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第一章 

15 闇の躍動

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【とある元貴族の館】


「くそっ!! 忌々しい奴らめ……どこまでワシの計画を邪魔すれば気がすむんじゃ!」


 バスローブに身を包んだ男は、手にしているワイングラスを床に投げつけた。


「ふん。まぁよい。ワシにはあの方がおる。あの方の言う事さえ聞いてれば……ワシが……このワシが国を牛耳ることになろうぞ。遂にワシが王になる時がくるのだ!! わっはっは。」


 男が高笑いをしていると、突然部屋の扉が開く。
 その時に気付いた男は、気持ちよくなっている所を邪魔された事で怒りをあらわにしながら誰何した。


「何者か!?」

「ほう。随分上機嫌じゃないか? 怒ったり喜んだり、人族とは忙しいものよ。」


 その部屋に現れたのは、漆黒のローブに身を包んだ一見して不審な男。
 普通に考えれば刺客等を疑うものであるが、この部屋にいる貴族はその声を聞いた瞬間に安堵する。
 なぜならば、先ほど独り言で呟いていた相手こそがその怪しげな男であったからだ。


「こ、これはお見苦しい所をお見せしてしまいました。」


 元貴族の男はこの国で王族を抜かせば一番の権力者であり、王族以外に頭を下げる事はない。
 しかし今彼は、王相手以上に深々と頭を下げている。
 それだけ、目の前の怪しげな男に忠誠を誓っていたからだ。


「よい。それよりも……例の準備は滞りないか?」

「ははっ! 抜かりはございません。既にルートの確保とスケジュール調整……万事うまくいっております。」

「ふむ。ならよい。それと勇者の動向は掴めたか?」


 元貴族の男はその質問を前に初めて固まる。
 勇者の動向を探ることは最優先事項と言われているにもかかわらず、いまだにその足取りが不明だからだ。
 いくつか情報自体は上がってはいるが、どれも信憑性が高くない。
 そんな中途半端な情報を提供し、もしも間違っていた場合には自分がどうなるかわかったものではない……故に黙る事しかできなかった。


「……沈黙か。いいだろう、お前が精力的に調べて回っているのは知っておる。故に許す。些細な情報でもよい。間違っていても構わぬ。話せ。その情報は私の方で精査しよう。」


 その言葉に歓喜の表情を浮かべて、頭を上げる元貴族。


「ありがたき御言葉! それではいくつか届いている情報についてお話させていただきます。」

「ふむ。」



 ………………。


「そうか。どれも可能性としては低そうだが、一応我がシモベ達に確認させよう。それでは明日お前が成功することを期待する。」

「ははっ!! 全力でやり遂げさせて頂きます!」


 その言葉を聞いた瞬間、謎の男はその場から姿を消すのであった。

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