! 周囲の敵はお前に任せる! 私はローズを守りながら進む!」


 そのシルクの気迫に押され、ローズは涙を流しながらも頷く。
 そしてゼンは全身から迸る(ほとばしる)ほどの熱量で声を上げた。


「仰せのままに! 行くぞ、アンデッド共!」


 その掛け声と共に、ゼンはシルクの前の敵に攻撃し始め、カリーもまた、ダークマドウに向けて突撃する

……といっても、他の魔物が邪魔をしてダークマドウには辿り着くのは難しかった。


 その時、カリーを囲むスケルトン達が燃え上がる。


「ゴンベギラ!!」


 バンバーラが魔法を放ったのだ。
 そう、ここには最強の賢者がいる。

 とはいえバンバーラもまた、この状況がどれだけヤバいかを理解していた。
 最悪カリーと共に死ぬかもしれない。


(ただでは死なないわ! 少なくともフェイルよりも先に死ぬわけにはいかない! もう二度と……あの人に失う悲しみを与えたくない!)


 心の中でそう叫ぶバンバーラ。
 しかし、そんな様子も見せずに強気な態度をカリーに示した。


「カリー、援護は任せて! まずは目の前の敵を一匹づつ倒すのよ! それとシルク王子は敵が少ないところを進んでいって! 道は私達が作るわ!」

「恩にきる!」


 それが簡単な事ではない事をシルクもわかっている。
 しかし、自分と同じく命懸けで戦う彼女に言える言葉はそれだけだ。


 そんな状況の中、守られる事しか出来ないローズは、深い悲しみと無力感がその心を覆い尽くすと崩れ落ちそうになる。


「お姉様……それにカリー……ごめんなさい。」

「泣き言は後にしろローズ! みんなの意思を無駄にするな! お前は俺が絶対守る。行くぞ!」

「……はい!! お兄様!」


 それでもこれ以上足手纏いにはなりたくない為、ローズは流れ落ちる涙を拭って立ち上がった。




 こうして戦いは最終局面に突入する。

 カリー&バンバーラ vs   ダークマドウ
 フェイル vs  エンシェントドラゴンゾンビ

 どちらも絶望的な戦いであるが、まだ誰の心も挫けてはいない。
 それぞれの想いを胸に、ここに負けられない戦いの火蓋が切って落とされるのであった。
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