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第二章
4 気高きクロ
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「クロ!! 姉さん! 早く治癒の魔法をかけてくれ!」
カリーがそう叫ぶと、クロはふらつきながらも立ち上がり、カリーから逃げるように歩き始める。
「待て! クロ! 俺だよ! カリーだよ!!」
カリーはクロが自分の事を忘れて、恐怖から逃げようとしていると思った。
しかしクロはカリーの声に応えることなく、地面に落ちていた何かを口に咥えると、そのまま振り向かずに走っていってしまう。
どう考えてもクロは重傷だ。
歩く事も難しいはず。
どういう訳か、さっきまで瀕死だってクロが突然走り出している。
それに焦るカリー。
このままだとクロがヤバイ。
強引にでも捕まえて……そう思った矢先だった。
カリーはクロが口に咥えているものが何か気付いた。
それは、昔カリーがローズにプレゼントした薔薇の髪留め。
何かがカリーの頭に過る。
もしかしたら、クロはローズの場所を自分達に伝えようとしているのではないのか?
そう思った瞬間、クロは突然倒れてしまった。
「クロ!! 姉さん! 早く! 早く回復魔法を!!」
「わかったわ!! ハイヒーリング!」
「クロ! クロ! クロ!! 目を開けてくれよ!!」
カリーは倒れたクロを抱きかかえると、バンバーラが回復魔法を唱えた……が傷が癒えることはなかった。
クロの命は既にこときれていたのである。
「クロぉぉぉーー!!」
クロは出会った頃から不思議な猫だった。
カリーはクロが森の中で魔物に襲われていたところを助け、それ以降一緒に過ごす事になった。
一緒に暮らし始めると、クロはどこに居てもカリーの近くにきて一緒にいる。
そして、たまにカリーが何かを話しかけると、クロは相槌を打つかのように「ニャ―」と鳴いて答えていた。
それはまるで、話せないけど自分の言葉がわかるのではないかとカリーが疑う程、どこか人間臭さを感じる。
カリーが旅立ってからは、ローズがクロの面倒を見ていた。
ローズは、毎日同じ時間にクロへご飯をやりに貧民街に訪れる。
カリーがいなくなって寂しい者同士だからか、クロはいつもローズの愚痴を聞いては「そうだね。」といっているかのように「ニャ―」と相槌を打っては、ローズの話を聞いていた。
クロにとってカリーは親のような存在で、ローズは姉妹のような存在だったのかもしれない。
そして今回、ローズが炎の舞う貧民街に戻っていったのを見て、クロはそれを追いかけた。
その結果、ローズが連れていかれるのを目撃し、その後ろを追っている途中で倒れた瓦礫の下敷きになってしまったのである。
もうすぐ自分は死ぬ……
そうクロが悟った瞬間、何故か体にかかる重さが消えていき、視界に光が戻った。
すると、そこにはずっと会いたかった人(カリー)の顔が映る。
クロは嬉しくて抱き着きたく思うも、体が上手く動かない。
それと同時につれ攫われたローズの事を思い出す。
クロは視線を移すと、ローズが落とした髪留めを見つけた。
それを見て、クロは考える。
自分は人の言葉を話すことはできない。でも、あれがあれば伝えられるかもしれない。
そう思った瞬間、クロの体に力がみなぎった。
すると動かないはずの手足が動き始める。
クロに起きた奇跡。
それは、大切な者を助ける為に命を燃やして得た最後の力だった。
届いて、僕の想い……
そう思うやクロは走りだし、髪留めを咥えるとローズが攫われた方角へ向かって走っていく。
自分の命の灯が消えるまで……クロは走り続けた。
しかしその力は長くは続かず、その途中で糸が切れた人形のように倒れてしまう。
だが、その想いは不思議とカリーには伝わっていた。
カリーは亡くなったクロを抱きしめていると、何故かクロの想いが胸の中を駆け抜けていくのを感じる。
「クロ……そうか……お前……。ありがとう。クロ。そして助けられなくてごめん。」
カリーの目から大粒の涙が一粒一粒零れ落ちていった。
だが、この場でいつまでも悲しんではいられない。
クロの思いを無駄にしない為にも、ローズを助けに行かなければいけない。
泣いて悲しむのは後だ、今はローズを助ける。
亡くなったクロを抱きしめながらカリーは決意すると、隣にいたバンバーラもまた、亡くなったクロ見て涙を流していた。
「ごめんなさい、クロちゃん……本当にごめんね。」
「違うよ姉さん。クロは……クロは戦ってくれたんだ。頭がおかしくなったとは思わないで欲しい。今、俺の中にクロの記憶の一部が入ってきたんだ。どうやら、ローズはラギルにつれ攫われたらしい。そしてその方角は……クロが走った方、つまりあっちだ。」
いきなり突拍子もない事を話し始めるカリー。
普通なら正気を疑うような事だが、フェイルもバンバーラも無言で頷くとそれを信じた。
「そうか……。わかった。じゃあカリー、早く助けに行こうか……といいたいところだけど、せめてその子を簡易的にでも弔ってからにしよう。」
「そうね……。クロちゃん、ありがとう。フェイルが言う通り、せめてそれだけはしてあげよ。」
「あぁ、そうだな。ローズのいる方角は覚えた。クロは……この先にある俺の家の下に埋めるよ。戻ってきたら、もっとちゃんと弔ってやるからな……今まで……ありがとう……クロ……。」
カリーはあふれ出る涙をのみ込みながらもクロを抱きしめ、一緒に暮らした我が家の方へと向かった。
そして、悲しみと一緒に大切な家族であるクロを土に埋めるのであった。
※参考 3年の間で職業が変わってます。
フェイル 勇者
バンバーラ 魔法使い → 賢者
カリー 戦士 → バトルロード
カリーがそう叫ぶと、クロはふらつきながらも立ち上がり、カリーから逃げるように歩き始める。
「待て! クロ! 俺だよ! カリーだよ!!」
カリーはクロが自分の事を忘れて、恐怖から逃げようとしていると思った。
しかしクロはカリーの声に応えることなく、地面に落ちていた何かを口に咥えると、そのまま振り向かずに走っていってしまう。
どう考えてもクロは重傷だ。
歩く事も難しいはず。
どういう訳か、さっきまで瀕死だってクロが突然走り出している。
それに焦るカリー。
このままだとクロがヤバイ。
強引にでも捕まえて……そう思った矢先だった。
カリーはクロが口に咥えているものが何か気付いた。
それは、昔カリーがローズにプレゼントした薔薇の髪留め。
何かがカリーの頭に過る。
もしかしたら、クロはローズの場所を自分達に伝えようとしているのではないのか?
そう思った瞬間、クロは突然倒れてしまった。
「クロ!! 姉さん! 早く! 早く回復魔法を!!」
「わかったわ!! ハイヒーリング!」
「クロ! クロ! クロ!! 目を開けてくれよ!!」
カリーは倒れたクロを抱きかかえると、バンバーラが回復魔法を唱えた……が傷が癒えることはなかった。
クロの命は既にこときれていたのである。
「クロぉぉぉーー!!」
クロは出会った頃から不思議な猫だった。
カリーはクロが森の中で魔物に襲われていたところを助け、それ以降一緒に過ごす事になった。
一緒に暮らし始めると、クロはどこに居てもカリーの近くにきて一緒にいる。
そして、たまにカリーが何かを話しかけると、クロは相槌を打つかのように「ニャ―」と鳴いて答えていた。
それはまるで、話せないけど自分の言葉がわかるのではないかとカリーが疑う程、どこか人間臭さを感じる。
カリーが旅立ってからは、ローズがクロの面倒を見ていた。
ローズは、毎日同じ時間にクロへご飯をやりに貧民街に訪れる。
カリーがいなくなって寂しい者同士だからか、クロはいつもローズの愚痴を聞いては「そうだね。」といっているかのように「ニャ―」と相槌を打っては、ローズの話を聞いていた。
クロにとってカリーは親のような存在で、ローズは姉妹のような存在だったのかもしれない。
そして今回、ローズが炎の舞う貧民街に戻っていったのを見て、クロはそれを追いかけた。
その結果、ローズが連れていかれるのを目撃し、その後ろを追っている途中で倒れた瓦礫の下敷きになってしまったのである。
もうすぐ自分は死ぬ……
そうクロが悟った瞬間、何故か体にかかる重さが消えていき、視界に光が戻った。
すると、そこにはずっと会いたかった人(カリー)の顔が映る。
クロは嬉しくて抱き着きたく思うも、体が上手く動かない。
それと同時につれ攫われたローズの事を思い出す。
クロは視線を移すと、ローズが落とした髪留めを見つけた。
それを見て、クロは考える。
自分は人の言葉を話すことはできない。でも、あれがあれば伝えられるかもしれない。
そう思った瞬間、クロの体に力がみなぎった。
すると動かないはずの手足が動き始める。
クロに起きた奇跡。
それは、大切な者を助ける為に命を燃やして得た最後の力だった。
届いて、僕の想い……
そう思うやクロは走りだし、髪留めを咥えるとローズが攫われた方角へ向かって走っていく。
自分の命の灯が消えるまで……クロは走り続けた。
しかしその力は長くは続かず、その途中で糸が切れた人形のように倒れてしまう。
だが、その想いは不思議とカリーには伝わっていた。
カリーは亡くなったクロを抱きしめていると、何故かクロの想いが胸の中を駆け抜けていくのを感じる。
「クロ……そうか……お前……。ありがとう。クロ。そして助けられなくてごめん。」
カリーの目から大粒の涙が一粒一粒零れ落ちていった。
だが、この場でいつまでも悲しんではいられない。
クロの思いを無駄にしない為にも、ローズを助けに行かなければいけない。
泣いて悲しむのは後だ、今はローズを助ける。
亡くなったクロを抱きしめながらカリーは決意すると、隣にいたバンバーラもまた、亡くなったクロ見て涙を流していた。
「ごめんなさい、クロちゃん……本当にごめんね。」
「違うよ姉さん。クロは……クロは戦ってくれたんだ。頭がおかしくなったとは思わないで欲しい。今、俺の中にクロの記憶の一部が入ってきたんだ。どうやら、ローズはラギルにつれ攫われたらしい。そしてその方角は……クロが走った方、つまりあっちだ。」
いきなり突拍子もない事を話し始めるカリー。
普通なら正気を疑うような事だが、フェイルもバンバーラも無言で頷くとそれを信じた。
「そうか……。わかった。じゃあカリー、早く助けに行こうか……といいたいところだけど、せめてその子を簡易的にでも弔ってからにしよう。」
「そうね……。クロちゃん、ありがとう。フェイルが言う通り、せめてそれだけはしてあげよ。」
「あぁ、そうだな。ローズのいる方角は覚えた。クロは……この先にある俺の家の下に埋めるよ。戻ってきたら、もっとちゃんと弔ってやるからな……今まで……ありがとう……クロ……。」
カリーはあふれ出る涙をのみ込みながらもクロを抱きしめ、一緒に暮らした我が家の方へと向かった。
そして、悲しみと一緒に大切な家族であるクロを土に埋めるのであった。
※参考 3年の間で職業が変わってます。
フェイル 勇者
バンバーラ 魔法使い → 賢者
カリー 戦士 → バトルロード
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