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第三章
14 エンシェントドラゴンゾンビ
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その姿は、一言で言うと巨大な龍の骨だった。
それは全身から黒いオーラを撒き散らしながら、同時に悍ましい叫び声をあげる。
「グゥアアオオオオオォォォン!」
その瞬間、付近の大気全体が大きく揺れた!
そしてそこにいる全員の肌に鳥肌が立つ。
本能が恐怖しているのだ、この得体の知れない強大な何かに!
「……なんだよあれ! と、とにかく逃げるぞ!」
その姿を見たカリーは全身が震え上がりそうになるのを何とか堪えつつ、ローズを連れて逃げようとする。
しかし、シルクはその叫び声を聞いた瞬間、尻餅をついて恐怖に震えた顔で呟いた。
「あ、あ、あ、あれは……。まさか、伝承にあるエンシェントドラゴンのアンデッド? ゆ、勇者様! あれは危険です。あれは、この世界にいてはいけない存在……国が……世界が滅ぶ!」
この国の歴史を深く知るシルクは知っていた。
あの巨大なドラゴンが、世界の三分の一を焼き尽くした事を。
そして、かつて最強と言われた勇者と互角に渡り合った果てに何とか消滅した事を。
通常、ドラゴンゾンビとは本来の強さにこそ劣るものの、その力は元の強さに大きく影響され、場合によっては生前よりも強い場合がある。
そして、今回が違うとは思えない。
その位、その化け物から発せられる禍々しいオーラは圧倒的だった。
フェイルもまたその肌で感じるオーラから、相手がとてつもない化け物であるとわかる。
もしもこれがアンデッドでなければ今のフェイルでも倒すのは難しいかもしれない。
ーーしかし、アンデッドだ!
聖属性の勇者の力ならば、いくら元が強かったとはいえ、アンデッドに成り果てたドラゴンを倒す事はそれ程難しくはない。
それこそさっき放とうとした全力のディバインチャージならば、一撃と言わずともかなりの大ダメージを与えることが可能
……なのだが、今はまずい。
その力を解放すれば、ローズは死ぬ。
それがわかるが故にフェイルは悩んだ。
あの大きさであれば、逃げ切るのは無理。
それであれば、自分が囮になっている間にローズ達を逃す事が最善だ。
どの位距離が離れればローズの呪いが反応しなくなるかはわからない。
しかしかなり離れたならば、もしかしたら勇者の力を使えるかもしれない。
そこまで思考を巡らせたフェイルであるが、その思考を読み取ったが如くダークマドウが最悪な事を口にした。
それは全身から黒いオーラを撒き散らしながら、同時に悍ましい叫び声をあげる。
「グゥアアオオオオオォォォン!」
その瞬間、付近の大気全体が大きく揺れた!
そしてそこにいる全員の肌に鳥肌が立つ。
本能が恐怖しているのだ、この得体の知れない強大な何かに!
「……なんだよあれ! と、とにかく逃げるぞ!」
その姿を見たカリーは全身が震え上がりそうになるのを何とか堪えつつ、ローズを連れて逃げようとする。
しかし、シルクはその叫び声を聞いた瞬間、尻餅をついて恐怖に震えた顔で呟いた。
「あ、あ、あ、あれは……。まさか、伝承にあるエンシェントドラゴンのアンデッド? ゆ、勇者様! あれは危険です。あれは、この世界にいてはいけない存在……国が……世界が滅ぶ!」
この国の歴史を深く知るシルクは知っていた。
あの巨大なドラゴンが、世界の三分の一を焼き尽くした事を。
そして、かつて最強と言われた勇者と互角に渡り合った果てに何とか消滅した事を。
通常、ドラゴンゾンビとは本来の強さにこそ劣るものの、その力は元の強さに大きく影響され、場合によっては生前よりも強い場合がある。
そして、今回が違うとは思えない。
その位、その化け物から発せられる禍々しいオーラは圧倒的だった。
フェイルもまたその肌で感じるオーラから、相手がとてつもない化け物であるとわかる。
もしもこれがアンデッドでなければ今のフェイルでも倒すのは難しいかもしれない。
ーーしかし、アンデッドだ!
聖属性の勇者の力ならば、いくら元が強かったとはいえ、アンデッドに成り果てたドラゴンを倒す事はそれ程難しくはない。
それこそさっき放とうとした全力のディバインチャージならば、一撃と言わずともかなりの大ダメージを与えることが可能
……なのだが、今はまずい。
その力を解放すれば、ローズは死ぬ。
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あの大きさであれば、逃げ切るのは無理。
それであれば、自分が囮になっている間にローズ達を逃す事が最善だ。
どの位距離が離れればローズの呪いが反応しなくなるかはわからない。
しかしかなり離れたならば、もしかしたら勇者の力を使えるかもしれない。
そこまで思考を巡らせたフェイルであるが、その思考を読み取ったが如くダークマドウが最悪な事を口にした。
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