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第三章
5 シルクの葛藤
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「いや、カリー。お前の作戦が現状ベストなのは間違いない。それで行こう。シルク王子もそれでいいな? 何かあるなら、先に言ってくれ。時間が惜しい。」
フェイルはそれまでの説明を聞き、有無を言わさずその作戦で行くことを決定した。
「えっ!? いえ、はい。それでかまいません。」
シルクはフェイルの半ば強引な決断を聞き、一瞬だけ驚きの表情を表すが直ぐにそれに従う。
まさかそれだけの話し合いで重要な作戦を決めてしまうとは思わなかった。
しかし勇者であるフェイルが決めた事を、王子とはいえ、シルクが反論する事はできない。
シルクにとって勇者とは自分よりも格上の存在であり、更には今回のローズ救出に勇者の力が必要なのは明白。
故に自分が思い浮かんだ代案を飲み込み、それを了承した。
シルクの考えは、自分とゼンが勇者と分かれて南の穴に待機する事。
正直ゼンがいるならば、カリーの力がどの程度か正確に分からないが、それと同等の力があると信じている。
そのカリーが時間を稼げると言うならば、自分達にもそれが可能な筈だ。
だが同時に、敵の狙いが自分である可能性が高いのも事実。
自分としては、ローズが救えるならばいくらでも身代わりになっても構わないとは思うが、それを勇者パーティが良しとしないのは理解している。
であれば、自分が勇者と離れる訳にいかないのも納得せざるを得ない。
ただそれでも理解とは別に、戦力どころかお荷物として扱われているに、シルクの胸は情けなさと悔しさで一杯だった。
ーーだが、
「言いたい事があるなら言え! 中途半端な気持ちで一緒にいられる事が一番危険なんだよ。」
何と、突然フェイルがシルクの胸倉を掴み上げた。
「ちょっと! フェイル、相手はこの国の王子様よ。言葉には……」
「今そんなくだらない事を気にする時か、バーラ? それなら……。」
納得がいかない者がいる中、作戦を決行すれば後で必ず大きな歪みが生まれる。
そして、それが最悪の結末のトリガーになり得る事をフェイルは何度も経験してきた。
それならば時間は掛かったとしても、一度シルクを安全な場所まで戻し、3人で作戦を実行した方が何倍もマシである。
そう考えたフェイルは続く言葉でそれを告げようとするが、その前にシルクが口を開いた。
「大変失礼しました。私は、自分とゼンで南側の穴を警戒する方が良い策であると思ったのですが、それは安易な考えであるとわかっております。敵の狙いが自分である可能性が高い為に勇者様と離れる訳には行かない事も理解しているつもりです。……ただ、それでも不甲斐ない自分が悔しくて……。申し訳ありませんでした。」
自分がこのパーティから外されると悟ったシルクは、ありのまま胸にあった物を吐露する。
そしてフェイルは、その本心と思える言葉を聞いて掴んだ胸倉から手を離した。
「わかってるならいい。それと、悪いがお前達二人よりもカリーの方が断然強いし、信頼している。あまり勘違いするなよ? それがわかったなら急ぐぞ。奴らがいつまでもあそこにいるとは限らないからな。」
「はい!」
シルクがその言葉に力強く返事をすると、直ぐに全員が動き始めるのであった。
フェイルはそれまでの説明を聞き、有無を言わさずその作戦で行くことを決定した。
「えっ!? いえ、はい。それでかまいません。」
シルクはフェイルの半ば強引な決断を聞き、一瞬だけ驚きの表情を表すが直ぐにそれに従う。
まさかそれだけの話し合いで重要な作戦を決めてしまうとは思わなかった。
しかし勇者であるフェイルが決めた事を、王子とはいえ、シルクが反論する事はできない。
シルクにとって勇者とは自分よりも格上の存在であり、更には今回のローズ救出に勇者の力が必要なのは明白。
故に自分が思い浮かんだ代案を飲み込み、それを了承した。
シルクの考えは、自分とゼンが勇者と分かれて南の穴に待機する事。
正直ゼンがいるならば、カリーの力がどの程度か正確に分からないが、それと同等の力があると信じている。
そのカリーが時間を稼げると言うならば、自分達にもそれが可能な筈だ。
だが同時に、敵の狙いが自分である可能性が高いのも事実。
自分としては、ローズが救えるならばいくらでも身代わりになっても構わないとは思うが、それを勇者パーティが良しとしないのは理解している。
であれば、自分が勇者と離れる訳にいかないのも納得せざるを得ない。
ただそれでも理解とは別に、戦力どころかお荷物として扱われているに、シルクの胸は情けなさと悔しさで一杯だった。
ーーだが、
「言いたい事があるなら言え! 中途半端な気持ちで一緒にいられる事が一番危険なんだよ。」
何と、突然フェイルがシルクの胸倉を掴み上げた。
「ちょっと! フェイル、相手はこの国の王子様よ。言葉には……」
「今そんなくだらない事を気にする時か、バーラ? それなら……。」
納得がいかない者がいる中、作戦を決行すれば後で必ず大きな歪みが生まれる。
そして、それが最悪の結末のトリガーになり得る事をフェイルは何度も経験してきた。
それならば時間は掛かったとしても、一度シルクを安全な場所まで戻し、3人で作戦を実行した方が何倍もマシである。
そう考えたフェイルは続く言葉でそれを告げようとするが、その前にシルクが口を開いた。
「大変失礼しました。私は、自分とゼンで南側の穴を警戒する方が良い策であると思ったのですが、それは安易な考えであるとわかっております。敵の狙いが自分である可能性が高い為に勇者様と離れる訳には行かない事も理解しているつもりです。……ただ、それでも不甲斐ない自分が悔しくて……。申し訳ありませんでした。」
自分がこのパーティから外されると悟ったシルクは、ありのまま胸にあった物を吐露する。
そしてフェイルは、その本心と思える言葉を聞いて掴んだ胸倉から手を離した。
「わかってるならいい。それと、悪いがお前達二人よりもカリーの方が断然強いし、信頼している。あまり勘違いするなよ? それがわかったなら急ぐぞ。奴らがいつまでもあそこにいるとは限らないからな。」
「はい!」
シルクがその言葉に力強く返事をすると、直ぐに全員が動き始めるのであった。
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