48 / 113
第三章
2 過る不安
しおりを挟む
そうこう話している内に、森の木々の間からその先にある大きな禿山が見えてきた。
遠目からもわかるが、その山にはいくつかの大きな穴が開いている。
「見えたな……んで、どの穴が龍の巣穴なんだ?」
禿山に近づいたところで、フェイルが尋ねる。
「俺もよくわからないが、あの穴の全てを総称して龍の巣穴って言うらしい。ここからだとわかりづらいが、あそこに見える穴はどれも馬鹿でかいんだ。それこそ沢山の竜が住んでいそうな……巣穴というよりも龍の城って感じだけどな。」
「龍の城か、言い得て妙だな。それよりもカリー、そろそろ何か熱探知に引っかかってくるんじゃないか?」
「あぁ、さっきからやってるが今のところ人らしい熱は……あっ!? あった! 反応が見えたぞ! 二つある!」
「何っ!? それは本当か?」
「あぁ、マジだ。しかも二つとも反応が近い距離にいる……これは一緒にいると見ていいな。」
二つの熱源反応を感じたカリーは喜びが顔ににじみ出る。
もしかしたら別の場所に……それこそ違う大陸に魔法で飛ばれていたらお手上げだった。
これはフェイル達にとって、またとないチャンスである。
「なるほど。それは朗報だ。それなら二手に分かれずに済むな。それでどの穴の中にいるんだ?」
「すまねぇ。そこまではわからねぇ。だが前と変わっていなければ、あの穴は中で全て繋がっている。つまりどこから入っても同じなはずだ。それとこれも変わっていなければの話だが、大穴は全部で五カ所ある。」
カリーは何度かこの巣穴の探索を行った事があるのだが、入ってみると中はどこも穴と同じ広さの通路となっており、所々小さな脇道もあるが大きな通路を通って行けばどの穴からも出る事ができた。
その情報に少しだけフェイルは顔を顰める(しかめる)。
「そいつはある意味最悪だな。つまり、どこから入っても問題ないが、敵もどこからでも逃げられるって事か。参ったな、それだと挟撃は難しそうだ。」
「あぁ、それがここの厄介なところなんだ。本当に嫌な場所に逃げてくれたもんだぜ。穴を全部塞ぐ訳にはいかないしなぁ……。」
カリーがそうぼやくと、その呟きにフェイルは閃いた。
選択肢が多いなら減らせばいい!
「ん? ……いや、まてよ? それはアリかもしれないぞ。中に入って探すよりも、バーラの魔法で一つの穴以外全部潰すんだ。そうすれば敵の逃げ道を塞ぐことができる。」
穴の中で崩落の危険はあるが、それだけ広い穴なら逃げる事は難しくないだろう。
しかし、そのフェイルの発言にシルクが異議を唱えた。
遠目からもわかるが、その山にはいくつかの大きな穴が開いている。
「見えたな……んで、どの穴が龍の巣穴なんだ?」
禿山に近づいたところで、フェイルが尋ねる。
「俺もよくわからないが、あの穴の全てを総称して龍の巣穴って言うらしい。ここからだとわかりづらいが、あそこに見える穴はどれも馬鹿でかいんだ。それこそ沢山の竜が住んでいそうな……巣穴というよりも龍の城って感じだけどな。」
「龍の城か、言い得て妙だな。それよりもカリー、そろそろ何か熱探知に引っかかってくるんじゃないか?」
「あぁ、さっきからやってるが今のところ人らしい熱は……あっ!? あった! 反応が見えたぞ! 二つある!」
「何っ!? それは本当か?」
「あぁ、マジだ。しかも二つとも反応が近い距離にいる……これは一緒にいると見ていいな。」
二つの熱源反応を感じたカリーは喜びが顔ににじみ出る。
もしかしたら別の場所に……それこそ違う大陸に魔法で飛ばれていたらお手上げだった。
これはフェイル達にとって、またとないチャンスである。
「なるほど。それは朗報だ。それなら二手に分かれずに済むな。それでどの穴の中にいるんだ?」
「すまねぇ。そこまではわからねぇ。だが前と変わっていなければ、あの穴は中で全て繋がっている。つまりどこから入っても同じなはずだ。それとこれも変わっていなければの話だが、大穴は全部で五カ所ある。」
カリーは何度かこの巣穴の探索を行った事があるのだが、入ってみると中はどこも穴と同じ広さの通路となっており、所々小さな脇道もあるが大きな通路を通って行けばどの穴からも出る事ができた。
その情報に少しだけフェイルは顔を顰める(しかめる)。
「そいつはある意味最悪だな。つまり、どこから入っても問題ないが、敵もどこからでも逃げられるって事か。参ったな、それだと挟撃は難しそうだ。」
「あぁ、それがここの厄介なところなんだ。本当に嫌な場所に逃げてくれたもんだぜ。穴を全部塞ぐ訳にはいかないしなぁ……。」
カリーがそうぼやくと、その呟きにフェイルは閃いた。
選択肢が多いなら減らせばいい!
「ん? ……いや、まてよ? それはアリかもしれないぞ。中に入って探すよりも、バーラの魔法で一つの穴以外全部潰すんだ。そうすれば敵の逃げ道を塞ぐことができる。」
穴の中で崩落の危険はあるが、それだけ広い穴なら逃げる事は難しくないだろう。
しかし、そのフェイルの発言にシルクが異議を唱えた。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。
前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。
元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。
しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。
教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。
また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。
その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。
短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
【コミカライズ決定】無敵のシスコン三兄弟は、断罪を力技で回避する。
櫻野くるみ
恋愛
地味な侯爵令嬢のエミリーには、「麗しのシスコン三兄弟」と呼ばれる兄たちと弟がいる。
才能溢れる彼らがエミリーを溺愛していることは有名なのにも関わらず、エミリーのポンコツ婚約者は夜会で婚約破棄と断罪を目論む……。
敵にもならないポンコツな婚約者相手に、力技であっという間に断罪を回避した上、断罪返しまで行い、重すぎる溺愛を見せつける三兄弟のお話。
新たな婚約者候補も…。
ざまぁは少しだけです。
短編
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります
樹結理(きゆり)
恋愛
突然異世界に召還された平々凡々な女子大生。
勇者になれと言われましたが、嫌なので引きこもらせていただきます。
平凡な女子大生で毎日無気力に過ごしていたけど、バイトの帰り道に突然異世界に召還されちゃった!召還された世界は魔法にドラゴンに、漫画やアニメの世界じゃあるまいし!
影のあるイケメンに助けられ、もふもふ銀狼は超絶イケメンで甘々だし、イケメン王子たちにはからかわれるし。
色んなイケメンに囲まれながら頑張って魔法覚えて戦う、無気力女子大生の成長記録。守りたい大事な人たちが出来るまでのお話。
前半恋愛面少なめです。後半糖度高めになっていきます。
※この作品は小説家になろうで完結済みです
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる