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第二章
11 ゼンの実力
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「く……くはははは! 残念だったなぁ、ゼン。お前たちの仲間は、今頃森の中で魔物と戦っているだろうよ。つまり援軍は来ねぇ。少ない人数で来たのが失敗だったなぁ。流石はズーク様だ。」
その様子を見ていたラギリが笑いながらゼンにいい放つ。
その言葉にシルクが反応した。
「なんだとっ!? 魔物は周囲にいなかったはずだ。まさか……お前……。魔族と組んでいるのか? だとすれば、貧民街が襲われたのも!?」
シルクは気づく。
これまでの不可解な流れが一本の線で繋がった。
国の中で突然魔物が現れた事も、今、魔物が現れたのもラギリ……いやズークの仕業であったと。
(くそっ!! 完全にズークにやられた。やはり拷問で全てを吐かせるべきだったか……。だが今はもう遅い。とにかくローズを助けねば!)
「ご名答。お前はズーク様の手の上で踊らされていただけ。まぁ冥途の土産ってところだな、今の話は。ここにいるのは俺の部下達300人、そしてその周りは俺の命令で動いてくれるスケルトン達で溢れている。お前は既に詰んでいるんだよ、シルク王子。だから、さっさとくたばりな。」
森の中に魔物がいなかったのは、全て魔王軍幹部の仕業であった。
そして、シルクとは別に動いているカリーが熱探知で魔物を見つけられなかったのも、地中に体温の無いスケルトンが潜んでいたからである。
しかしシルクは絶体絶命のピンチでありながらも、焦る事はなかった。
なぜならば、シルク自身の剣の腕はロイヤルナイツの中に入っても上位に食い込むだけの実力がある。
そして何よりも、その自分100人よりも強いゼンの強さを信頼していた。
盗賊の100人や200人程度ならば単独でも切り抜けられるだろう。
だが、ゼンの判断は違った。現状を鑑みれば(かんがみれば)、ここは一時撤退する場面。
故に、シルクに進言する。
「王子っ!? ここは一旦引きましょう! 奴に交渉をするつもりはなかった。そしてローズ姫を殺す事もない。それならば、戻ってズークを捕縛するのが優先です。」
ゼンの判断は正しい。
今、この局面で無理矢理ローズを救出するよりも、事の元凶を断つのが最優先だ。
しかし、シルクの考えは違う。
シルクは気づいていた。
これは単にズークの反乱なんかではない。
魔王軍の侵略の一部であると。
それすなわち、早急に国から魔王軍の息がかかる者達を見つけなければならない事。
また、元凶となっている魔王軍の者を探し出す事。
つまり、ズークを殺したところで第二、第三のズークが現れるだけ。
さらに言えば、今の段階でズークを殺せば、ローズが生かされている理由が無くなる。
であるならば、まず優先すべきはローズの身柄の確保。
全てはそれからだ。
シルクに引くつもりはない!
「すまない。ゼン。ローズの救出を最優先とする事に変わりはない。俺を……信じてくれるか?」
「王子……。わかりました。このゼン、命を懸ける事はに変わりはありませぬ。それでは行きましょうぞ! 【真空回転斬り!!】」
ゼンは何も言わず、シルクの目を見てそれに従った。
そして同時にこちらに向かって襲い掛かってくる門番達に気付き、魔法戦士の技を放つ。
「がっ!!」
「ぎゃあああああ!」
「あびゃしーーーー!!」
一瞬で6人の盗賊が胴を真っ二つすると、盗賊達は断末魔を叫んで即死した。
「ほほぉ、流石は王国最強。しかし多勢に無勢。俺は高みの見物でもさせてもらうぜ。精々頑張るんだな。」
それを見ていたラギリはその場を離れる。
「待て!! 逃げるな、ラギリ!!」
シルクは逃げるラギリを追って門の中に入った。
ラギリが向かう方向、それすなわちローズの居場所だと確信したからである。
そしてそんなシルクの前に立ちふさがるは数十人からなる盗賊たち。
盗賊達は自分達が絶対的優勢と考え、全員がニヤニヤしながら走るシルクの前を塞ぐ。
「行かせねぇよ、おぼっちゃん。」
「どけ!! どかなければ斬る!!」
「斬る? だってよ、ぐはははは!!」
盗賊達が笑っていると、上空から無数の矢がシルクに向かって飛んできた。
それに反応したシルクは矢を何とかよけながらも、避けきれない矢は盾で防ぐ。
「くそっ!! やっかいだな。だが奴の向かった方向はわかった。ゼン! ここを切り抜けるぞ!」
「ははっ!! それでは私が道を開きます故、王子は上空の矢だけに注意してください。我が王国最強の剣技をくらうがいい。【マグマグ】【いなづま突き】」
ゼンは素早く二つの技を放った。
一つは矢が飛んできた方。そこには地中から上りたったマグマが襲い掛かる。
そして前方を固めていた盗賊達は、技と同時に突撃してきたゼンに貫かれ、その余波がその周りにいた盗賊達を弾き飛ばした。
王国最強の戦士。
その実力は伊達ではない。
ゼンの攻撃によって前方に道ができると、シルクは一直線にそこを突破していく。
しかしそれでも、際限なく周囲から現れる盗賊達。
ゼンが圧倒的に強いとはいえ、流石に300人ともなると途方もない人数差であり、容易には進めない。
だがそれでもシルク達は、ローズ救出の為に命を懸け、周囲の盗賊達を蹴散らしながら進むのであった。
その様子を見ていたラギリが笑いながらゼンにいい放つ。
その言葉にシルクが反応した。
「なんだとっ!? 魔物は周囲にいなかったはずだ。まさか……お前……。魔族と組んでいるのか? だとすれば、貧民街が襲われたのも!?」
シルクは気づく。
これまでの不可解な流れが一本の線で繋がった。
国の中で突然魔物が現れた事も、今、魔物が現れたのもラギリ……いやズークの仕業であったと。
(くそっ!! 完全にズークにやられた。やはり拷問で全てを吐かせるべきだったか……。だが今はもう遅い。とにかくローズを助けねば!)
「ご名答。お前はズーク様の手の上で踊らされていただけ。まぁ冥途の土産ってところだな、今の話は。ここにいるのは俺の部下達300人、そしてその周りは俺の命令で動いてくれるスケルトン達で溢れている。お前は既に詰んでいるんだよ、シルク王子。だから、さっさとくたばりな。」
森の中に魔物がいなかったのは、全て魔王軍幹部の仕業であった。
そして、シルクとは別に動いているカリーが熱探知で魔物を見つけられなかったのも、地中に体温の無いスケルトンが潜んでいたからである。
しかしシルクは絶体絶命のピンチでありながらも、焦る事はなかった。
なぜならば、シルク自身の剣の腕はロイヤルナイツの中に入っても上位に食い込むだけの実力がある。
そして何よりも、その自分100人よりも強いゼンの強さを信頼していた。
盗賊の100人や200人程度ならば単独でも切り抜けられるだろう。
だが、ゼンの判断は違った。現状を鑑みれば(かんがみれば)、ここは一時撤退する場面。
故に、シルクに進言する。
「王子っ!? ここは一旦引きましょう! 奴に交渉をするつもりはなかった。そしてローズ姫を殺す事もない。それならば、戻ってズークを捕縛するのが優先です。」
ゼンの判断は正しい。
今、この局面で無理矢理ローズを救出するよりも、事の元凶を断つのが最優先だ。
しかし、シルクの考えは違う。
シルクは気づいていた。
これは単にズークの反乱なんかではない。
魔王軍の侵略の一部であると。
それすなわち、早急に国から魔王軍の息がかかる者達を見つけなければならない事。
また、元凶となっている魔王軍の者を探し出す事。
つまり、ズークを殺したところで第二、第三のズークが現れるだけ。
さらに言えば、今の段階でズークを殺せば、ローズが生かされている理由が無くなる。
であるならば、まず優先すべきはローズの身柄の確保。
全てはそれからだ。
シルクに引くつもりはない!
「すまない。ゼン。ローズの救出を最優先とする事に変わりはない。俺を……信じてくれるか?」
「王子……。わかりました。このゼン、命を懸ける事はに変わりはありませぬ。それでは行きましょうぞ! 【真空回転斬り!!】」
ゼンは何も言わず、シルクの目を見てそれに従った。
そして同時にこちらに向かって襲い掛かってくる門番達に気付き、魔法戦士の技を放つ。
「がっ!!」
「ぎゃあああああ!」
「あびゃしーーーー!!」
一瞬で6人の盗賊が胴を真っ二つすると、盗賊達は断末魔を叫んで即死した。
「ほほぉ、流石は王国最強。しかし多勢に無勢。俺は高みの見物でもさせてもらうぜ。精々頑張るんだな。」
それを見ていたラギリはその場を離れる。
「待て!! 逃げるな、ラギリ!!」
シルクは逃げるラギリを追って門の中に入った。
ラギリが向かう方向、それすなわちローズの居場所だと確信したからである。
そしてそんなシルクの前に立ちふさがるは数十人からなる盗賊たち。
盗賊達は自分達が絶対的優勢と考え、全員がニヤニヤしながら走るシルクの前を塞ぐ。
「行かせねぇよ、おぼっちゃん。」
「どけ!! どかなければ斬る!!」
「斬る? だってよ、ぐはははは!!」
盗賊達が笑っていると、上空から無数の矢がシルクに向かって飛んできた。
それに反応したシルクは矢を何とかよけながらも、避けきれない矢は盾で防ぐ。
「くそっ!! やっかいだな。だが奴の向かった方向はわかった。ゼン! ここを切り抜けるぞ!」
「ははっ!! それでは私が道を開きます故、王子は上空の矢だけに注意してください。我が王国最強の剣技をくらうがいい。【マグマグ】【いなづま突き】」
ゼンは素早く二つの技を放った。
一つは矢が飛んできた方。そこには地中から上りたったマグマが襲い掛かる。
そして前方を固めていた盗賊達は、技と同時に突撃してきたゼンに貫かれ、その余波がその周りにいた盗賊達を弾き飛ばした。
王国最強の戦士。
その実力は伊達ではない。
ゼンの攻撃によって前方に道ができると、シルクは一直線にそこを突破していく。
しかしそれでも、際限なく周囲から現れる盗賊達。
ゼンが圧倒的に強いとはいえ、流石に300人ともなると途方もない人数差であり、容易には進めない。
だがそれでもシルク達は、ローズ救出の為に命を懸け、周囲の盗賊達を蹴散らしながら進むのであった。
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