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第三章
15 最悪な事実
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「くくく……。だから無駄だといったであろう。勇者とその娘は既にリンクしている。どれだけ離れていようと、貴方が勇者の力を使った瞬間にその娘は死ぬであろう。つまり、これからお前はずっと勇者の力を封印されたまま戦わなければならぬ。と言っても、この先はもうないが。」
その言葉の意味を理解したフェイルは、初めて顔を青く染めた。
それが事実ならば、正に絶対絶命な状況である。
ーーしかし!
「ブラフだ! フェイル! そんな話を聞く必要も無ければ、信じるのも無駄だ。それにそれが事実であっても、先に呪いを解呪すれば良い。それにもう直ぐ姉さんも来る。……俺が囮になるから、ローズとそこの王子を連れて逃げてくれ!」
ダークマドウの言葉を聞いてカリーは叫ぶ。
そして、その時ちょうどバンバーラも合流した。
「フェイル……行って! ここはあたしとカリーが引き受けるわ!」
突然戻ってきた姉の言葉にカリーは焦る。
正直、ここに残ると言う事は死ぬ事を意味した。
当然カリーはそれを理解しているし、覚悟もある。
だが姉さんが自分と共に死ぬことだけは許容できない。
姉さんは、平和になった世界でフェイルと幸せに生きるべきだ!
「姉さん! 姉さんはダメだ! フェイルと一緒にローズを守ってくれ!」
「何言ってるのよ! あんたみたいな愚弟を置いて行ける訳ないでしょ!」
しかしバンバーラもまた、カリー1人に化け物を押し付けて逃げる事などできない。
まさに二人の言葉は平行線だった。
「なぁ、お前ら。あんまり俺を舐めるなよ? 勇者の力が無くても、お前達が逃げる時間くらい俺は稼げる。いや、俺じゃないとあいつの相手は無理だ。それにカリー。お前の役目はなんだ? 魔王軍幹部を倒すことか? あの化け物を倒す事か? 違うだろ、お前が今回やるべき事はただ一つ。姫様を守る事だ。だから……行け!! 行くんだよ! 何をしている! 早くしろ! バーラもだ!」
それだけ言われてもカリーはまだ悩んでいる。
しかし、バンバーラは違った。
フェイルの言葉と決意を信じる事にした。
それであれば足手まといにならない為にも、この愚弟を連れて直ぐに離脱しなければならない。
「……行くわよ、カリー。一秒でも時間を無駄に出来ないわ!」
「だけどっ!!」
「いいから走りなさい! ローズちゃんを死なせたくないでしょ! それに私達が逃げなければ、フェイルの足枷になるわ!」
「くそっ!! わかったよ、だけどローズを安全な所に連れて行ったら必ず俺は戻るからな!」
「その時は私も一緒よ。」
バンバーラはこんな時にも関わらず、悪戯な笑みを浮かべた。
そしてカリーもまた、冷やせをかきながらもフッと笑い、再びローズを抱えて走ろうとする。
ーーだか……
その言葉の意味を理解したフェイルは、初めて顔を青く染めた。
それが事実ならば、正に絶対絶命な状況である。
ーーしかし!
「ブラフだ! フェイル! そんな話を聞く必要も無ければ、信じるのも無駄だ。それにそれが事実であっても、先に呪いを解呪すれば良い。それにもう直ぐ姉さんも来る。……俺が囮になるから、ローズとそこの王子を連れて逃げてくれ!」
ダークマドウの言葉を聞いてカリーは叫ぶ。
そして、その時ちょうどバンバーラも合流した。
「フェイル……行って! ここはあたしとカリーが引き受けるわ!」
突然戻ってきた姉の言葉にカリーは焦る。
正直、ここに残ると言う事は死ぬ事を意味した。
当然カリーはそれを理解しているし、覚悟もある。
だが姉さんが自分と共に死ぬことだけは許容できない。
姉さんは、平和になった世界でフェイルと幸せに生きるべきだ!
「姉さん! 姉さんはダメだ! フェイルと一緒にローズを守ってくれ!」
「何言ってるのよ! あんたみたいな愚弟を置いて行ける訳ないでしょ!」
しかしバンバーラもまた、カリー1人に化け物を押し付けて逃げる事などできない。
まさに二人の言葉は平行線だった。
「なぁ、お前ら。あんまり俺を舐めるなよ? 勇者の力が無くても、お前達が逃げる時間くらい俺は稼げる。いや、俺じゃないとあいつの相手は無理だ。それにカリー。お前の役目はなんだ? 魔王軍幹部を倒すことか? あの化け物を倒す事か? 違うだろ、お前が今回やるべき事はただ一つ。姫様を守る事だ。だから……行け!! 行くんだよ! 何をしている! 早くしろ! バーラもだ!」
それだけ言われてもカリーはまだ悩んでいる。
しかし、バンバーラは違った。
フェイルの言葉と決意を信じる事にした。
それであれば足手まといにならない為にも、この愚弟を連れて直ぐに離脱しなければならない。
「……行くわよ、カリー。一秒でも時間を無駄に出来ないわ!」
「だけどっ!!」
「いいから走りなさい! ローズちゃんを死なせたくないでしょ! それに私達が逃げなければ、フェイルの足枷になるわ!」
「くそっ!! わかったよ、だけどローズを安全な所に連れて行ったら必ず俺は戻るからな!」
「その時は私も一緒よ。」
バンバーラはこんな時にも関わらず、悪戯な笑みを浮かべた。
そしてカリーもまた、冷やせをかきながらもフッと笑い、再びローズを抱えて走ろうとする。
ーーだか……
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