19 / 113
第一章
19 不穏な影
しおりを挟む
外に出るとラギルが言う通り大分火が回っていた。
子供達にはこの熱波も辛いだろう。
「みんな、熱いかもしれないけど頑張って! どうしても無理だったらおんぶしてあげるから!」
「大丈夫! 僕たちは自分の足で歩けるもん!」
ローズの声に子供達が声を大にして叫んだ。
しかし子供達は気丈に我慢をする。
本当は辛いはずなのに、強い子供達だ。
そしてそのまま魔物と遭遇する事なく商業区画までたどり着くと、そこには多くの兵士達が集まっていた。
もうここまで来れば安心である。
「ありがとう、姫ちゃま!」
「ローズ姫……あなたが来なければ私達は死んでいたかもしれません。本当にありがとうございます。」
子供達やマザーは頭を下げてローズにお礼を言った。
その様子を見て、ローズも少しは救われた気持ちになる
……がその時
「ねぇ、そう言えばボッチはどこ?」
「あれ? 一緒に出たと思うけど?」
「ボッチーー! おーーい! ボッチーー!」
突然子供達は慌てたようにひとりの子供の名前を叫んだ。
それを聞いた瞬間、ローズの頬に嫌な汗が流れる。
「ま、まさか! 取り残されたの!?」
「そんな……出る時人数の確認はしたはずなのに……。」
ローズの言葉に、マザーは崩れ落ちながら弱弱しく呟いた。
しかし、直ぐに頭を冷静にしたローズは安心させるように強く言葉を放つ。
「大丈夫! あそこならまだ間に合うはずですわ! ラギリ! 行くわよ!」
「ダメです! 姫。兵に任せた方がいい。あなたが行く必要はどこにもない。」
ラギリが行っている事は正論だ。
しかし兵士を信頼してないわけではないが、他の子供達を安心させるためにも自分が行くしかない。
「ボッチの顔を知ってるのも、養護施設の場所を知ってるのも私達だけですわ! それに……今は他の人に任す事などできません!」
ローズは叫んだ。
ボッチがいない事に気づいて泣き喚いている子供達を見て……。
「……わかりました。では、急ぎましょう。無理だったら無理矢理にでもあなたを連れ戻します。」
ラギリはため息を一つつくと、ローズの剣幕に押されて渋々納得する。
「みんな、安心して! 必ずお姉ちゃんがボッチを連れて来るからね!!」
「うん! お姉ちゃん、ボッチを助けて!」
「わかったわ! 任せなさい!」
ローズは胸をドンと叩くと、優しい笑みを子供達には向けた。
再び養護施設に向かうローズ達。
やはり火の勢いが増しており、何回か道を迂回しつつも漸く(ようやく)養護施設が見えてきた。
「まずいわ! 建物に火がまわってる! 急がないと!」
「私が先に入ります、姫は後ろについてきて下さい。」
運がいい事にまだ扉は燃えていない。
故にラギリが先に中へ入ると、ローズはそれに続く。
そしてラギリは、ローズが養護施設に入ったのを確認すると
ーーー不敵な笑みを浮かべるのであった。
子供達にはこの熱波も辛いだろう。
「みんな、熱いかもしれないけど頑張って! どうしても無理だったらおんぶしてあげるから!」
「大丈夫! 僕たちは自分の足で歩けるもん!」
ローズの声に子供達が声を大にして叫んだ。
しかし子供達は気丈に我慢をする。
本当は辛いはずなのに、強い子供達だ。
そしてそのまま魔物と遭遇する事なく商業区画までたどり着くと、そこには多くの兵士達が集まっていた。
もうここまで来れば安心である。
「ありがとう、姫ちゃま!」
「ローズ姫……あなたが来なければ私達は死んでいたかもしれません。本当にありがとうございます。」
子供達やマザーは頭を下げてローズにお礼を言った。
その様子を見て、ローズも少しは救われた気持ちになる
……がその時
「ねぇ、そう言えばボッチはどこ?」
「あれ? 一緒に出たと思うけど?」
「ボッチーー! おーーい! ボッチーー!」
突然子供達は慌てたようにひとりの子供の名前を叫んだ。
それを聞いた瞬間、ローズの頬に嫌な汗が流れる。
「ま、まさか! 取り残されたの!?」
「そんな……出る時人数の確認はしたはずなのに……。」
ローズの言葉に、マザーは崩れ落ちながら弱弱しく呟いた。
しかし、直ぐに頭を冷静にしたローズは安心させるように強く言葉を放つ。
「大丈夫! あそこならまだ間に合うはずですわ! ラギリ! 行くわよ!」
「ダメです! 姫。兵に任せた方がいい。あなたが行く必要はどこにもない。」
ラギリが行っている事は正論だ。
しかし兵士を信頼してないわけではないが、他の子供達を安心させるためにも自分が行くしかない。
「ボッチの顔を知ってるのも、養護施設の場所を知ってるのも私達だけですわ! それに……今は他の人に任す事などできません!」
ローズは叫んだ。
ボッチがいない事に気づいて泣き喚いている子供達を見て……。
「……わかりました。では、急ぎましょう。無理だったら無理矢理にでもあなたを連れ戻します。」
ラギリはため息を一つつくと、ローズの剣幕に押されて渋々納得する。
「みんな、安心して! 必ずお姉ちゃんがボッチを連れて来るからね!!」
「うん! お姉ちゃん、ボッチを助けて!」
「わかったわ! 任せなさい!」
ローズは胸をドンと叩くと、優しい笑みを子供達には向けた。
再び養護施設に向かうローズ達。
やはり火の勢いが増しており、何回か道を迂回しつつも漸く(ようやく)養護施設が見えてきた。
「まずいわ! 建物に火がまわってる! 急がないと!」
「私が先に入ります、姫は後ろについてきて下さい。」
運がいい事にまだ扉は燃えていない。
故にラギリが先に中へ入ると、ローズはそれに続く。
そしてラギリは、ローズが養護施設に入ったのを確認すると
ーーー不敵な笑みを浮かべるのであった。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】異世界で勇者になりましたが引きこもります
樹結理(きゆり)
恋愛
突然異世界に召還された平々凡々な女子大生。
勇者になれと言われましたが、嫌なので引きこもらせていただきます。
平凡な女子大生で毎日無気力に過ごしていたけど、バイトの帰り道に突然異世界に召還されちゃった!召還された世界は魔法にドラゴンに、漫画やアニメの世界じゃあるまいし!
影のあるイケメンに助けられ、もふもふ銀狼は超絶イケメンで甘々だし、イケメン王子たちにはからかわれるし。
色んなイケメンに囲まれながら頑張って魔法覚えて戦う、無気力女子大生の成長記録。守りたい大事な人たちが出来るまでのお話。
前半恋愛面少なめです。後半糖度高めになっていきます。
※この作品は小説家になろうで完結済みです
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる