34 / 113
第二章
10 嵌められた王子様
しおりを挟む
シルクとゼンが二人で門番が立っている場所まで歩いていくと、他の騎士達は木々に隠れて待機していた。
今回の目的は、ローズの解放であり基本的には戦闘がメインではない。
あくまで最初は交渉が前提だ。
「ラギリ!! 私、自ら来てやったぞ! いるのはわかっている、出てこい!!」
シルクは門番に近づくと、それらを無視して大声で叫ぶ。
しかし門番達はシルク達に気付いてもニヤニヤと笑って見ているだけで、まともに取り合う雰囲気がない。
それ故にシルクは門の中にいるであろう、ラギリに向かって叫んだのである。
「おいおい、俺達は無視ってかぁ?」
「この場所でラギリ様をいきなり呼びつけにするなんて、随分立場を弁えないおぼっちゃんだなぁ。」
「門を開けてほしいでちゅかぁ? 欲しければお金を持ってくるんでちゅよぉ。」
門番達は舐めた態度でシルクを挑発する。
しかし、シルクはその言葉で確信した。
(やはりラギリはここにいる。そして命令を無視して城に戻らないという事は、ローズも必ず……。)
「貴様らっ! 王子に向かってなんだその態度は!」
そんな事を考えているシルクの傍ら、隣にいるゼンは頭に血管が浮かび上がる程激怒していた。
「はっ? 知らねぇなぁ。その坊ちゃんが王子だなんてなぁ。まぁ例え王子であっても別に俺らはビビりゃしねぇよ。ここは俺達の領域だ。お前の方こそ、そこんところ弁えておけや。」
ゼンが門番に怒りながら詰め寄るも、門番達はビビることはなく強気な態度で応じ、門を開けるつもりはないらしい。
どうしたものかとシルクが考えたその時、突然門が内側から開くと奥から一人の姿が現れる。
そこにいたのはーーラギリ本人だった。
「これはこれは、遠路はるばるこんな所までお越しいただきありがとうございます。王子。」
「ラギリっ!! 貴様!!」
現れたラギリを目にした瞬間、ゼンは怒りの声を上げる。
今にも突撃しそうなゼンであったが、それを止めたのはシルクだった。
「待て、ゼン。話合いが先だ。」
「流石は王子。立場をよくわかってらっしゃる。安心してください、ローズ様は無事でございますよ……今のところはね。それよりこんな所で立ち話も何ですし、中にお入り下さい。」
ラギリは落ち着いた様子でシルク達を門の中に引き入れようとした。
その態度は門番達と違い、城でシルクと相対している時と変わらない。
だが、シルクはそれを断る。
「いや、まずはローズの無事を確認させてほしい。門の中に入るのはそれからだ。」
「随分と慎重ですな。まぁ、それは当然と言えば当然でございますね。しかし、困りました。ローズ様は現在お疲れであり、ここまで歩かせるのは難しいのです。その為、ローズ様のところまで案内するつもりだったのですが。」
ふてぶてしくも、明らかに嘘と分かる言葉をはくラギリ。
当然、シルクがそれ信じることはない。
「そんな嘘が通じるはずがないとお前もわかっているだろう。安心しろ、交渉には応じる。しかし、それよりも先にローズに会わせてくれ。」
シルクがそう言うと、突然豹変したかのように態度が変わった。
「めんどくせぇ……。あぁ、めんどくせぇなぁ……。正直に言うわ。お前さ、死んでくれよ。ローズ姫なんてどうでもいいんだわ。欲しいのはお前の命。だが安心しろ。姫は生きている……がお前が死んだ後はズーク様の慰み者となるがなぁ!! くははははっ!! 野郎共、こいつら二人を殺せ!」
その言葉と態度を見て、シルクとゼンは剣を抜く。
交渉は決裂……否! 最初から相手にそのつもりはなく、自分を殺すための罠だと気付いた。
「遂に本性を現わしたな、ラギリ! ゼン、仕方ない。このまま門に突入してローズを救うぞ。」
「ははっ! この命に懸けましてもシルク王子とローズ姫はお守りします。 ピュルゥゥゥゥ!!」
ゼンは返事をすると同時に笛を吹いた。
これは森に潜んでいる仲間達へ伝える、決戦の合図である。
この音が響いた瞬間、全員で突撃する予定……であったが飛び出してくる仲間は一人もいなかった。
今回の目的は、ローズの解放であり基本的には戦闘がメインではない。
あくまで最初は交渉が前提だ。
「ラギリ!! 私、自ら来てやったぞ! いるのはわかっている、出てこい!!」
シルクは門番に近づくと、それらを無視して大声で叫ぶ。
しかし門番達はシルク達に気付いてもニヤニヤと笑って見ているだけで、まともに取り合う雰囲気がない。
それ故にシルクは門の中にいるであろう、ラギリに向かって叫んだのである。
「おいおい、俺達は無視ってかぁ?」
「この場所でラギリ様をいきなり呼びつけにするなんて、随分立場を弁えないおぼっちゃんだなぁ。」
「門を開けてほしいでちゅかぁ? 欲しければお金を持ってくるんでちゅよぉ。」
門番達は舐めた態度でシルクを挑発する。
しかし、シルクはその言葉で確信した。
(やはりラギリはここにいる。そして命令を無視して城に戻らないという事は、ローズも必ず……。)
「貴様らっ! 王子に向かってなんだその態度は!」
そんな事を考えているシルクの傍ら、隣にいるゼンは頭に血管が浮かび上がる程激怒していた。
「はっ? 知らねぇなぁ。その坊ちゃんが王子だなんてなぁ。まぁ例え王子であっても別に俺らはビビりゃしねぇよ。ここは俺達の領域だ。お前の方こそ、そこんところ弁えておけや。」
ゼンが門番に怒りながら詰め寄るも、門番達はビビることはなく強気な態度で応じ、門を開けるつもりはないらしい。
どうしたものかとシルクが考えたその時、突然門が内側から開くと奥から一人の姿が現れる。
そこにいたのはーーラギリ本人だった。
「これはこれは、遠路はるばるこんな所までお越しいただきありがとうございます。王子。」
「ラギリっ!! 貴様!!」
現れたラギリを目にした瞬間、ゼンは怒りの声を上げる。
今にも突撃しそうなゼンであったが、それを止めたのはシルクだった。
「待て、ゼン。話合いが先だ。」
「流石は王子。立場をよくわかってらっしゃる。安心してください、ローズ様は無事でございますよ……今のところはね。それよりこんな所で立ち話も何ですし、中にお入り下さい。」
ラギリは落ち着いた様子でシルク達を門の中に引き入れようとした。
その態度は門番達と違い、城でシルクと相対している時と変わらない。
だが、シルクはそれを断る。
「いや、まずはローズの無事を確認させてほしい。門の中に入るのはそれからだ。」
「随分と慎重ですな。まぁ、それは当然と言えば当然でございますね。しかし、困りました。ローズ様は現在お疲れであり、ここまで歩かせるのは難しいのです。その為、ローズ様のところまで案内するつもりだったのですが。」
ふてぶてしくも、明らかに嘘と分かる言葉をはくラギリ。
当然、シルクがそれ信じることはない。
「そんな嘘が通じるはずがないとお前もわかっているだろう。安心しろ、交渉には応じる。しかし、それよりも先にローズに会わせてくれ。」
シルクがそう言うと、突然豹変したかのように態度が変わった。
「めんどくせぇ……。あぁ、めんどくせぇなぁ……。正直に言うわ。お前さ、死んでくれよ。ローズ姫なんてどうでもいいんだわ。欲しいのはお前の命。だが安心しろ。姫は生きている……がお前が死んだ後はズーク様の慰み者となるがなぁ!! くははははっ!! 野郎共、こいつら二人を殺せ!」
その言葉と態度を見て、シルクとゼンは剣を抜く。
交渉は決裂……否! 最初から相手にそのつもりはなく、自分を殺すための罠だと気付いた。
「遂に本性を現わしたな、ラギリ! ゼン、仕方ない。このまま門に突入してローズを救うぞ。」
「ははっ! この命に懸けましてもシルク王子とローズ姫はお守りします。 ピュルゥゥゥゥ!!」
ゼンは返事をすると同時に笛を吹いた。
これは森に潜んでいる仲間達へ伝える、決戦の合図である。
この音が響いた瞬間、全員で突撃する予定……であったが飛び出してくる仲間は一人もいなかった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
悪役令嬢の残した毒が回る時
水月 潮
恋愛
その日、一人の公爵令嬢が処刑された。
処刑されたのはエレオノール・ブロワ公爵令嬢。
彼女はシモン王太子殿下の婚約者だ。
エレオノールの処刑後、様々なものが動き出す。
※設定は緩いです。物語として見て下さい
※ストーリー上、処刑が出てくるので苦手な方は閲覧注意
(血飛沫や身体切断などの残虐な描写は一切なしです)
※ストーリーの矛盾点が発生するかもしれませんが、多めに見て下さい
*HOTランキング4位(2021.9.13)
読んで下さった方ありがとうございます(*´ ˘ `*)♡
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
未亡人となった側妃は、故郷に戻ることにした
星ふくろう
恋愛
カトリーナは帝国と王国の同盟により、先代国王の側室として王国にやって来た。
帝国皇女は正式な結婚式を挙げる前に夫を失ってしまう。
その後、義理の息子になる第二王子の正妃として命じられたが、王子は彼女を嫌い浮気相手を溺愛する。
数度の恥知らずな婚約破棄を言い渡された時、カトリーナは帝国に戻ろうと決めたのだった。
他の投稿サイトでも掲載しています。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
(完結)夫と姉(継母の連れ子)に罪を着せられた侯爵令嬢の二度目の人生ー『復讐』よりも『長生き』したい!
青空一夏
恋愛
私はカッシング侯爵家のアナスターシア。カッシング侯爵家の跡継ぎ娘であり、お母様の実家マッキンタイヤー公爵家の跡継ぎでもある立場なの。なんでって? 亡きお母様のお兄様(マッキンタイヤー公爵)が将軍職をまっとうするため、独身を貫いてきたからよ。ちなみにマッキンタイヤー公爵の初代はユーフェミア王女で聖女様でもあったのよ。私はその血も引いているわ。
お母様は私が5歳の頃に病で亡くなったわ。でも、まもなくお父様はサリナお母様と再婚したの。最初は嫌な気持ちがしたけれど、サリナお母様はとても優しかったからすぐに仲良くなれた。サリナお母様には娘がいて、私より年上だった。ローズリンお姉様のことよ。ローズリンお姉様も良い方で、私はとても幸せだった。
チェルシー王妃主催のお茶会で知り合ったハーランド第二王子殿下も優しくて、私を甘やかしてくれる味方なの。でも、お母様のお兄様であるマッキンタイヤー公爵は厳しくて、会うたびにお説教を言ってくるから嫌い。なるべく、伯父様(マッキンタイヤー公爵)に関わらないようにしていたいわ。そうすれば、私は幸せに気楽に生きることができる。ところが・・・・・・
この物語は夫となったハーランド第二王子の裏切りとローズリンの嘘で罪を着せられたアナスターシアが、毒杯を飲ませられるところで奇跡を起こし、二度目の人生をやり直すお話しです。アナスターシアが積極的に復讐していくお話ではなく、ハーランド第二王子やローズリンが自業自得で自滅していくお話しです。アナスターシアの恋もちりばめた恋愛小説になっています。
※この物語は現実ではない異世界のお話しですから、歴史的や時代背景的におかしな部分が多々あると思いますので、ご了承ください。誤字・脱字多いかもしれませんが、脳内で変換していただけるか、教えていただけると嬉しいです💦
聖女や聖獣などのファンタジー要素あり。
※完結保証。すでに執筆が終わっておりますので、途中で連載がとまることはありません。安心してお読みくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる